2017年 第6話 それはまた今度 セリカ編

まぁ…私、生きてるんですけどね

いやーマジでビックリしたしビビッたわ

本当に死ぬのかと思って、途中から記憶ないし

「セリカちゃん、起きて大丈夫なの?」

「うん…なんか、眠れなくて…」

あの後、私は香月に延命してもらって天から帰ってきたイングヴェィに治してもらって復活よ

みんなに…助けてもらったな…

ホント、私はバカやったわ

一歩間違ったらホンマに死んでたもんな

「それにイングヴェィに治してもらったから元気だよ」

片腕をエイエイして元気アピールをする

真夜中の、ほら夜のテンションってやつ?

他のみんなは薄いふすまの向こうでお休み中

私の様子を交代で見に来てくれてるらしくて、今はイングヴェィがいてくれた

セリくんはと言うと、数日の心身の疲労と泣き疲れで私の隣で爆睡中だ

「……うん、そうだね…でも」

「あ、あぁ…セリくんを助けるつもりで乗り込んで失敗して、みんなの迷惑と心配をかけて申し訳ないです」

俯くとシンにされたコトを思い出す

あの激痛は忘れたりはしないし、セリくんへの酷い行いも絶対に許せない

神様がひとりなら殺しても許すよって言ったら、絶対にシンを同じ目に合わせて殺すわ

セリくんにしたコト全部…その数日をかけてね

それから……あの感覚…

シンに腹部を切り裂かれ手を突っ込まれたコト

痛いのもあったけど、それ以上に気持ち悪くてたまらなかった

私の中に…汚い手が…

お腹を手で抑え、辛い記憶に耐える

「セリカちゃん…」

「いや…なんか…私、なんか…汚いわ……」

なんか…ヤダ…凄くヤダよ、こんなの……

イングヴェィが私の手を握ろうとして、私はそれを避けてしまった

「ごめんなさい…私…に、触らないほうが」

イングヴェィまで汚れてしまいそうだ…から……

一生忘れられない穢れが…

「早く助けてあげられなくて…ゴメンね」

「なんでイングヴェィが謝るの?」

イングヴェィは天からセリくんと私の居場所を見つけてくれてレイと香月に教えてくれたんだよ

イングヴェィが教えてくれなかったら…今ここにセリくんも私もいないわ

「俺がもっと異変に早く気付けば、こんな事には…」

誰のせいでもない、みんなそう言うんだ

私自身も…セリくんだってそう…

「イングヴェィが気にするコトじゃないわ、私がバカで失敗しただけ」

「君のコトを守ると言っておきながら、守れていないから…」

イングヴェィ…今回のコトはしょうがないのに

私だって予想外だよ

「いいの…もう…そんなコト言わなくても」

もう、誰かに愛してもらう資格ないし…

だって…知らない男に、汚い手で身体の中をかき回されて!気持ち悪いでしょ!?

私が…気持ち悪いでしょう…

もう結婚は諦めた…私は…

「何度だって言うよ!俺は君を守りたいんだって、だって君のコトを愛し」

「わかってないの!?」

まっすぐな、変わらない愛が今は恐かった…

イングヴェィは純粋で一途で健気で…私とは違う

その穢れのない愛を私が受けているだけで罪と感じる

イングヴェィに…私は相応しくない

「わかってるよ!!」

イングヴェィに両手を掴まれ、そのまま唇を塞がれた

抵抗したくても強く掴まれた両手は動かせない

……キスされてしまった…

今まで誰にも返事をしていないから、誰からのも避けてきていたのに…

「知ってるよ…セリカちゃんが…あの男にされたコト…」

イングヴェィは悔しそうに…辛そうに…苦しそうに…悲しそうに…顔を痛いほど歪める

そ、うだ…イングヴェィだって…酷く傷付いてるのに私はなんて酷いコトを…

愛してる人があんな目にあったら…

イングヴェィだって…ここにいる誰もが私と同じように傷付いて…痛いんだ

何より、イングヴェィは私があんな目に合っても愛してると言ってくれる

きっと、レイも香月も…変わらずに

私と一緒に背負ってくれるこの痛みに

「それでも、セリカちゃんのコト変わらず愛してるよ

ううん…もっともっと愛してる」

イングヴェィは私をそっと、でも強く抱き締める

「俺だって、恐かった…

急いで天から帰ってきたら、君が死にかけていたんだもん」

「うん…」

「おかしいよね…君が死んだら天でだって会えるのに

でも…嫌だった…君が酷い目に合って死ぬなんて」

不幸なまま死なせたくなかったとイングヴェィは言う

「幸せにしたいんだ、君のコト…」

またイングヴェィが私にキスをする

今度は両手を掴まれているワケでもない、抵抗だって出来るのに…私はしなかった

もう、嘘を付きたくなかったから、誤魔化したくなかったから、惚けたくなかったから…

あの時、気持ちも伝えられずに死んで行くのが嫌だった

私も…ちゃんと伝えたいから

対抗しなかったらしなかったで、イングヴェィは今まで我慢してたんだよと言わんばかりに深く長いキスを受ける

「うぅ…」

なんか負けた気が…

慣れてないし…めちゃくちゃ恥ずかしい…

「セリカちゃんって…本当は可愛いよね」

そのままベッドへと押し倒され、イングヴェィが覆い被さる

私の頬撫でて、首へと触れていく

冷たい指が手が私の熱を上げる

いやいやいや…!!

「…ま、待って!ダメだよ…そんな……」

「なぁに?そんな…?」

「そんな…」

私が顔を真っ赤にすると、イングヴェィはアハハと吹き出す

「しないよ、だって隣でセリくんが寝てるもん

起きちゃうよね」

ガーン!か、からかわれた…

まだ返事をしていないからダメなの!!

決して、ごにょごにょがなんたらかんたらとかじゃないから!!

「何年も我慢してたから、正直ここで止めるのは俺も辛いんだケド…

隣の部屋も薄いふすま一枚じゃ聞こえちゃうからね…セリカちゃんの可愛い声が」

意地悪に、イングヴェィが私の耳元で囁く

な、なんか…!ムカつく~!!イングヴェィはたまに意地悪言う!!

そこが良いんだケド…

「違います!まだ返事をしていないからダメと言ったの

イングヴェィがそんなコト言うなら、返事は来年のクリスマスまで待ってね!」

「えー!?来年のクリスマスなんて、我慢できないな」

「じゃあイングヴェィなんか嫌い、返事しました」

「ウソ?セリカちゃんは俺のコト大好きだよ」

超ポジティブ恐い!!

笑顔でイングヴェィは自信満々だ

「それにイングヴェィは遠慮してたんじゃないんですか、ずっと…」

私は薄々気付いていた

それはイングヴェィからなのか、私からなのか…お互いがずっと遠慮してきていた

それが1番良いと思ってしまっていたから

「……そうだね、遠慮なんてしたくないのに

どうしても…あの時のコトを思い出しては…」

あの時と、イングヴェィはレイと私のコトを気にしている

私が先にレイと出逢ってしまったから…

私も悪いとわかっている

だから今まで…そんなのいけないってわかってたのに、意味ないって知ってるのに

「でも、それが正しいコトじゃないって気付いたんだ

何年もかけて出した答え、今のままでは誰も幸せになれないんだって…

自分が1番大切にしている人も」

イングヴェィは私に優しく微笑む

やっぱり…みんな、もう答えを出していた

覚悟もある…なら、私もそうしなくちゃ

「うん…そうだね」

「セリカちゃんが返事をしてくれるまで、ちゃんと待つよ

さっきのはゴメンね…つい、キスしちゃった

今日のコトが恐くて、って言い訳みたいだね」

イングヴェィ…心配かけてごめんなさい…

さっきのはなかったコトにしておきます

未来に不安や心配もあるけれど、一歩を踏み出さなきゃ

勇気を出して

返事は…ちゃんとしないといけない

ずっと、長いコト待たせたのだから……

ちゃんと、イングヴェィに、レイに…返事をする

私の気持ちをちゃんと伝えるから…待っててね

来年のこの時期まで…!!心の準備するから…(建前、本音はもう今年終わるから)



-続く-

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