2012年 第8話 違う形で幸せな未来が戻った
朝の光に眩しくて目が覚めると、少しの間は意識がぼんやりする
でもすぐに意識がハッキリして身体を飛び起こした
ココは…人間世界だ…俺とセリカちゃんの部屋だ
「セリカちゃん…会いたかった…」
隣にはまだスヤスヤと眠りに入ってる君がいる
温かい君の体温は本物で、何の変わりもない
本当の俺の現実が帰ってきた
元通りになってる…
「うわああああああああ!!!!!!!!!やったああああああああああ!!!!!!!!!」
嬉しさのあまり思わず叫んでしまう!もう歓喜!!
「…はっ!?うるせぇよクズ!!!!??」
相変わらず寝起きはクソ悪いセリカちゃんに本気で殴られた
お変わりなくて嬉しいです…
「だってだって久しぶりなんだぞ!?喜ばずにいられねぇもん!!」
殴られても蹴られても俺はセリカちゃんを抱きしめて実感する
俺の現実を幸せを
「何が久しぶりなの…
もう眠いんだから、静かにできないなら今日から一緒に寝ないよ」
「それはヤダ」
大人しくベッドの中に潜り直す俺
でもすぐにピンポーンとチャイムがなった
「…?こんな朝から誰よ非常識ね
殺されたいの?まぁ無視しよ無視、寝る」
「あっ」
セリカちゃんにはわからなくても俺にはわかった
朝から来たこの気配はイングヴェィだってコトに
イングヴェィもセリカちゃんを確かめに来たんだ!
「はいはい!」
「ちょっと出るの?」
俺の妙なテンションにセリカちゃんは不思議に思いながらも自分のペースは崩さずベッドからは出ない
「セリカちゃん会いに来たよ」
でも、ドアを開けて迎え入れたイングヴェィが来ると飛び起きて掛け布団を頭から被った
「えっイングヴェィ!?なんで!?
パジャマのまんまだし髪もボサボサでメイクもしてないのに…
急に来られたら困るよ恥ずかしいよ……」
一気にしおらしくなって顔を真っ赤にするセリカちゃんを掛け布団ごとイングヴェィは抱きしめた
「眉毛薄いの!眉毛!見ないで~」
「どんなセリカちゃんも可愛いよ」
恥ずかしがってイヤイヤしてもイングヴェィは容赦なくセリカちゃんを腕の中に閉じ込める
冬なのに熱いなコイツら…
まっ、2人もいつも通りみたいでよかったかな
まだ嫁にやるのは許してねぇケドな!!
「あっそうだイングヴェィ
今年もクリスマスパーティーするのに、レイと話してたんだケド」
「……………。」
も、元通り…じゃない……?
やっぱりレイとの関わりはあるままなのか…
レイの名前をセリカちゃんの口から聞いたイングヴェィの時間が止まった
笑顔がそのまま凍りついたような感じだ
「……俺はセリカちゃんと2人っきりで過ごしたいな…」
「クリスマスはみんなで楽しく過ごすって決めたじゃない」
イングヴェィのどんな人でも落ちそうな熱い眼差しもセリカちゃんは苦笑して交わしている
今はみんなで楽しくって言ってても、いつかは答えを出さなきゃいけない
その時のセリカちゃんが心配だな
イングヴェィはまた病みそうだし…
…過去に行った時…俺がセリカちゃんと早めに出会ってしまったから、レイと関わるコトになったんだっけ
俺がいなければセリカちゃんはあの日会社に遅れるコトもなかったから…
「セリくんのせいじゃないよ」
セリカちゃんが顔洗って着替えてくると部屋を出て行くと俺の心がわかるイングヴェィが笑う
イングヴェィはセリカちゃんのコトならなんでもわかるからソックリな俺のコトもわかるらしい
スゲーわ
「レイくんとは遅かれ早かれ出会うハズだからね
俺達が過去に行って、本来より早くに出会ってしまっただけ」
「でも、それで余計複雑な状況になった気がするんだケド」
「そうなんだよね……
セリカちゃんが死ぬまではレイくんに譲るとか言っちゃったし…………」
急に思い出したイングヴェィは肩を落として暗くなる
なんでそんなコト言ったんだイングヴェィ!?
オマエなら何があっても譲らないだろ…
話はだいたい聞いたケド、俺の聞いてないトコで一体何が……
「すぐ撤回したケドね!
自分の立場を考えてそんなコト言っちゃった
でも、セリカちゃんのコト大好きでたまらないから…自分の気持ちのままにいきたいよ」
「撤回って自分の言ったコトがウソになっていいのか!?
イングヴェィって偉いんだろ!?」
「あっそうそう」
ウソついたコトを触れられたくないイングヴェィは笑顔で話を強引に変えてきやがった
コイツが俺のマスターより偉いなんてマジ信じられねぇ
「セレンさんのコトだケド」
「それ気になってた!どうなったんだ?」
「彼女には創作の力を失わせたよ」
香月のコトとリジェウェィさんのコトで1番関係してたセレン様の話になって俺は真剣に聞く
創作の力ってマスターが俺達を創り出す力だよな?
マスターの力を剥奪できるイングヴェィってやっぱスゴイのか…
「こんなコトは俺もはじめてで、力を失った彼女は大きなショックを受けていたよ
反省してくれればいいとは思うけれど、それでも俺は彼女に力を与え直すコトはないかな」
あのセレン様が力を失ってショックを受けてるの?
ちょっと、可哀相な気もする…
イングヴェィのコトが好きでなんとかしたくてセリカちゃんを狙ったって気持ちは愛なワケだし
と同情してたら、ハッと香月やリジェウェィさんのコトを思い出す
自分のワガママで壊したり利用したりするような人なんだ…
創作の力を剥奪するのは当然だよ!
セリカちゃんの命も狙った人、許せない許しちゃいけない人
セレン様の自業自得なんだ……
「…まぁ……リジェウェィさんが生きてるならそれで良いかな…俺は」
複雑な気持ちになるケド
「うん……
それと、リジェウェィくんはマスターのセレンさんが放棄したからセリくんのマスターの所でお世話になっているよ」
セレンさんの力を剥奪したのを少しは気にしてるイングヴェィの返事には元気なかったケド
すぐに暗いのはダメだと感じたイングヴェィは嬉しい情報を教えてくれた
セレン様は自分の想い人に似せて創ったリジェウェィさんを傍にはもう置いておけなかったんだろう
「リジェウェィさんが…俺と一緒のマスターに…!」
一緒のマスターってのも嬉しくて、今年も会いに来てくれるかなって思ったらテンション上がってきた
そういえば…香月はどうなったんだろ?
香月も俺のマスターの元に来てるのか?
気になって聞こうとしたらセリカちゃんが戻ってきて聞けずになってしまった
そして24日のクリスマスイブ
俺達はみんなでパーティーだ!!
「へぇ…今年はレイくんの家でパーティーなんだね……」
パーティーの場所は俺とセリカちゃんの家、イングヴェィの家、レイの家を毎年順に変えていってるみたいだ
イングヴェィと俺は過去に行った影響で今の現実の変化した所は記憶がないから初耳になってる
「ペットのフェレットにセリカちゃんの名前付けてるとかありえないんだケド…」
そう言いながらフェレットのゲージをジトッと見ている
イングヴェィ…せっかくのクリスマスイブを楽しもうぜ……
「メリークリスマス、セリカ
ほしがってたバッグ(60万)だぞ」
「あら~ありがとうレイ~嬉しいな」
箱を見ただけでわかる高価そうなプレゼントをレイから受け取るセリカちゃんの振る舞いが悪女っぽい
良いように使われてるぞレイ!?
「バッグより現金のほうが嬉しいな」
レイの前では可愛らしい笑顔を見せていても俺の傍に来ると本音と言う毒を吐く
「セリカちゃんには愛ってもんがねーの…?」
「私は結婚するなら金とする!」
誰かセリカちゃんに愛の素晴らしさを教えてやってくれ!!
レイがいなかった頃のセリカちゃんはイングヴェィに出会って愛が芽生えたって感じはしたが今は微妙なんだろうな
イングヴェィは完全にレイの存在に拗ねて暗くなってるし
「セリカちゃん!メリークリスマス!
俺からもプレゼントあるんだよ」
それでもイングヴェィはやっぱり明るくて太陽の笑顔を振り撒くのがらしいから
そうしてセリカちゃんにプレゼント箱を渡した
「イングヴェィも…ありがとう」
レイの時と若干違ってしおらしくなる
本命はイングヴェィなのか?
「中身はね、開けると世界中のみんながイブの今日を幸せに過ごせる魔法が詰まってるんだよ」
嬉しそうに明るく話すイングヴェィとは対照的にセリカちゃんがいらねーって顔をしたのを俺は見た
そう思ってても開けないワケにはいかないセリカちゃんがスッとプレゼントのリボンを解く
箱を開けるとキラキラとした光が舞い上がり、その瞬間なんとなく周りが明るくなったような気がする
ん?明るくなった気がするのは魔法の力か…?
「…箱の中に何か入ってる……」
キラキラに驚いていたセリカちゃんがもう一度箱の中を覗くとそこにはピンクのハート型の宝石があった
「綺麗…」
「セリカちゃんには愛をプレゼントだよ」
「嬉しい……」
イングヴェィの眩しい笑顔にセリカちゃんの口元が緩んでいく
愛を形で表して、それが今のセリカちゃんにはわかりやすいのかもしれない
宝石=金的な…意味で……
「人間の皆が幸せに過ごすなら、当然今夜はオレにセリカを譲ってくれるんだろうな?」
人間って言葉を強調してレイはセリカちゃんに近づくイングヴェィの肩を掴んで引いた
「人間だけなんて言ってないもんね
だからレイくんはセリカちゃん以外の幸せを見つけてね」
2人の爽やかな笑顔と太陽のような笑顔の裏に黒いものを感じ火花を散らしているのを見て
また騒がしくなると思った俺はこっそり部屋を抜けベランダに出た
やっぱ寒いな~こんなに寒いのにこの地域って滅多に雪降らないから、せっかくのクリスマスが物足りないぜ…
魔法で雪を降らせるしかないのか毎年のように
「タイミング良く出てきてくれるとはな」
空を見上げていると、遠目から見えてすぐに俺の傍まで来てくれる
1年振りの
「リジェウェィさん!!」
だ!!!
めっちゃ久しぶりで嬉しい
過去が変えられた時はセレン様の神殿で死んだ姿を見てしまったから…今年も会えたコトに感動する
それにリジェウェィさん…なんだかスッキリしたような表情をしてるな
俺と同じマスターになったからかな?
「会いに来てくれてありがとう
今年もリジェウェィさんはもうクリスマスプレゼントを人間に贈ったんだろ?
話し聞きたいな」
「いや、今年はまだこれからなのだ」
楽しい話をワクワクしながら待っているとリジェウェィさんがふっと笑って魔法で袋を出しその中からカードを取り出した
「マスターからセリにと」
「クリスマスカード?」
いつもマスターとお話するケド…カードもらえるなんてはじめてかも!?
何々?!めっちゃ嬉しいんだケド!!!
渡された綺麗なカードを開ける
もうリジェウェィさんにも会えて嬉しいしマスターからカードもらえて嬉しいし
この嬉しさをどう表現したらいいの…か……
「……………。」
カードに書かれているメッセージを読み進めていくと
今年はどうやらセリカちゃんのクリスマスプレゼントになって一応人間になった俺がリジェウェィさんの贈る相手に選ばれたみたいで
うん…そこまではいいんだ
でも…ココ、ココ!!ココに書かれてる内容!!?
どういうコトだ!?
「後輩がほしいと願うセリへの贈り物だ」
ココ!ココ!!と強調して書かれている文面を凝視しているとリジェウェィさんが言っちゃった
文面に書かれた俺への贈り物、俺に後輩を…クリスマスプレゼント
「またお会いできました、3年振りですね」
カードに釘付けの俺の頭上から降る声に顔を上げる
後輩…香月……が俺のクリスマスプレゼント!!!???
目が合うと俺は思わず目をつむって反らす
マスターのお心遣いはとっても嬉しいですケド!
俺を先輩とはカケラも思ってないこんな可愛くない後輩はイヤだ!!
「あぁ…香月……オマエはそれでいいのかよ
俺のクリスマスプレゼントなんてなったら帰れないんだぞ?」
返品だ返品、できるかわからんケド
「えぇもちろん」
もしかして香月もセリカちゃん狙い?前に自分好みって言ってたし…
こんなのイングヴェィまた怒るぞ?ライバルが増えたって!
「む、もうこのような時間か
オレはそろそろ帰らなければならないのだ
また来年だセリ」
ヒマそうで忙しい優秀なリジェウェィさんは懐中時計で時間を確認すると早々と飛んで行ってしまう
「リジェウェィさん~~~!ま、また来年……」
ちゃんとお別れも言えないくらい忙しいんだな…
呼び止めるように名前を叫んでみたケドあっという間にリジェウェィさんは見えなくなる
残された俺達に数秒の沈黙が流れた後
「これから宜しくお願いします」
香月が俺を見下ろし言う
「セリカちゃんに怒られるかも…
また1人増えたら生活するのに金がかかるって…」
俺がより強く心配なのは後輩が可愛くないコトよりセリカちゃんが怒るコトだ
可愛くないのもイヤだケド
「大丈夫でしょう」
何が大丈夫なんだ!?自分は俺より稼げる自信があるぞって見下してんのか!?
「さあ中に入りましょう
いつまでも外にいてはいくら貴方でも風邪を引いてしまいます」
「俺は風邪引かないから平気だし!」
「馬鹿は風邪を引いても気付かないそうですが本当なのですね…」
ぐっ…そうかもしれないって思うからムカつく……
もう可愛くない後輩だ…
そう思っていたら香月は俺の額に手を当てて
「…今は大丈夫」
心配してくれてるんだ…
言い方が上から目線でムカつくって思っちゃうケド、香月は香月なりに俺のコト想ってくれてるのかもしれない
3年振りって言ってたし…
香月はセレン様が過去に送ったからセレン様が戻さない限り過去の時間で生きていくコトになったハズ
そして俺が戻るこの時間までずっと待ってたのか…3年も俺を
過去の俺じゃなくて今の俺を待ってたんだよな……
そう思うと可愛く思えてくるし、俺の表情も自然と柔らかくなって微笑む
「香月…じゃあ、香月が風邪引いた時は俺が看病してやる
俺は先輩だしな!」
これから一緒にいるコトになるんだし、仲良くしようじゃん
「余計悪化しそうなので遠慮します」
笑顔と気持ちが凍り付いた
やっぱ…いらねーこんな後輩!
-シリーズ第3弾・2012年終わり-
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