2012年 第5話 恋も愛もない私へ セリカ編
家族もいない友達もいない、もちろん恋人もいない
何年も…
そんな私はまだ若くてもあっという間に孤独死するんだと思ってた
生きてるコトが不思議なくらい…毎日がおぼろげなんだもん
なんか知らないケド12月に入ってすぐに、私にソックリな男が現れた
「1週間後に何者かに殺される君を守りに来たんだよ!」
頭おかしい奴だと思った
私のコトが好きすぎて私の顔に整形したんだろこのストーカー野郎って思うでしょ
でも、コイツが手品?で出した子ウサギの可愛さに騙されて兄妹として暮らすコトになってしまったの
まぁいいか、何かしようとしても弱そうだから勝てる
コイツ…セリくん(名前まで似てるとかどんだけ私好きなの)と一緒に住むコトになった頃
駅の階段で落ちそうになった私を助けてくれたレイと出会った
イケメン大好きな私はすぐに彼のコトが好きになる
気が合うのもあって、短い時間でもすぐに打ち解け合う
カッコ良くて優しくて頼りになって…ちょっと意地悪な所もあるケド、からかわれるのは嫌いじゃないから……
「えっ?レイって彼女いないの?」
最近毎日仕事帰りはレイと会って少し話すコトになっている、楽しいからかな
今日もレイと夕食を一緒にしていると急に彼女がいないって話になった
「ウソでしょーカッコイイのに彼女いないとか、そんなコト言って色んな女口説いてるんじゃ?
二股三股は当たり前ですか?」
アハハと笑い飛ばすとレイは少し怒った口調になる
「嘘じゃないんだが…オレがそんな男に見えるのかい?」
二股三股は冗談で言ったのに…レイが怒った
冗談なのに…でも、レイにとっては冗談でも嫌だったんだ
私が悪い、ごめんなさい
「見え…る……見えないです」
「おい…」
最初のほうが本音です
だってイケメンって女関係だらしないってイメージがあるんだもん……
「セリカは彼氏…いるわけないな」
真剣に私を見つめてきたかと思うといつものからかいの笑みを見せる
「どういう意味だ!?」
本当のコトだから何も言えなくなる…
私はずっと1人なのかな…って思ったら元気なくしちゃうな
「心配するな」
食後のアイスをチビチビ食べてると軽く身を乗り出したレイが私の頭を撫でて、そのまま伝票を持って席を立つ
「心配するなって…?」
意味深な言葉を残してさっさと会計を済ませようとするレイが気になりつつも目の前のアイスが残ってるのが気になって急いで食べる
貧乏人のもったいない病は何にも勝てない瞬間だった
アイスを食べてレイを追い掛けるようにしてお店を出る
「レイありがとう、お金払うよ?」
外で待っていたレイに鞄からお財布を出そうとしたら止められた
「いいよ、今日はオレの奢り
いつも奢らせてくれないからな」
勝ったって表情を浮かべるレイはドコか嬉しそうだ
「私は貧乏だけど、奢られるのって借りを作ったみたいでイヤなの
だから払」
「そんな事よりセリカ、あれ乗らないか?」
しつこい私の言葉を遮ってレイが指さす先はビルの屋上にある観覧車だった
カップルばっかの観覧車に乗って何が楽しいの?
「えー、だってカップルばっかだよ?」
そう言ってもレイは強引に私の手を掴んで観覧車まで連れて行く
観覧車に乗る前に写真を撮られる…だと
私、写真嫌いなのにって無意識でしかめっつらになっていると
「笑ってくれたら、これやるよ」
レイはいつの間にかドコかで買っただろうと思われる可愛いウサギのキーホルダーを取り出して見せてきた
「ウサちゃん!可愛い!」
自分の好きなものに思わず笑顔になった瞬間、フラッシュが光る
カメラ目線じゃなくて2人ともお互いを見る形になっただろうケドきっと自然な笑顔の素敵な写真だって想像すると少しだけ恥ずかしくなった
そんな複雑な気持ちのまま私達は観覧車に乗ったのだった
向かい合わせに座って、急に2人っきりの空間になると無言が続く
でも、もうすぐ頂上になるって時にレイが口を開いた
「…隣に座ってもいいかい?」
「……いいよ…」
なんだか…緊張するな
ゆっくりとレイが私の隣に腰を下ろす
微かに触れる肩から体温を感じて、ちょっと変な気分になるよね……
「!?」
座ってからレイは黙ったまま私の手を握ってきた
ギャー!なんですか!?この少女マンガ的展開!?いたたまれないわ!!
でも、私は手を離すコトもしなければ握り返すコトもできなくて
「セリカ…オレと付き合わないか?」
真剣な声、そして表情が空いた前の窓に映る
夜の空に見えるレイの顔は真面目で冗談で笑い飛ばす空気なんてなかった
「……ま、まだ…会ったばっかなのに?」
「これだけすぐに気が合う人は初めてなんだ
好きになるのに時間なんて関係ないだろ?」
「そうですが…」
緊張して敬語になってしまう
「オレはセリカが好きだ
セリカはどう思ってるんだ?」
「私も…レイのコト好きだよ…でも」
好き…ってなんなんだろう
それは恋なんだよね?
私はそういうのがよくわからない
好きだケド………私には恋心なんてないような気がするの
「でも?」
「わからないの…
好きだケド、わからない…
カップルになったらクリスマスとか誕生日とか一緒なんだよね
でも、私そういうの気にしないし冷めてるし」
好きなのに心が満たされない
穴が空いたようにポッカリと寂しいの
私はいつもそうだ
誰かに好きって言われても、好きになれない
レイみたいに好きな人がいても…何か違う
好きって言うたびにそれがウソのような気がして抵抗感があるの
だから今までいつも誤魔化してきた
相手が私を好きだってコト気付いてても気付かないフリして遠ざけて傷付けて
1人ぼっちになる
私は自分で自分を1人ぼっちにしてきたんだ……
「……私…昔、男にヒドイ事されて…
それからわからなくなったのかもしれない
好きがわからないの」
昔のコトなんて何も思い出したくない
でも、いつまでも自分の殻に引きこもって生きてちゃいけないって気持ちから
声が震えてもレイに話してしまった
「セリカ…」
こんなコト話してもレイが困るだけなのに…
私のコト気持ち悪いって思われるかもなのに…
そんな不安を掻き消すようにレイが私を強く抱きしめる
言葉じゃなく直接伝わってくるような感情に涙が溢れそうなのに
私の愛は戻ってこない
なくしちゃったから
「…今はわからなくてもいい
オレが時間をかけてお前の事を癒していくから」
「レイ…」
抱きしめられていたレイの腕が緩み少し距離ができる
私を見つめるレイの瞳が私には眩しくて軽く目線を下げてしまう
その予感はしていた
戸惑っていた私の唇をレイは少し強引に奪う
それでも私は突き放さなかったし、そのまま受け入れるコトにする
レイのコトは好きだから…好きだけど……何か足りないキスに私に心はあるのかな?
「今日…オレの家に来ないか……」
疲れてしまった私はレイの腕の中で大人しくしていたら
その気になってしまったレイに誘われてしまった…
どうしよう……セリくん待ってるだろうな
アイツはバカだから私が朝帰りしてもその意味はわからなそうだケド…
私は最低だ…
レイの言葉に頷いてしまったのだから
レイのコト好き?
好きだけどわからない
何度も自問する
私がレイに頷いたのは、このままじゃいけないと思ったから
なくした愛が戻ってくるかもしれないと期待をしたから……
私だって恋愛したいもん…女の子だもん
でも……できない…どうして……
レイのマンションに行くとフェレットがいた!
「何コレ可愛い!首絞めたい!」
「そういう恐い愛情表現はやめろ…」
緊張してたケド、フェレットの可愛さにそんなものはなかった
レイが1人暮らしって言うのは知ってた
でも、まさかフェレットがいるなんて知らなかったな
「名前は?」
「セリカ」
「それマジで言ってんの?」
恥ずかしがるコトもなくサラッと……
「あぁ、ずっと名前がなかったからつい最近セリカって付けてやったんだ」
「ペットに好きな人の名前付けるとか痛いわ~
振られたらどうすんの?」
「オスだがな」
「おいコラ!」
暫くフェレットを触らせてもらってたらレイがおしまいって言ってゲージに戻してしまった
まだフェレットと遊びたいのに…
「…振られる前にオレのモノにしとこうか?」
いつまでもゲージの中を見ている私の後ろからレイが抱きしめてくる
いつもの爽やかなレイと違って今のレイは狼さんっぽいよ!!?
私は可愛いウサギさんね!!
テンパッて思考がおかしくなる
「ダメ…ペットが見てるよ…」
「それじゃ」
レイは私を軽々しくお姫様抱っこして寝室へと連れて行く
あ~~~私のフェレット~~~~………
ベッドにそっと寝かされるとレイの匂いがいっぱいする
いつもココでレイは寝てるんだよね…
良い匂いだからこのまま寝そうZzz
…いや!寝たら好き勝手されちゃう……!?
「嫌がらないと好きにしてしまうが?」
「えっレイなら嫌がってもするでしょ?」
「まぁね」
嫌がってくれたほうがオレ的には嬉しいって顔で笑われた
変態ね…
軽くキスされて、私を愛しいと撫でる
それってどんな感情なのか…
私はまだわからない
なくしちゃったんじゃない
最初から…芽生える前に消えちゃったんだ
だから何もわからない
レイがキスしてくれる意味も感情も
「セリカ…愛してる」
「……………。」
愛してるってウソでもいいから返さなきゃいけない状況まで来てるのに
私は……本当に最低な奴だね
「……言ってくれないのかい」
私の服に手をかけていたレイの動きが止まって、悲しい表情に変わっていく
「レイ…私はイヤな奴だよ
貴方のコト好きだケド、本当に人を愛せない
さっきも言ったケド……
レイが満足なら別にこのまましてもいい…」
いいの…?よくない
でも、いつまでも私は1人なのもイヤだ寂しいって思うのは…
私が哀れな人間だから…?
私はレイを利用してる
こんな私大嫌い…消えてしまいたい……
「…オレはお前がほしいけど、それよりもっと自分を大切にしてほしいんだ
そんな事は言ってはいけないよ」
私に覆いかぶさっていたレイは苦笑して私の隣に寝転ぶ
「焦らなくていい、オレはずっと待とう
本気で惚れてくれるまでな」
いつもの爽やかな笑顔が私を見る
優しく頭を撫でられて、私はレイの優しさに触れたような気がして悲しくなる
「………私が惚れる保障ないかもしれないのに……」
こんなに良い人を最低な私が縛っているコトが許せなくて悲しくて辛い
私だってちゃんと人を愛せるようになりたい
なりたいよ……
恋心は置いておいて、レイへの信頼はあの日から強くあった
今日は一緒に水族館デートだしね!
急かしたりしないレイと私の関係は心地好いものになってる
たま~に欲求不満って言われるケド…知らね…
「セリカ、館内でも人が多いんだからあまりオレから離れるなよ」
「だって早くシロクマ見たいんだもーん」
「まったく…ほら、お手は?」
私の目の前に手を出してレイは言う
これは迷子になるからシッカリ繋いでおけって意味だ
レイと手を繋ぐのは初めてじゃない…でも私は毎回いつも戸惑う
手を繋ぐのって恋人同士って感じがするから…
レイのコトは好きだケド…やっぱりまだ……
それでも私は拒否すると悪いって気分になるからその手を取ってしまう
そしたらレイが笑うから私も釣られて笑った
さっきの光る魚のコーナーでも…誰もいなかったとは言え、レイに肩を引き寄せられたのは緊張したな…
複雑な気分になって、世界中の恋する女の子の中で私だけ仲間外れな気分になる
ちゃんと好きにならなきゃいけないのに…
色々悩むから考えるコトを放棄して気軽に時が経てばを期待する
悩むのをやめると可愛いシロクマの赤ちゃんを見れて私は少しだけご機嫌だった
今はカフェテラスで休憩中、この時期に外は寒いケド中は混んでたからね
「次は何見る?」
ホットココアを飲みながら次はドコに行こうかパンフレットを見ていると
「セリカ」
レイの真剣な声に身体がビクつく
レイは表情もだケド声にも感情が出やすくてわかりやすい
これはもしかして…また真剣な話が始まると予感した私はちょっと冗談っぽく返す
「なんですか!」
「前にも言ったが、やっぱりオレの恋人にならないかい
セリカを急かしたいわけじゃない
でも、何故かはわからないが不安でたまらないんだ
誰かに奪われてしまう前に…」
それでもレイが真剣に続けるから私は目線を反らし俯いてしまう
私はレイに甘えていた
レイだって相手の気持ちがわからなかったら不安になるよね……
また後で、やっぱ待つよって私を気遣って言ってくれるのはわかっていても
私は早く答えてあげないといけないんだって思う
どうしたら…私はこの先レイをちゃんと好きになるコトができるの?
好きでも、今の私の好きとレイの好きは違うのに
そんな中途半端な気持ちで付き合うの?
ただ付き合うってコトに私が深く考えすぎなのかな…
でも、とりあえずなんて相手に失礼なコトしたくない
私はちゃんと誰かを心から愛して恋人になりたいよ
「レイ…私は…貴方のコト」
私の今の気持ちを口に出そうとすると知らない男の人の声がそれを遮った
「言わないで、聞きたくない…」
もしかしたら違う人に話しかけてるかもしれないのに
私は不思議とその言葉が自分に向けられたんだとわかって声のするほうを振り向いた
-続く-
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