2011年 第6話 輝く真っ白な羽根の持ち主
「セリカちゃん」
「ん?」
「なんでもない~呼んでみただけ」
クリスマスの今日
君は約束してくれた通り俺と2人っきりで過ごしてる
ドコにも出かけないで家でまったり
君とどっかに出かけるのもいいケド、こうして膝に乗せてお話するほうが好きかも
「さっきから名前だけ呼んで何もないとかウザイ」
「ガーン!」
幸せなのは俺だけだったみたい……
君はそう言うケド、本当にウザかったら離れてると思う
約束でもイヤなコトはイヤってハッキリ言う仲だもんな
「こんばんは、2人はいつも仲良しですね」
「うわっ!?」
俺達以外に誰もいないハズなのにいきなり後ろから声がした
ビックリした俺は思わずセリカちゃんを抱いたまま立ち上がって離れちゃったよ
「マ、マスター!?」
振り向くとそこには人間サイズのマスターが…
優しく微笑んで俺達を見ていた
マスターが俺と同じサイズなんて感動!!
人間サイズでも…マスターのほうが俺より背が高いケド……ショック
他の女性マスターの中でも背が高いほうだから当たり前か……
いつもは俺を人形のように抱き上げるほどの大きさに差がある
でもこうして俺が立って目線が近いと、いつも遠くに感じてた存在が身近に感じるような気がした
「セリくんのマスターさん…昨日はありがとうございました
お蔭様で仲直りしたと言うか…セリくんが消えなくてよかったです」
セリカちゃんがお礼を言うとマスターはいえいえと返す
「私もこの子には消えてほしくなかったですから、こちらこそ助けてくださってありがとうございますね」
2人とも…ありがとう…なんか嬉しい
2人が昨日どんな会話を交わしたかなんてわからないケド、俺のコトを大切に想ってくれたんだってのはわかった
「マスターマスター!今年も会いに来てくれて嬉しいです!!」
嬉しくてマスターに抱き着くとサイズが変わらないからいつものように抱っこはしてくれないケド、俺を優しく抱きしめて頭を撫でてくれる
幸せすぎる~マスター良い匂い
「今日はセリカさんと2人っきりで過ごすと聞いているのであまり長居は」
「マスターはいてもいいです!」
「だそうです」
遠慮するマスターを引き止めるとセリカちゃんが素早くマスターにお茶を差し出す
「あらあら」
歓迎する俺達に少し驚きまた微笑む
「それでは少しお邪魔させてもらいます
その前に、先にあの方にご挨拶して来ますね」
「あの方??」
マスターは俺の頭をひと撫ですると玄関から外に出てしまった
今の時期はみんな人間世界に来てるからマスターに創られた俺の仲間に会いに行くのだろうか?
いやマスターは俺達をあの方なんて呼んだりしない
あの子とか私の子とかそう言った表現をするから…
他のマスターに会うのか?
でもマスターがあの方なんて呼ぶ他のマスターが誰か思いつかない…
ちょっと気になりつつも俺はマスターの帰りを待つコトにした
マスターが出て行ってから数分もしないうちに窓をコンコンと叩く音が聞こえる
なんだ?と思ってカーテンを開けると
「リジェウェィさん!」
が会いに来てくれていた
優秀なリジェウェィさんは毎年さっさと仕事を終わらせてクリスマスの最終日にいるコトなんてなかったのに
今年は来てくれなかったから会えないのかと思ったらまさか今日会えるなんて
「少しこいつを借りるぞ」
「どうぞ~」
リジェウェィさんはセリカちゃんにそう言うと俺を外に引っ張り出した
「えっ何!?どうしたのリジェウェィさん!?」
久しぶりだなとか挨拶もなしに外に連れ出された俺は今の状況がよくわかってない
やっぱりイングヴェィにソックリだな…
でも今俺の手を掴んでるのはリジェウェィさんで間違いない
「リジェウェィさんが…クリスマスの日にいるなんて珍しいね……」
ちょっとイヤな予感がするような……
近くの公園まで連れてこられてリジェウェィさんは俺の手を離した
気持ち程度に中央の花壇だけクリスマスのイルミネーションが輝いてる小さな場所
誰もいない
「…お前に話があるのだ」
リジェウェィさんなんか元気がない?
「うん」
そう感じたケド、リジェウェィさんが話しをするから黙って聞くコトにする
「今年の人間世界に来てすぐにお前に会いに行ったのだが、そこには俺とそっくりな人間がいて驚き一度マスターの元へと戻ったのだ…」
「イングヴェィのコトか…
あれだけソックリだとビックリするよな」
たぶん俺がセリカちゃんと初めて会った時以上の驚きじゃねぇかなリジェウェィさん
俺は事前にマスターから自分にソックリ瓜二つの女の子って聞かされていたし
「そしたら色んな事を喋り出したのだ…
初めに俺はマスターの想い人に似せて創られたと言う事
つまり…セリの傍にいた俺にそっくりな人間だと思っていた男は」
えっ
「……………。」
話に頭がついてこなくて固まってる俺を見るとリジェウェィさんは1回話を止めて待ってくれる
「ハッ!?セレン様の好きな人…あぁ…イングヴェィはマスター達のリーダーに似てるってコトか!」
あ~ビックリした
一瞬、マスター達のリーダー本人かと思ったケド
そんな人が人間のセリカちゃんに恋なんて…
「いや…本人だぞ……
マスターが実際に会いに行って確認済みだ
恋をしたの噂は噂ではなく本当の事で、まさかその相手が人間だなんぞ誰も思わなかっただろう」
したんだね…
マジで!?人間に恋!?しかもセリカちゃんに!?世間狭ッ!!
うわ~~~~~~!!!!!!聞いてないよ!!
俺超失礼なコトばっかしたって言うか暴言吐きまくりだったし死ねとまで思ってたぞ!?
もう終わった……
「今すぐに謝りに行ってくる~~~!!
許してくれないかもしれないケド、その時はセリカちゃんを盾にして……」
「おいおい」
「ちょっと待っててリジェウェィさん、すぐ戻ってくるから!」
自分でもわかる今俺は真っ青な顔をしているんだと
ヤバイと言う焦りが急いで帰る翼のスピードの速さになる
人間らしく歩いてなんて帰ってられるか!!
窓から家に入るとセリカちゃんとマスターがいる
その2人におかえりの言葉を貰ったケド、俺はそのまま玄関から出て隣の部屋のチャイムを鳴らした
「セリくん、血相変えてどしたの?」
様子がおかしい俺に心配でついてきてくれたセリカちゃんがマジで今1番スゲーめちゃくちゃ死ぬほど心強い
ってか、イングヴェィ…様付けなきゃいけないよね…いまさらだケド
セリカちゃんは彼を人間だって信じてるんじゃないだろうか
俺の存在で人間以外の存在もいると知ってても、まさか自分の恋人も人間じゃないとか思わないだろ
「あれ?セリくんとセリカちゃん?どうしたの?」
出てきたイングヴェィ様は俺達を見て驚いてる
「あの…イングヴェィ…様……
今まで俺、失礼なコトばっか言ったりしちゃったりして……ゴメンなさい」
「ん?」
「許してくれないならセリカちゃんを人質にします」
「なんで私人質にされんの!?」
「えええ!?どうしたの?何があったの?
いつものセリくんじゃないよ」
そうだよ…いつもの俺じゃねぇよ
本当ならやっぱり嫉妬してるよ
でも、そんな感情向けちゃいけない相手だし…
この人が優しいってのは…今ならわかる
様子が変わった俺を心配して聞いてくれるんだもん
「もしかして…俺とセリカちゃんの仲を認めてく…」
「それはない」
それとコレとは話が別だろ!!お兄ちゃんは妹の結婚はまだ認めねぇよ!?
いくらマスターより偉い人だからってそこは譲らねぇから!!
「そうじゃなくて…イングヴェィ様が……マスターのリーダーだってさっき聞いて……」
セリカちゃんに聞こえないように小さな声で言う
だってセリカちゃんが知らなかったら隠してるコトなら俺から言うべきじゃないしな
「セリくん…何をいまさら……」
聞こえないように言ったハズなのにセリカちゃんにも聞こえてしまったのか呆れたような声で言われてしまった
「イングヴェィが人間じゃなくてそうだってコトはちょっと前に打ち明けてくれたじゃない、聞いてなかったの?」
「セリカちゃん知ってたの!?」
「セリくんが聞いてなかったんでしょ?
なんかいつも部屋の隅で友達(小鳥やウサギ)と遊んでばっかで」
イングヴェィ様と君が話してるのがイヤだったからなるべく聞こうとしなかった
気を紛らわすように友達と遊んでて…こんな大事な話を聞き逃すなんて…バカだ俺
死んだ……
「セリくんが俺に失礼なコトしたなんて思ってないから気にしないで」
その場に崩れ座る俺に手を差し出してイングヴェィ様はいつもの変わりない太陽のような笑顔を見せる
神々しいわ
「様も敬語もいらないよ
セリくんはセリカちゃんのお兄ちゃんだもん
いつものセリくんでイングヴェィって呼んでくれるほうが嬉しいな」
「イングヴェィ…俺のコト許してくれるの……
って言うか、本音を言っちゃうと前よりはヒドくないケドやっぱりこれからも嫉妬するよ……」
「嫉妬するってコトはそれだけセリカちゃんを愛してて大切にしてくれてるってコトだからね、ありがとう」
なんでオマエが礼なんて言うんだよ
いつも通りでいいって言われて歯止めがなくなった俺はすぐに元の俺に戻った
「まぁ…恋人の俺からしたら行き過ぎた兄妹愛なんて邪魔なだけだけどね…」
「……………。」
急にいつも笑顔のイングヴェィからは想像できないような冷たい表情に変わって物凄い恐怖を感じた
何この人恐い…
「君に認めてもらうのは大変そうだね、でも頑張るよ」
すぐにイングヴェィはパッと表情をいつもみたいに明るくして笑う
コイツ…セリカちゃんのコトになると危ない……本能で悟った瞬間だった
「2人が仲良くしてくれたら私は嬉しいよ」
右手でイングヴェィを左手で俺の手を掴んで君が幸せそうに笑う
その顔を見てるとまっ君が笑うならなんでもいいかって思えてくる
「そういやこの羽根…」
いつか部屋に落ちてた綺麗な羽根を取り出して2人に見せる
あの時の俺は自分の翼が汚く黒くなっていたからこの真っ白で綺麗な羽根みたいになりたいって思って持ち歩いてたんだよな
「もしかしてイングヴェィの?」
「あっ…気をつけてるつもりだったんだケド、ドコかで落としてたんだね
拾ってくれてありがとうセリくん
まだ人間世界には慣れなくて、人間らしく暮らすのってなかなか難しいよね」
やっぱりイングヴェィのか
人間じゃない存在が人間世界で暮らすっていう同じ立場として俺に苦笑する
その気持ちはよくわかる
俺達と人間の違いってコトはあまり考えたくない
人間は寿命で早く死んじゃうって知ってるから
イングヴェィは…わかってるのかな……
人間のセリカちゃんを恋人にして…恐くないのかな
自分の大切な人が先に…何百年も生きてるイングヴェィからしたらそんなのあっという間のコトだと思うのに…
「セリくん…?」
暗い考え事をしてたらそれが顔に出たのか君が俺の顔を覗き込む
うん…そうだな
こんな考えはよそう
まだ先の話だし考えたってどうにもならない
今は、もちろんこれからも君を幸せに笑顔にするコトだけを俺は考えるよ
「いや、なんでもない
リジェウェィさんを待たせてるからちょっと行ってくるよ
帰ってきたらみんなでパーティしようぜ」
「2人で過ごすんじゃないの?」
「イングヴェィと一緒がいいんだろ?
クリスマスはこれから何回だって来るし、来年は俺と2人で過ごすコトになるかもじゃん」
「セリくん!それって俺達が別れるかもとか思ってるの!?
もしセリカちゃんと別れる時なんか来たら俺もう生きていけないよ…
絶対別れないんだからね!」
遠回しに言った言葉の意味がわかったイングヴェィはセリカちゃんをギュッと抱きしめて離さなくなった
はいはいウザイウザイ離れろ
「…イングヴェィとずっと一緒にいる……」
「セリカちゃん…よかった……嬉しい
いっぱい愛してるからね!大好きだよ!超大好き!」
照れて恥ずかしがってる君とは対照的にイングヴェィは恥ずかしいとか言う感情はないのかと思うくらい全力で自分の気持ちを素直に表現してる
うぜぇ!!バカップルめが!!
「セリカちゃんはこんなアホのドコがいいんだか…」
マスターのリーダーがこんなんだって知ってちょっとガッカリだよ
セリカちゃんしか見えてない奴がリーダーでいいのか?
いや…イングヴェィは初恋なんだっけ
セリカちゃんに夢中になる前は素晴らしいリーダーだったのかな
だからたくさんのマスター達に慕われているんだ
みんなのリーダーが…初めて恋を愛を知る…か
俺には想像もできない強い想いがあるんだろうな
-続く-
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