第66話

「ククククククククク。

 はははははっはは!」


「う……」


 アスペルガーの笑い声がこだまする。


「いい姿になったな!ピノ!」


「あ……」


 ピノがうめき声に近い声を上げる。

 ピノの両手両足は特殊な拘束具で束縛され動けないでいた。

 そして、ピノは獣に傷つけられ続けた。


「アスペルガーさま」


 一匹のワーウルフがアスペルガーに近づいてくる。


「どうした?」


「男がひとりこの屋敷に侵入してきたようです」


「それがどうしたというのだ?

 殺せばいいであろう?」


「それが咎人でして……」


「ほう?もしかしてボクか?」


「はい」


 ワーウルフがそう返事をするとアスペルガーが嬉しそうにうなずく。


「わかった。

 今すぐここに通せ」


「かしこまり――」


 ワーウルフは、そこまで言葉を放ったとき首が消えた。

 ワーウルフは血が流れることなく絶命した。


「誰だ?お主は」


「ボク……?」


 ピノが小さくその少年の方を見る。


「うん」


「すごいね。

 ワーウルフ倒せた」


 ピノが小さく笑う。


「メガネのおかげだよ」


 ボクも小さく笑う。


「メガネ……?

 だったらそんなもの破壊してやろう!」


 アスペルガーが、そう叫ぶとボクに飛びかかった。

 しかしボクにはアスペルガーの身体を素手で弾き飛ばした。


「ボク。

 凄いね。とっても強いよ」


 ピノが弱々しい。


「さぁ。帰ろう」


 ボクがそういうとピノがいった。


「うんん。私帰れない」


「どうして?」


「私ね汚されたんだ。

 だから、ボクのところに……お嫁さんになれない……」


「え?」


 ボクは、驚く。


「私、汚されたから……」


 ピノの声が弱々しい。


「そうだ!ピノを置いていけ!

 そしたら、お前の命だけは助けてやろう!」


 アスペルガーの提案にボクは首を横に振る。


「なんでだろう。

 あのときは君のことがとても恐ろしく感じた。

 だけど、今はただの犬にしか見えないよ」


「貴様!我を侮辱する気か!!」


 アスペルガーが牙を剥く。


「犬に犬って言って悪いのかな?」


「黙れ人間!?」


 アスペルガーが牙に魔力を込める。

 ボクは、アスペルガーの言葉を無視してピノの身体につながれた拘束具を外した。


「な、なにをした!

 その拘束具は複雑な魔法器具で出来ているのだぞ!

 それをいとも簡単に!」


「ピッキングは得意なんだ」


「なにを言っている?」


「犬にはわからないか……」


「貴様は、何度我を侮辱したら気が済むのだ?」


「消えろ!犬……」


 ボクがアスペルガーを睨んだ。


「……ならば」


 アスペルガーはピノの方を睨む。


「あ……」


 ピノが苦しむ。


「ピノになにをしたの……?」


「今、ピノに呪いをかけた。

 この呪いはボクには解けまいて……」


 アスペルガーが笑う。


「なにをしたの?」


 ボクがもう一度問う。


「さぁ。最後まで楽しむんだな。

 咎人としての余生をな!」


 アスペルガーが、そう言い残し姿を消した。

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