10 平仮名転生【了】
ぼくたちは ひかりをおって
この もじを みつけた。
もじというか……
きごうというか……
これだ。
【了】
げんこうの さいごに うたれるような。
りょう の もじ。
「了? 完了?」
うん。そう。
ものがたりの おわりに
うたれる もじだよ。
もし このせかいが
はくしのせかいで
ここに りょう が
うたれているなら
もしかしたら ここが
はくしせかいの しゅうちゃくてん?
「ソノカンガエハ タダシイ」
「誰? 片仮名?」
ぼくらの まえに
とつじょとして もじが あらわれた。
かたかなだ。
えっと あなたは
かたかなに てんせいした
だれか ですか?
「アア ソウダ。
ワタシハ カタカナニ
テンセイシ コウシテ
コノセカイニ イツマデモ
トドマッテイル オクビョウモノダ。
オマエタチハ ソノモジニ
フレルタメニ キタノカ?」
ええと……
いみが わからないんですが。
このもじに ふれにきた?
「ソウダ。
オワラセニ キタノデハナイノカ?」
「意味不明。接触? 終了?」
「リョウ ノ ジニ フレレバ
コノセカイデノ モジトシテノ
ヤクワリハ オワル。
モジドオリ カンリョウ ダ。
ナニモ シラヌノカ?
マダ コノセカイヲ オトズレテ
ヒガ アサイ ヨウダナ」
「肯定。私達、新人。
貴方、白紙世界、玄人?」
「ナガイコト コノセカイヲ
タダヨッテイル カラナ。
オマエタチ ヨリハ
セカイノナゾヲ
ハアクシテイル ツモリダ。
モシ キミタチガ
コノセカイニ ツカレハテタナラ
ソノモジニ フレレバイイ。
キミノ モジトシテノ
ヤクワリハ オワル。
ソノママ キエテ
カンゼンニ シヌ。
アルイハ モトノカラダニ
モドレル カノウセイモ アル」
え?
もとのからだに もどれる?
「驚愕。私達、生存?
肉体無事?」
「ドウヤラ ホントウニ
ナニモ ワカッテイナイ ヨウダナ。
オマエタチハ シンダ。
コレハ リカイ シテイルカ?」
もちろん。
きおくは あいまいで
せいぜんのことは ぜんぜん
おぼえていないけれど。
でも ひかりにつつまれて
ああ ぼくは しぬんだって
おもったのは おぼえている。
「デハ ソノ シ トハ ナンダ」
「意味不明。哲学?
普通、心肺停止、蘇生不可能。
生命活動、全停止。死亡」
「ソレハ チガウナ」
はぁ?
じゃあ しぬって
どういう いみ?
「ワレラハ セイメイトシテ
シンダノデハ ナイ。
シンダノハ ワレワレノ ユメ。
アルイハ キボウ。
サッカトシテ カシュトシテ
アルイハ ゲームクリエイタートシテ
ワタシヤ ホカノ ダレカタチハ
ウェブジョウニ タクサンノ
サクヒンヲ モジヲ ノコシタ。
ソレハ キロクデアリ
キオクデアル。
ツマリ ヒトノ
カンジョウノ チクセキダ。
オンネン トモ イエル。
ネットワークニ チクセキサレタ
オンネン ジョウネン シュウネン
ソウイッタ カンジョウガ ウンダ
ネットワークノ サンズノカワ。
ソレガ コノセカイダ」
さんずのかわ?
ねっとわーく?
あなたは なにを いっているんだ。
「ココハ ネットワークニ キザマレタ
ダレカノユメガ オトズレル シゴノセカイ。
ワタシヤ キミハ
コトバヤ モジヤ キゴウヲモッテ
セカイニ ナニカヲ キザモウトシタ。
ダガ デキナカッタ。
ワレワレハ ニクタイガ
ホロビテ シンダノデハナイ。
シンダノハ ユメ ダ」
ゆめ?
ゆめがしんだって
どういういみだよ。
「マダ ワカラナイノカ。
ソレトモ ミトメタクナイノカ。
オマエハ ユメヲ アキラメタ。
オマエハ……
イヤ オマエダッタ ニンゲンハ
ユメヲ アキラメ テバナシタ。
ツマリ オマエノ
ユメガ シンダノダ
ダカラ オマエハ
オマエジシンノ ユメダッタ
オマエノカケラハ
ニクタイカラ キリハナサレ
シニ ココニイル」
ぼくが……ゆめを あきらめた?
まさか そんなはずない。
せいぜんの ぼくは。
どんなことがあっても
ぜったいに あきらめないって ちかっていた。
「イヤ オマエハ
タシカニ アキラメタ。
ダカラ ココニイル。
ユメヲ テバナサナケレバ ココニ
オマエガ イルハズガ ナイ」
ちがう!
そんなの なにかの まちがいだ。
「ワタシハ ココニ ナガクイル。
ナンドモ ミテキタ。
ユメヤブレ アキラメ
コノセカイニ キタモノヲ。
カレラハ シバラクハ コンランスル。
ウラミゴトヲハキ ナキゴトヲイイ
イツマデモ ミトメナイ。
ダガ ヤガテ キエテイク。
アキラメタ ユメハ
ホンニンガ ワスレタトキ
モウ ナニモノデモ ナクナル。
ネットワークニ ノコル サクヒンハ
タダノ モジ
タダノ エ
タダノ データ。
ユメヲオイ ウミダシタ
ホンニンタチデスラ ミステタトキ
ソノトキガ ユメノ ワレラノ
ホントウノ オワリダ。
ソノトキ ワレラハ
イノチヲ モタナクナル。
ナニモノデモ ナクナリ
ハクシニ キザマレタ
タダノ コンセキニ カワル」
ちがう。ぜったいにちがう。
ぼくが あきらめはずがない。
「オボエテイルノカ?」
……おぼえては いない。
けど ぼくは いつだって
あきらめないって きもちを
もちつづけていた
……はずだ。
「フン。キモチ? キモチダト?
キモチダケデ ドウニカナルト
シンジルホド マヌケカ?
オマエモ ワナビノ ハシクレナラ
ナンドモイドミ ヤブレ
ソノツド キズツイタ ハズダ。
ジョウネツ ユメ
ソンナモノデ カナウホド
アマイミチデハ ナイ」
そんなこと……
そんなこと
ぼくだって わかってる。
だから つらかった。
なんど いどんでも
どれだけ かいても
なんのけっかも でない。
もくてきちも みえない。
それでも
かきつづけるのは
つらかった。
「ソウダ。
ツラカッタダロウ。
オモイダシタカ?
ソレデ オマエハ
アキラメタノ ダロウヨ」
あきらめた……
ほんとうに ぼくが?
「ミトメラレナイナラ
ソノモジニ フレテミロ」
……この りょう のもじ?
「ソウダ。
ソレニフレレバ コノ
ハクシセカイデノ ヤクメハオワル。
モシ オマエノ ホンタイガ
マダ アキラメズニ イルナラ
ユメダッタ オマエハ キエテ
カラダニ モドル。
オマエハ マタ ドコカニ
サクヒンヲ ノコスダロウ。
ダガ スデニ アキラメテイルナラ
オマエハ ドコニモ イナクナル。
ツマリ カンゼンニ キエル。
ドウスル? タメシテミルカ?」
ぼくは……
ぼくは もしかしたら。
おぼえていないし
みとめたくもない。
けれど もしかしたら
ほんとうは……
あきらめたのかも しれない。
はじめたばかりの ころは
しっぴつが たのしくて
いつまでも つづけられた。
けれど いつのまにか
ゆめを かなえるための どうぐとして
しっぴつを つづけていた。
なにかに せかされて おわれるように
ただ しょうせつを かきつづけて
それでも だれにも みとめられず
それで……
あきらめた
ような きが する。
「ヨウヤク ミトメタカ。
ソレデイイ。
コノセカイニ イルモノハ
タショウナリトモ ダレモガ
ユメヲ オイ
ユメニ ヤブレ
シンダ ユメノ カケラダ。
ダレノ メニモ フレズ
ダレノ ココロモ ウゴカサズ
ダレニモ カエリミラレルコトナク
クルシミツヅケ ムクワレズ
ソウシテ アキラメ
タドリツイタノガ コノセカイダ。
コノセカイハ スクイ ダヨ」
すくい?
「ワレラハ スデニ カタコトノ
コトバノ ダンペンニ スギナイ。
ダカラ モウ サクヒンナド ノコセナイ。
ダカラ アキラメルシカナイ。
ウケイレル シカナイ。
アキラメノ イタミハ
ジョジョニ ウスレ
クルシミハ キエテ
サイゴハ イシキモ キエル。
ナニモカモ キエテ
ヤガテ コノセカイノ イチブニナル。
ワレラノ ユメ ダッタモノハ
タダノ コンセキト ナル。
ユメガシニ キエルマデノ
ユウヨキカンダ。
コレガ スクイデナクテ ナンダト イウノダ」
「絶対否定!」
か かんじちゃん?
「私、激怒。
君達、悲観過多!
私、諦観皆無。悲観皆無。
私、白紙世界、冒険、愉快。
君達、理由、理解?
白紙世界、夢、浪漫!
希望欠片、大量!」
ゆめや ろまんの かけらが
つまっているから
このせかいは どこか たのしい。
って いいたい ってこと?
「肯定。
夢? 敗北? 死後世界?
貴方、根本的、錯誤。
私、創作意欲、皆無。
私、夢、愉快作品、永遠読書」
「ソウサクシャデハ ナイ?
ユメハ オモシロイ サクヒンヲ
ヨミツヅケタイ ダケノ
タダノ ドクシャダト?
ソンナ バカナ。
ソンナ ジンブツガ
ネットワークノ サンズノカワニ
アラワレル ハズガナイ」
「私、読書専門。絵、閲覧専門。
電脳遊戯、使用専門。
公式、同人、無関係。
全部、全部、愉快。
私、平仮名君、生前作品、無知。
推察、彼、作品、絶対愉快。
理由。彼、努力家。
毎度思考、物語、質、追及。
白紙世界冒険中、同様。
多分、生前、大量努力。
絶対、平仮名君、諦念皆無!」
ぼくなら あきらめたり しない か。
ぼくですら ぼくのことを
しんじられないのに。
であったばかりの かんじちゃんは
ぼくを しんじてくれるんだね。
「肯定。
冒険期間、長短、無関係。
信頼関係、盤石」
そうか。そうだよね。
かんじちゃんが そういうなら ただしい。
ぼくは ぜったいに あきらめていない。
まちがってるのは おまえだ。
「タイシタ ジシンダナ。
オマエヲ ミテイルト ハラガタツ。
ソレホド ジシンガ アルノナラ
リョウ ノ モジニ フレルトイイ。
モシ オマエノホンタイガ
スデニ アキラメテイルナラ
オマエハ タダ キエテイク。
ダレニモ ヒツヨウトサレズ
ダレニモ ミトメラレナカッタ
オマエノ ホンタイガ
マダ アキラメテイナイト
シンジラレルナラ。
カクゴガ アルト
シンジラレルナラ。
ヤッテミルトイイ。
ナニ シクジッテモ
タダ キエルダケダ。
ドウセ トドマリツヅケテモ
ユックリト キエテイク ダケダ。
デカイクチヲ タタクノナラ
オジケヅイタリ シナイダロウナ?」
だれが おじけづくものか。
だって ぼくは
こうして しんでも
ものがたりを のこそうと したんだ。
そのぼくの ほんたいなら
なにがあったって
ゆめを あきらめたり しない。
この もじに ふれて
たしかめてみよう。
ほんとうに もどれるのか。
それとも きえて しまうのか。
「大丈夫。絶対」
そうだね。
ぜったい、だいじょうぶだ。
ぼくは やる。
さよなら かたかなさん。
いろいろ おしえてくれて ありがとう。
もう にどと あうことも ないでしょうけど。
「サラバダ。キエテシマエ」
かんじちゃん。
みじかいじかん だったけど
ほんとうに ありがとう。
「私、期待。
私達、現世帰還。
私、読書。君、作品。絶対」
そうだね。
ぼくらは おたがいに すじょうも しらない。
なまえも しらないし
どこに いるのか わからない。
でも やくそくするよ。
きみが どこにいても
ぼくの ものがたりが
きみのめに ふれて
きものてに とどく。
そのときまで
ぜったい あきらめない。
「信頼。約束、絶対。反故、針千本」
そうだね。やくそくだ。
ぼくは かならず もとのせかいに もどる。
このせかいで このまま おわるのか
それとも ぼくは
ほんとうのじぶんに もどって
ものがたりを かきつづけられるのか
ためしてみよう。
◇◇◇
……ぼくに。
なんど きずついても
たおれても たちあがり ゆめを おう。
そんな かくごが ほんとうに あるのか
わからないけれど。
やくそくは やぶりたくない。
ぜったいに いきかえって
ゆめを かなえて
かのじょに きっと よんでもらう。
ぜったいに いつか。
だから ゆめを おいつづけるために。
ものがたりの おわりをいみする
おしまいのもじに ふれた。
【了】
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