僕のかみさま - 1/4
朝焼けが、冷え切った石造りの町を橙に染める。
隣接する細い通りには、
「むつかしいことは言っとらん。
自分よりも背の高い小姓に見下ろされながら、丁稚は下を向き黙っている。色気付いた小姓たちの間で、意中の人物の髪を使った
──祭祀を控えたこの時期は、特に。
「そない手間じゃなかろう、
雲凛と呼ばれたその丁稚は、しばらくもごもごと口を動かし、小さな声で
「……そがいなこと、してええかわからんもん」
と言った。
──
雲奎は雲凛の小さな両の手をそっと自分の手で包み込み、そう云った。それは雲凛が髪結いになると決めて、自分の師から最初に教わったことだった。神聖な髪の毛を、神様の
「口答えできると思てんか、この餓鬼!」
小姓に扇子で頬を張られ、雲凛は尻餅をついた。その拍子に、担いでいた水盆を取り落とし、その水の大半は石畳の隙間に流れていってしまった。
「約束じゃ。反故にしたら、どいてまうかわからんからな!」
小姓はそう言い捨てると、西方へと走り去った。雲凛は、頬が痛いのと大事な神水を零してしまったので目頭が熱くなったが、眉に力を入れて我慢した。朝の石畳の冷たさが、じんわりと雲凛の尻と手のひらを侵食した。
「
唐突な声に雲凛が振り返ると、雲凛の後ろに、いつのまにかもう一人の少年が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます