2011年 第1話 すれ違い
俺が君のクリスマスプレゼントとして家族になってから2年は経ったのかな
その日から大好きなマスターの下に帰るコトは一生ないケド、それでも俺は君の家族に兄になれて幸せだと思ってる
人間の家族になったと言っても俺自身は人間になったワケじゃないから不老だし翼だってあるし魔法だって使っちゃうし人間の常識だってわかんなくて今もまだ苦労するケド
2人一緒なら毎日が楽しいよ
君も出会った時の刺々しさがなくなって穏やかになった気がするし
まぁ…ワガママな所は変わっちゃいないケド、昔みたいに殴ったり蹴ったりするコトはなくなったね!!
昔はこのクソ女!って思ったケド今は可愛い女の子じゃないかな
俺のおかげで!
そんな君とこれからも、君が死ぬまで2人一緒なんだって信じてる
「セリくんに手紙来てるよ?」
今日届いた手紙やチラシの束を1つずつ確認していたセリカちゃんは俺宛ての2通を渡してくれた
俺に手紙をくれるなんて2人しか思い当たらない
差出人を見るとやっぱり
「マスターとリジェウェィさんからだ!」
この2人からだった
喜んじゃうぞ!
直接2人に会うコトが許されなくてもこうした手紙のやり取りだけは許されている
正確には俺が天に帰るコトも行くコトもできなくなっただけだからクリスマス近くになったら人間世界に降りてこれるリジェウェィさんやマスターにはその時期に会おうと思えば会えるんだケドな
「嬉しそうだね」
2人からの手紙を受け取った俺の顔を見てセリカちゃんは笑った
うんっ、嬉しいよ
大好きなマスターと友達のリジェウェィさんからだもん
さっそく手紙の中身を見るとマスターからはいつもの俺を心配してくれる文章が
俺は元気にやってます!
マスターも元気そうで何よりです!
リジェウェィさんの方は自分の周りで何があったかを書いてある
帰れない俺にとって上の世界が今どうなってるかは凄く興味深くて楽しみだった
「えっ!そうなの!?」
リジェウェィさんの手紙を読んでいるとマジで!?って思うようなコトが書かれていて俺は思わず声に出して驚く
「何!?」
何事だ!?ってセリカちゃんが隣に来るから俺は手紙に書かれていたコトを話す
セリカちゃんが2人からの手紙を見ても読めないしね
「なんか、マスターよりさらに偉い人が1人いるんだケド
その人が恋をしたとかで上じゃめちゃくちゃ大騒ぎなんだってさ」
マスター達はその人のコトをリーダーって呼んでるらしいケド、俺やリジェウェィさん達はその人を見たコトがない
マスターと違って俺達みたいな存在を持ってないみたいだし色々と謎が多い人
とりあえずマスターより偉い人ってコトしか知らないな
マスターならその人がどんな人か知ってるかもだケド…
「へ~…どんな人か知らないケド、恋なんて誰だってするんだからそんなに大騒ぎするコトかしら」
「その人はマスター達の憧れだから、マスターの中でもその人が好きって人は少なくないみたいなんだよな」
ってリジェウェィさんの手紙に書いてあった
俺のマスターは違うみたいだケド、リジェウェィさんのマスターセレン様がその1人らしい
「そんなモテモテな人がまさかの今になって…初恋らしい…」
誰よりも1番長生きしている人なのに今になって初めて恋に落ちたってそりゃその人を好きじゃなくてもマジで!?ってみんななるわ
「そんなにモテてる人が初恋ってスゴイね
どんな相手に惚れたのか気になるわ」
「俺もマスターのリーダーを落とした相手がどんな人なのかめっちゃ気になる」
手紙にはどんな人に恋をしたのかは書かれていない
恋かぁ…俺もマスターが大好きだケド、その想いよりもっともっと強いような気がする……
まっいいや恋なんかよくわかんねぇし
俺はセリカちゃんと一緒にいれれば幸せだからそんなものいらないかな
いつも休みの日は家でまったりな俺達だが、たまには家族旅行にでも行こうかって話になって今日の休みは君と2人で遠くまで来た
「家族旅行って言ったら温泉だよね!」ってイメージがあるセリカちゃんの輝く目に押されて決まり
俺は温泉って聞いたら女の子同士で行くってイメージがあるんだケド…
リジェウェィさんに聞いたら温泉はカップルで行くイメージとか、人それぞれイメージが違って面白いかも
「7つの温泉巡り楽しいね」
「楽しいケド、ちょっと疲れないか?」
1泊2日で7つも巡るってかなりハードだ
温泉で身体は温まるって言っても外は雪降ってて寒いし次の温泉行くまでの移動が大変だろコレ
「テンション高いから疲れなんて知らない~」
でも、セリカちゃんがこうして楽しそうに笑ってくれるなら俺も疲れなんて忘れちまうし嬉しいかな
本当に、最初に出会った時と君は随分変わった…
もしかしたら今こうして可愛く笑えてるほうが本当の君なのかもしれない
もう自分が自分を守らなくてもいいんだって思ってるのかな
俺がいるから
無理して強くいた君は今は凄く弱くなったような気がする
そうならちゃんと俺が守ってあげないとな
お兄ちゃんだし!(お兄ちゃんって良い響き…!)
「寒い?」
君が自分の両手を合わせて温めてるのを見て聞いた
セリカちゃんは冷え性だから見てて辛そう
俺も同じだから辛さが凄くわかる
「寒いね!」
「それじゃあったかくなる魔法を…」
「魔法は使っちゃダメだよ!」
「誰かに見られたら…だろ?
別に誰に見られたっていいよ」
俺はそう笑って君の手を掴んだ
手を繋ぐコトなんていつものコトだから最初はわかってくれないような様子を見せたケド
「…ふふ、確かに温かいかも
自分の両手じゃ温まらないのに誰かと手を繋ぐと温かいのは、確かに魔法みたいだね」
それが俺の人間らしくできる1つの魔法なんだってセリカちゃんは気付いてくれた
「人間でも魔法が使えるんだな~って気付いた時は感動しちゃったよ」
冷静になれば寒いコトには何も変わりないケドな
でも何事も気持ちからなのか、気持ちが温かくなったら身体もそう感じるのかも
「こうしてたらカップルに見える?」
周りの温泉に来たと思われる客が意外にカップル多いコトに気付いて俺達もその中の1組に見られるのかなって思ってしまった
「まさか?同じ顔なのに誰も私達をカップルになんて見ないよ」
笑う君に、だよね!
これでカップルだったらどんだけ自分の顔が大好きなナルシストカップルだよって感じだし
それにココまでソックリ瓜二つだったらどう見ても他人には見えない兄妹か
「カップルか…爆発しろって感じよね」
「!?」
せっかくセリカちゃんを良い子に育ててきたのに周りの自分達の世界しか見えてないバカップルのイチャつきのせいでまた悪い心が…!
「カップルなんて死ね!!」
「!?セリくんがそんなコト言うなんて…」
なんでビックリされてるのかわからないケド、君が悪い子になる原因なんて全て爆発すればいいんだよ~!
一度気にしてしまった周りの状況はもうずっと目に付きそうだ
そんな時、知らない人達に後ろから声をかけられた
「「こーんばーんは~ぁ!」」
誰だ!?
振り向くと見事にハモッた男2人組がスゲー笑顔で挨拶してくる
カップルばっかだって思ってたケドそうでもないんだ
「2人~?オレらと遊ばな~い?」
「オレら超暇で~
この時期に君達みたいな可愛い女の子が2人なんてつまんないでしょー」
ガーン!仲良し兄妹じゃなくて仲良し姉妹に見られてたのか!?
「セリカちゃん、この人達が俺達と友達になりたいって言ってるケド…」
隣にいるセリカちゃんのほうに顔を向けると…あれ…めっちゃ機嫌悪そうな顔を……なんでだ!
「バカ!」
「バ、バカ!?」
君にバカなんて昔に言われったきりだったのに…ショックで涙が出てくるぅ
「こんな奴らについて言ったらどうなるかわかってんの!?
あんなコトやこんなコトしてくるに違いないわ!気持ち悪い!」
あんなコトやこんなコトってなんだ??
…何もわからない俺を置いてかないで……
「ってコトで死ね」
俺を庇うように背にしてセリカちゃんは男達に即死レベルの毒を吐く
「きっつー」
「あーシラけた、くそ女
行こうぜ」
君の言葉に胡散臭い笑顔だった男達は舌打ちと暴言を返してからドコかへ行ってしまった
何が起きたのか俺はよくわかってなくてボーッとしてる感じになってたケド
「…ハッ!?セリカちゃんをクソ女だと!?許せねぇ!!あのクソ野郎ども」
言われた言葉の意味を理解すると我に返る
「いいよ、ほっときな」
「でも…」
「アンタは私が守ってあげるから」
「えっ…」
俺が君を守らなきゃいけないって守るからって決めたのに
なんでそんなコト言うの…
君に守られたって…そんなの嬉しくない…
「俺はセリカちゃんに守られたいワケじゃない…」
「じゃあ何よ
私が黙ってたらアンタはさっきの奴らについて行くんでしょ
どうせ旅行先で友達ができるなんて思わなかった嬉しい~っとか思ったんでしょ
バカだから」
「それは…」そう思った…
声をかけられた時、俺達と友達になりたいからなんだって思ったよ
「……セリカちゃんが死ねなんて言うから…アイツらだってイヤな気分になって言い返しただけなのかも…?」
セリカちゃんのコト悪く言う奴は嫌い
でもセリカちゃんが先に攻撃するからみんな離れていくんじゃないかって考える時もある
俺だって最初に会った時はなんだこの女!?って思ったもん…
「セリくんがいた世界とは違うんだ
人間世界はそんな甘くて生きられる所じゃないんだよ
…わからないセリくんなんて…嫌い……」
「っ…」
君に嫌いって言われて時間が止まるような感覚に自分が崩壊しそうになる
君が俺の前から立ち去るのを止める言葉も出ない
死ぬほどショックだ…
わからないよ…無知な俺は考えたってわからない知らない
どうしたら君を守れるんだ
どうしたら君を理解できるんだ…
その場で立ち尽くして君の後ろ姿を見ていたら視界から消える
そこで俺の時間はやっと動き出して悲しくて涙が溢れる
止まらないよ
君のクリスマスプレゼントである俺が君を笑顔にできないなんて…失格だ……
「セリカちゃん…」
色々悩んで考えるコトで頭がいっぱいな俺は近くの雪の積もったベンチに腰かけていた
まだ答えが出ていない
今の俺じゃ君を追いかけられない
涙は止まったケド思い出すと視界が霞むぞ…
ま、負けない!男なんだから泣くな俺!情けない!と気合いを入れようとしても元気が出ないのだ…
「あれれれれ~?1人~?さっきの女と喧嘩でもしたぁ?」
目の前に誰かが立つのが見えて顔をあげるとさっき声をかけてきた男の1人が俺の顔を覗き込んでくる
えっ何…って言うか、もう1人は…?
「こんなに雪積もらせちゃってぇ
身体冷えてるんじゃなーい?」
目の前の男が俺の頭や肩に積もった雪を掃ってくれるのは…それは親切なんだって思わなきゃいけないのに
なんとなく本能が拒否してるのかゾワッとしてしまった
「だ、大丈夫…このくらいの寒さじゃ死なないから」
軽く男の手を掃って俺はベンチから立つ
ココで考えてたって時間だけが過ぎていく
やっぱり今すぐセリカちゃんを追いかけないと
「オレが~温めてあげるっ」
「ちょっと待て!」
ベンチから立ち上がると両肩を抑えられてまた座らされた俺に馴れ馴れしく抱き着いてこようとするから引き離した
「いきなり何するんだ!?邪魔だからどけよ!」
俺を温めるのはセリカちゃんじゃないと無理!
セリカちゃんのクリスマスプレゼントなんだから他の奴に触られるのも拾われるのもありえないしイヤだね!
他の奴には何1つ権利なんてないんだ
「遠慮するなって」
「はぁ…?」
急に両手首を捕まれて顔を近付けられる
男の変顔のタコ口がきめぇ…
からおもいっきりスネを蹴ってやった
そしたら痛みのあまり男は俺を離してスネを抑え苦しむ
スッキリしたケド、少ししてから人間に危害を加えるなんてマスターに怒られる!って顔が真っ青になるような思いをする
まぁ…いいか、見てないし
そんなコトより早くセリカちゃんを追いかけないと
自由を奪うなんて邪魔をするなんて、この男は悪い奴だ
人がイヤがるコトをするのはダメなんだぞ…
でも、やっぱり蹴ったりするのはいけないよなって思ってうずくまった男に申し訳ない目を向けてからセリカちゃんを追いかけた
-続く-
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