2018年 2話 君の傍にいられるなら セリ編

もうすぐクリスマス、今年もやってきた!!俺の季節!!

クリスマスは毎年セリカちゃんやみんなと過ごすんだけど

今年はなんだかそれを楽しみにしていいのか、わからなくなる

この前、レイからセリカちゃんに振られたって話を聞いた

2人とも俺やみんなの前ではそんな素振りを見せずいつも通りで、俺が気にするコトはないんだろうけど……

もう来年からは今まで通りの生活じゃなくなっちゃうんだね…

少し寂しい気がする…

それにセリカちゃんが結婚したら…

俺なんてただのお邪魔じゃないかな…

イングヴェィもセリカちゃんも気にするなって言って受け入れてくれるけど、いくら俺だってわかる

新婚夫婦にとって、俺みたいなお荷物がいちゃいけないコトくらい

その日が近付く度に俺は…やっぱり心が狭くなる

セリカちゃんを取られるみたいな気持ちになって…

いつかはこの時が来るハズだからって自分を納得させたつもりだった

覚悟を決めていたハズなのに…

それが近付けば近付くほど怖くなって…わからなくなって…不安しかない

はじめて会った日のコトから2人で過ごした時をたくさんたくさん思い出して、いつまでも思い出の中だけで生きていきたくなる

やっぱり俺は嫌だよ…レイみたいに…セリカちゃんの幸せが自分の幸せだなんて思えない

ずっとワガママで自分勝手だ

いつまでもずっと今の関係が続くなんてありえなかったんだ……

近所の異茄川の公園にあるベンチに座りながら、この広く静かな場所でボーッとしていた

遠くでサッカーをしている子供達の声が微かに聞こえるくらい

夕方になってきた…そろそろ帰らなきゃまたセリカちゃんに怒られるな

「コラ!セリくん!!」

と思っていたら、階段の上からセリカちゃんの叱る声が聞こえた

「ひとりで出掛けたらダメって言ったでしょ」

心配させたってわかってる

セリカちゃんは階段から下りて俺の前までやってきた

「そういうセリカちゃんだってひとりで来たじゃん、危ないよ」

「セリくんがどっか消えるから私はひとりなの」

うっ…あ、謝らないもん…

外は危ないからってひとりで出掛けないコト、それをみんなで決めた

わかってるよ…でも、ひとりになりたい時があるんだよ

セリカちゃんが結婚なんてしなければ…こんな気持ちにはならないのに

「セリカちゃんは…レイのプロポーズを断ったなら、イングヴェィと結婚するの?」

「またその話?」

呆られながらセリカちゃんは俺の隣へと座る

「わ、わかってるもん…俺だって、ずっとこのままじゃないってコトくらい

だけど、不安になるんだもん

イングヴェィもセリカちゃんも俺のコトは変わらないって言ってくれるけど」

じわりと視界が滲む

やだな、俺はいつまでうじうじしてるんだろ

俺はセリカちゃんのクリスマスプレゼントだ

小さい頃に貰ったぬいぐるみと一緒で大人になったらもう必要としなくなるもの

手放して…捨ててしまうもの

だから…怖くて…

「だったら帰る?天に」

「えっ…」

セリカちゃん…めちゃくちゃ怒ってる?

もしかしなくても俺って超ウザい?

せ、セリカちゃんに嫌われたら…俺生きていけないよ!

「私を信用できないなら帰れば?

何言っても何しても、私の気持ちがわからないなら帰ったらいいわ

今のセリくんは嫌いよ、全然笑わないから」

帰れって…それって俺がもういらないってコト?セリカちゃんの気持ちは…そういうコトなの?

悲しさと寂しさで心が満たされる

こんな気持ち…嫌だ、嫌だよセリカちゃん

俺の方を少しも見ず振り返らず、君は階段を上がる

「待っ…」

君の背中を目で追い掛けた

最後の階段に足を掛けると君はそこから、身体が宙に浮いて重量に引かれるまま階段から落ちる

「セリカちゃん…!?」

君は誰かに階段の上から突き飛ばされた

助けようと手を伸ばそうとしたけど

「動かないで」

その言葉に俺の手も身体もまったく動けなくなる

目の前で君が落ちていく、高い所から下までと階段の凹凸に身体を打ち付けながら頭を強く打って動かなくなった

血が広がる、地面に…俺の足元に

大好きなセリカちゃんが大怪我をしているのに俺の身体は少しも動いてくれない

声も出ない、魔法も使えない

早く助けなきゃって気持ちだけは大きくなって焦るのに

このまま君が死んでいくのを見ているだけ?

こんな突然に…

そんなの嫌だ…君のコトは絶対に守るって、誓ったのに…

「やっとその女を殺せそうですわ」

ゆっくりと階段の上から下りてきて俺の前へと姿を現す

セリカちゃんを突き落とした犯人が…

「心配しなくても貴方も一緒に送ってあげましてよ」

セレン様…やっぱり貴女か

俺を創った人、俺はこの人の言葉に縛られてしまう

セリカちゃんの命を狙って俺を壊そうとするのに…

セレン様はマスターの力を取り上げられ、俺達に逆恨みする

彼女はもうここまで来てしまっては引き下がれないんだ

「セリくん!セリカちゃん!?」

セレン様が俺を壊そうと手を伸ばしたタイミングでイングヴェィの声が聞こえた

セレン様は舌打ちして手を引っ込めイングヴェィが来る前に逃げてしまう

「セリくん、君は自由だよ!」

階段から駆け下りてきたイングヴェィの言葉で俺はパッと魔法が解けて身体を動かせる

すぐに目の前のセリカちゃんの怪我を回復したけど、意識は戻らなかった

「セリくん…セリカちゃん…ごめん…

傍にいてあげられなくて」

イングヴェィはセレン様の姿を見ていないけど、すぐに察した

俺の動きを封じられるのはセレン様ただ一人だから

「ううん…四六時中一緒にいるなんて無理だよ

それに俺がバカだった…くだらないコトでグズグズ悩んで気にして…セリカちゃんをこんな目に合わせちゃった…」

イングヴェィはセリカちゃんを抱き上げて俺に家に帰ろうと言った

最低だ俺…イングヴェィが来てくれなかったらセリカちゃんは殺されていたよ

「セリくん…セリカちゃんを信じてあげて

君が思ってる以上にセリカちゃんは君を大切に思ってるよ」

大切……セリカちゃんが俺を…

ふと無意識に出してしまっていた自分の翼を見ると一部だけ黒くなっていた

これは俺の心が悪くなっているのを目に見える証拠だった

そうだ…忘れてた…俺は、7年前に嫉妬にまみれ憎んだコトで自分の翼が真っ黒になってこの存在が消えそうになった時

セリカちゃんは約束してくれたじゃん

何を忘れていたんだろう

あれから何年経ったって変わらないのに…変わるハズがないのに

セリカちゃんは俺のコトちゃんと大切に思ってる!大好きでいてくれてる!!

さっきセリカちゃんが怒ったのも当たり前だ

俺がセリカちゃんを疑ったから!!

セリカちゃん…ごめんなさい…俺バカだった

もう…わかったよ

セリカちゃん…イングヴェィと結婚してもいいよ

イングヴェィは…セリカちゃんを幸せにしてくれる

「認め…ます…イングヴェィとセリカちゃんの結婚……

セリカちゃんを幸せにしてあげてください、お願いします」

先に行くイングヴェィの背中に向けて頭を下げる

いつも助けてくれるのはイングヴェィだ

守ってくれるのも、受け入れてくれるのも

俺が邪魔しちゃいけないの、セリカちゃんの大切な人なんだから

大好きな人の幸せを奪っちゃいけないって俺は大人になるべきだ

「ありがとう、セリくんに認められて嬉しいよ

でも、セリカちゃんの幸せはセリくんがいなきゃ完成しないもの

だから…セリくんは何があってもずっとセリカちゃんの傍にいてあげてね」

何があっても…か

「当たり前じゃん!俺はセリカちゃんのクリスマスプレゼントなんだから何があっても、捨てられても離れないよ」

す、捨てられたり…しないよね?

急に不安になる、でも信じてるから大丈夫

イングヴェィが振り向いて笑うから俺も釣られて笑顔になる

この人がセリカちゃんの旦那さん…

やっぱ嫌だな

結婚しても俺はセリカちゃんを独占したい気持ちはなくならないだろうよ


家に帰って少しするとセリカちゃんは目を覚ました

とくに記憶喪失とかにはなっていない

「あんただれ?私と同じ顔に整形とか気持ち悪すぎ」

なってないハズなのに!セリカちゃんはまだ怒ってて意地悪言う!!

「ヒドイ!ごめんなさいセリカちゃん…もう大丈夫だよ

俺はセリカちゃんを信じてるから、大好きだから信じるよ」

へへへって笑うとセリカちゃんは照れてそっぽ向く

「俺はセリカちゃんのクリスマスプレゼントだもん」

ぎゅ~っとセリカちゃんを抱きしめると、セリカちゃんもふふっと笑ってくれた

守りたい人…俺の大切な大好きな人…

今日は助かったけど…

去年のコトもある…

このままじゃセリカちゃんの幸せがいつか壊れてしまうかもしれない

セレン様が生きている限り、いつまでもセリカちゃんを狙っている

どうすれば…君の幸せを守るコトが、俺に出来るんだろう



今年はクリスマスイブにみんなとパーティーをする

明日はイングヴェィとセリカちゃんはデートだって言うから…

いつもなら2人っきりズルい!って騒ぐ俺だけど、さすがに空気読むよ今回だけは

セリカちゃんはやっとイングヴェィに自分の気持ちを伝えるって強く決意していた

そんなセリカちゃんの邪魔はできないと思うから

セリカちゃんの告白が上手くいくコトを祈るよ

「毎年香月が帰って来てくれるけど、いつ見ても目が離せない美形よね」

明日他の男に告る女が何言ってんだ?

イブにみんなと一緒に過ごして、楽しい日になった

楽しい時間が終わって寝る前にセリカちゃんは乙女のような顔をする

「セリカちゃんって、香月からもプロポーズされて断ったのに?」

「もったいないと思うよね!?」

いや別に

「だって香月は私の理想なのよ!好みのタイプ!!」

それ何回も聞いてる

「じゃあ香月と結婚すればよかったじゃん、俺は正直セリカちゃんと結婚する男はイングヴェィでもレイでも香月でも誰でもいいし」

「チッチッチ、セリくんはおこちゃまね…わかってないわ」

ムカつくな

「好みのタイプと実際に好きになる人は違うコトもあるの

それが恋よ、おこちゃまのセリくんにはわからないかな」

「わかんねぇな!!」

俺は恋なんてしたコトがないからわかんない

みんなのコトは大好きだし、セリカちゃんのコトは特別大好きだけど

恋じゃない…

この先も俺は恋をするコトはないと自分で思う

俺はセリカちゃんのクリスマスプレゼントで、誰かに恋をして君から離れるコトになるなんて考えられない

むしろ嫌すぎる

俺はセリカちゃんのそばがいい

セリカちゃんと一緒にいられるなら、俺は恋なんていらないよ

だから、ハッキリ言ってわからない

俺には必要ないものだ

「セリくんも恋したいならしていいからね、私は束縛なんかしないよ」

「やめてくれよ、そんなコト言われるとセリカちゃんは俺を追い出したいのかって感じてしまうだろ」

「セリくんは私のクリスマスプレゼントだけど、だからって束縛していいと思ってない

実際はしてるかもしれないけど…

私は、ずっとそばにいてほしいと思ってるもの

だけどね…セリくんが幸せなら私は……」

なんだろ、その先は聞きたくなかった

セリカちゃんを突き飛ばしてベッドの上へと押し倒す

「俺は、セリカちゃんと一緒にいるコトが幸せだ!!」

何があってもセリカちゃんと一緒にいる、傍にいるって俺自身が決めたコト

イングヴェィとも約束した

俺はセリカちゃんが大好き、だから幸せなんだよ

「うん……私も幸せ」

セリカちゃんの笑顔を見てから俺はその隣に寝転がった

「早く寝ようよ、明日は大事な日なんだろ?

目の下にクマでも出来たら台無しじゃん」

「確かに!!早く寝なきゃ!その前に1枚五百円するパックしなきゃ!!」

ベッドから飛び起きてセリカちゃんは慌ててパックをはじめる

何回見ても怖いわ…パックしてるセリカちゃんの顔は…

まぁなんもしなくても絶対に上手くいくから何も心配はないか

俺は…セレン様のコトが気になる

あの人は俺のコトもセリカちゃんのコトも諦めない

ずっと…狙い続けて来る

どうしたら……

何があっても…君と一緒に……

セレン様が俺を壊しても…

一緒にいられるかな……



-続く-

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