紅色 ~傷~ 3
真夏の太陽は今日も僕に降り注ぐ。
天高く存在する太陽。
この地球で暮らしていくには絶対に欠かせない存在だ。
遠い遠い……手を伸ばしても届かない。
物理的でも存在的にも決して僕は届かないのだと確信していた。
明るくて、
太陽が好きか嫌いかと問われれば、
──嫌いにはなれない。
と、答える。
影など存在しない方が良いのだから。
皆が尊び、理想とし、目指し、掲げるものは光の方なのだから。
影はその副産物。
言わばオマケだ。
光があるから影がある。影があるから光がある。光と影は表裏一体。
と、誰が言った。
僕は光だけで良いのにな、と思う。
黒い部分より白い部分の方が万人受けをすることはわかりきっている。
白と黒。僕という人間をその色のどちらかに分別するならば、迷わずに『黒』の方に手が挙がる。
──あの、本物の悪夢のような夏休み。
僕はまだ後悔して恐怖している、自分の選択に優柔不断の選択できない僕が選択した答えが正解だったのか。僕はその答えを数学で言う検算を答えを見直していない。
イカロスは空を飛んだ。
太陽に到達できると言ったが、イカロスが持つ
イカロスは光へ向かって飛んだ。届かないとも知らずに。
しかし、僕はその姿を尊敬する。
光へ向かって歩むなんて、できっこないって思っている。今も昔も、相も変わらず。
僕はきっと翼を生やそうとも考えずに、地を這って、諦めているだろう。
決して、イカロスは──
高校1年生の僕はきっとそうなんだ……これからも迷って喚いて悔やんで生きていくんだろう……と、少なくとも冬──12月に突入するまでははそう思っていた。
あの苦しみ続けた夏休みを超える、苦しみ続けなければならない冬休み──それに巻き込まれるまで。
*
──″紅い″
最初に喉から出た言葉は彼女の顔、体型、言葉使い、声色などではなく──色だった。
どこまでも″紅い″。
薔薇のように″紅い″。
炎のように″紅い″。
血のように″紅い″。
どこまでも溢れかえる色への感想。
ドボドボと溢れかえる水。紅い、どこまでも紅い水が無制限に無彩限に。
僕はそれに溺れそうになる。
最初はまだ足元までだった。
だけど……、0.1、0.2秒と時間が加速するに連れて紅い水はどんどん上がってくる。
まるで、彼女の色だけが時を流れ、それ以外は彼女の色に置いていかれるような、そんな不思議なでもどこか危なっかしい、と僕の奥底にあるかもしれない何かは言っている。
2秒経った。
その頃には、僕は顔だけを残し、それ以外は紅い水に染まっていた。
僕は完全に溺れないために何度も何度も水を掻いて掻いて、掻きまくった。
息を吸うのを忘れる程に。
そこでふと足元を見た。
何故見たのかわからない。でも、とにかく確認しなければ、ソレを再確認しなければいけない、と口なしの言葉が僕を誘導する。
足元は紅い水、それだけだ。
しかし、僕は足元ではなく、紅い水の底。噴出口を見た。
ここでも何故見たのか、僕は上手く説明できない。
それでも
──勘づかなければ良かった。
後に、僕はそう想った。
僕は″紅い″とは何なのか、この目に映るそれは何なのか、原因を調べた。
根源は本質は──″ ″だ。
「──ね、君の名は?聞いてもいいかな?」
──と、彼女はそう言った
どこまでもいつまでも紅い彼女は笑顔で僕に手を差し伸べて言った。
「僕は
と、
「私は
「よろしくね♪」と″紅い彼女″……
こうして僕と彼女は出逢ってしまった。
紅い紅い。
傷付く物語の1ページがめくられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます