5 かんじてんせい と 平仮名転生

 私 不思議

 私 元人間

 私 今漢字


 睡魔 急襲

 肉体 疲労? 

 脳味噌 疲労? 

 脳味噌 何処? 

 私 漢字


 欠伸

 欠伸


 布団欲求

 眠気最高 


 野宿?

 眠気 抵抗 困難

 野宿不可避


 私 意識 途絶


 睡眠

 睡眠

 睡眠


 ◇◇◇


 ひらがなに てんせいして ずいぶんたつ。

 まいった。


 やせいの もじきごうは 

 いくつもみつけたけれど


 このせかいでは ぼくいがい

 だれも いきていない みたいだ。


 どこへいっても 

 やせいの くとうてんばかり。

 あと ちょうおんふ。

 のばしぼうのこと。

 これもあった。


 ろばーとらどらむ。

 ふぃりっぷまーろう。


 これで がいらいごも かなり のこせる。

 べんりだけど やっぱり 

 これだけじゃ ものがたりは つくれない。


 それに かりに ものがたりを のこしても

 だれもよまないのなら いみがない。


 どくしゃが いなければ 

 どんなものがたりも いみがない。


 ぼくは そんな かんたんなことに 

 さっき きづいた。


 とにかく ぼくいがいの 

 だれかを さがそう。


 だれかに とどくように 

 ものがたりを かきつづけたのに

 だれもいなければ とうぜん 

 だれにもとどかない じゃないか。


 ◇◇◇


 あれ むこうに なにか みえるぞ。

 あれは ひょっとして かんじじゃないか


 ああ やっぱりそうだ。

 かんじだ かんじが ある。


「睡眠 睡眠 睡眠」 


 すいみん か。

 もしかしたら くとうてん みたいに

 このせかいには かんじが 

 やせいで はえているのかもしれない。


 もし そうなら かんじを あつめれば

 また むかしみたいに 

 ものがたりを つくれるぞ。


 ようし。

 このかんじも もっていこう。


「悲鳴!」


 うわあ うごいた。

 っていうか きゃああ って 

 ひめいをあげたのか。


「吃驚! 私 意識覚醒 君 誰?」


 え あれ もしかして。

 このかんじ しゃべっている のか。


「君! 何処接触!」


 どこに さわってるの っていわれても。

 どこにさわっても いいじゃないか。

 だって かんじなんだから。


「変態 変態 変態!」


 そんな らぶこめみたいに いわれても。

 ああ ごめんごめん とりあえず はなれるよ。


 でも おどろいた。

 ぼくいがいに いきているひと 

 いや いきているもじが いるなんて。


「君 大変失礼

 突然接触 当然恐怖

 私 激怒」


 おこらなくても いいじゃないか。

 それより やっぱり あなたは

 ぼくと おなじ いしをもつ もじだよね。


「肯定

 私 元人間

 私 今漢字」


 しんで かんじに てんせいしたのか。

 よかった ぼくいがいにも 

 このせかいに ひとが いたのか。


「君 謝罪!」


 あやまれって とつぜんさわったことか。

 かんじなんだから いいじゃないか。 

 

「駄目絶対 感触不快

 私 生前 女子 

 補足 美少女

 接触重罪」


 びしょうじょ ねえ。

 じぶんでいうかな そういうこと。

 

「萌々案件」


 そーですか。

 たしかめようがないから 

 なんとでも いえるよね。


「君 大変失礼

 突然接触 無礼発言

 推察 君 生前痴漢?

 逮捕直前 線路逃亡 電車激突轢死?」

  

 ひどいことを いうなぁ。

 ぼくは りっぱなじんぶつでは なかったけれど

 ひとさまに めいわくを かけるようなまねは 

 しないで しんだよ。きっと。


「君 何者?」


 なにもの っていわれても 

 ただの いっぱんじん。


 そうだな あえていうなら

 やっぱり ぼくは しょうせつか 

 いや わなび かな。


「山葵?」 


 わさび じゃないよ。

 わなび だよ。


「幽波紋? 香辛料少女?」

 

 ええっと なにいってるか わかんないです。


「意志疎通 困難」


 かんじだけじゃ むずかしいとおもうよ。


「消極的同意

 私 最初 漢字 意志疎通 簡単想定

 今 把握 意志疎通 困難」


 さいしょは かんじなら 

 いしそつうが かんたんだと おもったのか。


 まあ ぼくも さいしょは 

 ひらがなに てんせいしたなら

 しょうせつを かくのも 

 らくだと おもったんだよ。


 でも やっぱり むずかしい。

 ひらがな だけを いくらかさねても

 ものがたりに ならないんだ。


「君 小説執筆者?」


 うん そう。

 わなび ってのは そういう いみ。

 さっかしぼうを ひにくった いいかた。


 まあ ゆめをかなえる どころか

 こうして しんで いまは ひらがな だけど。


「私達 異世界転生 

 此処 白紙世界

 私 漢字

 君 平仮名」


 そうだね。

 なんのいんがか ぼくはひらがなで 

 あなたは かんじに てんせいした。


 ここは まっしろで ときどき

 きごうがあるけれど

 はくしのせかい としか いえない。

 

 ほかにも おなじように

 てんせいしたひとが いるのかもしれない。

 ぼくが みつけたのは 

 やせいの くとうてん だけど。

 

「私 野生感嘆符 野生疑問符 発見!

 君 必要?」


 あ どうも。

 じゃああなたにも くとうてんを どうぞ。


「感謝。多少、意志疎通難易度、軽減?」


 どうかな? すこしは よみやすくなったかも。


「私、提案。

 白紙世界、奇々怪々。

 探検愉快。同量、恐怖多数。

 単独行動、不安。

 旅路同行、私達」


 このせかいは ふしぎがいっぱいで 

 たんけんは たのしいけど

 おなじくらい ふあん?


 だから いっしょに たびをしよう。

 って いったんだよね?


「肯定。

 私、君、意志疎通可能」


 そうだね かんじなら ぼくは とくいだし。


 それに ぼくはひらがな。あなたはかんじ。

 ぼくらが きょうりょくすれば 

 ちゃんとしたぶんしょうが かけるよ。

 

「協力?」


 そう。ぼくとあなたが いきをあわせれば。

 もしかしたら このせかいに

 すばらしいものがたりを

 のこせるかもしれない。


 ちょっとやってみようよ。

 いまから せつめいするから

 ぶんしょうを ふたりで かこう。


「消極的同意」


 ぼく貴方がを息合をわせれば

 しっかり文章したがけるよ書


「無理」


 どうも いきがあわない。

 ぼくが もじをきざんだあとに 

 すばやくあなたが きざまないと

 こうもずれたら 

 なにがかいてあるか わからないよ。


「責任転嫁? 私責任?」


 いや あなたのせいじゃ ないけど。


「呼吸一致、困難当然。私、君、他人同士」


 そうだけどさぁ。


「私、文章執筆、不要。

 私、希望、白紙世界、大冒険」


 ぼくは こんなせかいを 

 ぼうけんしたいと おもわないけどなぁ。

 ぼくはただ どんなすがたになっても 

 ものがたりを のこしたいだけなんだ。


「目的不一致。速攻別離?」


 いや まだたびだってもいないのに 

 ここでおわかれじゃ はやすぎるよ。

 それに どうしたって ぼくには 

 かんじのちからが ひつようなんだ。


 かんじ なしじゃ やっぱり

 ぶんしょうが よみにくい から。

 

「君、敬称略、失礼」


 よびすてに するな?

 そんなこと いわれても 

 あなたのなまえを しらないよ。

 かんじ ってよぶしかないじゃないか。


「名前。名前?

 私、不思議。

 自分、名前、失念」


 じぶんのなまえを わすれた? 


「前前前世」


 は?


「前前前世。

 君、理解不能?」


 うん。

 なにいってるのか ぜんぜん わからない。


「新海誠、映画」

 

 あー あー わかった わかった。

 もうそれいじょう いわないで。

 きみのなは。って いったんだろ。


「肯定。君、発想力訓練、必要」


 なんだか ぼくは あなたと

 きがあわないと おもう。


「同意。私、変態嫌悪。痴漢最悪。抹殺」


 だから あれは じこだって。


 でも あれ かんがえてみれば

 ぼくも じぶんのなまえが わからない。


 おもいだせない。


 ぼくは なんて なまえだったっけ


「提案、仮称。

 君、平仮名。

 私提案、平仮名君」


 ひらがなだから かりのなで ひらがなくん?

 あまりにも そのままじゃないか。


「名称必要」


 それは そうだけど。

 じゃあきみは かんじくん?


「私、先程発言。再度教示?

 私、女子!」


 そうだった おんなのこ だったね。


「補足、美少女」


 はいはい わかった わかった。

 それじゃ かんじちゃん?


「消極的納得」


 わがままな ひとだなぁ。


「君、大変失礼!」


 ◇◇◇



 こうして ぼくと かんじちゃんは であって

 それから ふたりのたびが はじまった。

 

 ぼくのねがいは ものがたりを のこすこと。

 でも かのじょは そんなこと

 まったく きょうみがない。


 かんじちゃんの ねがいは

 このせかいを ぼうけんすること。


 どうも もくてきがあわないし きもあわない。


 かのじょとうまく やっていけるだろうか。

 ぜんとたなん。


 なんにせよ。

 ぼくと かんじちゃんで

 ぶらり いせかい ふたりたび。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る