6 転生物理法則


 ぼくは ひらがなに てんせいした。


 かんじに てんせいした おんなのこの

 かんじちゃんと いっしょに

 このせかいを ぼうけん している。


 ぼくは ぼうけんなんか きょうみがない。

 この はくしせかいに どうにかして

 すぐれた ものがたりを

 のこしたいと おもっている。


 でも ぼくは ひらがなだから

 こうして このせかいに

 ひらがなを のこすことしか できない。


 ものがたりを かくには

 かんじや かたかなも ひつようだ。


 だから かんじちゃんの

 きょうりょくが ひつようなのに

 かんじちゃんは ぼうけんにしか 

 きょうみが ないみたい。


 なので しかたないから ぼくは

 かんじちゃんと いっしょに

 きょうも このせかいを ぼうけんする。


 ◇◇◇


「平仮名君、平仮名君」


 なに? かんじちゃん


「音楽、遠方、演奏。

 私、既知、楽曲」


 しってるきょくが きこえてくる?

 いわれてみれば どこかから 

 おんがくが きこえる。


 だれかが えんそうしている?


 ほんとうに かすかだけど 

 みみをすますと きこえてくる。


 あれ? いままで きにしなかったけど

 ぼくは どうやって 

 みみをすませているのだろう。


 そもそも ぼくは しんでしまって 

 ひらがなに てんせいしたのだから

 みみも めも ない。


 でも なんか みみをすませたり

 めをひらいたり そういう

 かんかくてきなものは のこっている。

 

 それに かんじちゃんに ふれたり

 くとうてんを ひろったり している。


 この はくしせかいが なにもない

 まっしろなばしょだって 

 ちかく できているし。


 どうやっているのか じぶんでも わからない。


 このせかいに なれたせいか

 なんだか きになってきたぞ。


 このせかい どんなほうそくで 

 うごいているんだろう。


「法則? 重要?」


 じゅうよう だよ。


 だって ぼくは もじなのに

 かんじちゃんの こえが

 ぼくには きこえてる。

 きがする。


「白紙世界、全部奇妙。

 思考、時間無駄」


 まあ たしかに かんじちゃんの いうとおり

 このせかいは そもそもきみょうだから

 こまかいこと きにしても むだだろうけど。


 でも きになるんだよなあ。


「平仮名君、繊細?」


 いや ぼくが きにしすぎじゃなくて

 かんじちゃんが きにしなさすぎ

 なんじゃないの?


「君、大変失礼」


 だって きにならない?


 たとえば いせかいが ぶたいの

 さくひんを よんだときにさ。


 そのせかいの ほうそくとか

 ぶんかれべるとか いんふらが

 どうなっているのか とか。


 それこそ このせかいだって

 きみょうなこと だらけじゃないか。


 だって ぼくら からだがないのに

 ときどき ねむるよね。


「肯定。人間、睡眠必要。

 私、生前、毎日、睡眠不足。

 睡眠、睡眠、睡眠、睡眠、睡眠不足」


 なんか たのしそうなのは

 つたわってきたよ。


「奇天烈大百科」


 わかった わかったから もういわないで。


「異世界、地球、法則無関係。

 万事、不思議、当然。

 平仮名君、何故疑問?」


 それは まあ。


 ちきゅうとは ちがうから

 なにもかも ふしぎなんだけど。


 でもさ きになるんだよ。

 だってぼくは しょうせつか だからね。


「草不可避」


 なんで わらうんだよ。


 たとえばさ 

 いせかいが ぶたいの しょうせつで

 じかんの がいねんが あったとするよね。


 いちにちが にじゅうよじかんなら

 そのいせかいは じてんしてて

 じかんの かんがえかたも

 ちきゅうと おなじってことでしょ?


 きょりのがいねんが あって

 めーとると おなじたんいの 

 ながさが あるなら

 ほしのおおきさも ちきゅうと おなじか

 ばいりつが にているってことになる。


 きんぎんどうの かへいがあるなら

 かへいをきめて つくるのは 

 どこの だれなのか。


 もし おかねが しへいなら 

 ぎんしほんなのか きんしほんなのか。

 それともべつの なにかなのか。


 とにかくさ そういうふうに 

 いせかいものを よむときは 

 こまかいことを かんがえてしまうんだよ。


 さいぶは かみにやどるって いうし。


 そもそも いせかいが ぶたいで

 にほんごを はなしてるってことが

 さいしょに きになるんだけど。


 まあ それは むししないと

 どんなさくひんも よめないけど。


 でも しょうせつかは そういうことを

 きにして さくひんを かかないと。


「大草原」


 なんか おおわらいしてる

 きみのこえが つたわってきたよ。


「君、異世界馬鈴薯、激怒系?」


 いせかいに じゃがいもがあると

 おこるたいぷ?


 いや そうじゃないけど。


「読者要求、読書体験。

 愉快、痛快、感動。

 笑顔、興奮、落涙。

 文化云々、技術云々、優先順位低位。

 最重要、読後満足。

 馬鈴薯? 完全無関係」


 まあ じゃがいもの うむが

 まんぞくどに かんけいしないのは

 ぼくも わかる。


 でもさ まんぞくどとか そうじゃなくて

 もんだいなのは びょうしゃの はなしで

 そのせかいが どんなせかいか

 まえもって びょうしゃすることが


「興味皆無! 終了!」


 わかった わかったよ。

 かんじちゃんは ごういんだ。


「私、漫画、小説、読書専門。

 執筆興味皆無。創作論、欠伸発生。

 私、要求、大冒険。

 白紙世界、興味津々」


 はいはい そうだね。

 あーあ どうせなら

 ぼくとおなじ そうさくしゃが

 このせかいに いればいいのに。


「不満? 君、私同行、不満? 

 了承! 別離!」


 ああ まってよ。ぼくも いくよ。

 そんなに おこらなくても

 いいじゃないか。


「音楽、演奏継続。

 私、音色、追跡」


 そうだね。

 おんがくが まだ きこえてる。

 さっきより おおきく きこえてきた。


 もしかしたら ぼくらみたいな もじじゃなく

 がっきをもった ひとが

 このせかいに いるのかもしれない。

 

 とにかく 

 おとの きこえるばしょに いってみよう。

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