第8話 天からの贈り物

ハッ…!?気付いたら…12月27日……?

ちょっと待て!!クリスマス過ぎちゃってるぞ!?

うわ~やっぱり俺は無能落ちこぼれカスゴミクズと言われ見下される1年決定か!?

帰りたくねぇ!!

でも、マスターにはお会いしたい!!

でもでも…セリカちゃんとは別れたくない……

マスター…俺はどうしたらいいんでしょうか……

って思いながら夜眠っていると、夢にマスターが出てきた


「マ、マスター…ゴメンなさい……

クリスマスまでに帰るコトができない俺なんて…」

夢なのにやけにリアルな感じがするのは本物のマスターが俺の夢に入って来てるのかもしれない

クリスマスまでに帰れない俺はダメダメだ

マスターは優しいから責めないだろうケド…俺なんて無能です……

「いいえ、貴方は本当ならとっくに帰る事が出来るのですよ」

俺がまだクリスマスプレゼントしないで遅いから様子を見に来てくださったと思っていたのに

マスターは意外なコトを言った

本当なら?帰るコトができる…?クリスマスプレゼントしてないのにか?

今年からクリスマスプレゼントしないでも帰れるシステムにでもなったのかな?

いやまさか

「ふふ、気づいてはいないのですね

彼女の1番ほしいものを貴方はもうすでにプレゼントしているのです」

「そんな…俺は何も……」

でもマスターがウソなんて言うワケないし…

セリカちゃんの1番ほしいものをすでにプレゼントしてる?

それってなんだ?

そもそも彼女にはほしいものなんて…

「後は貴方次第

彼女のプレゼントを奪うかどうかも……」

本当はあったのかほしいものが

「奪う?なんて…しません

俺はセリカちゃんに1番ほしいものをクリスマスプレゼントしてマスターの元に……」

帰りたい…ケド、まだ帰りたくない

プレゼントしてるかしてないかより、俺は帰るか帰らないかがずっと最近頭にある

帰らないならプレゼントしないつもりなのに…もうすでにプレゼントしてるってどう言うコトなんだ??

「貴方が傍にいてくれると嬉しいです

しかし、私は貴方の担当を彼女に決める時に…」

マスターが何かを言おうとしたその時、現実で寝てる俺が目を覚まして引き戻された

「痛ッ!?」

急に感じた痛みはどうやらセリカちゃんが夜中に起きてトイレに行く時に寝ぼけて俺を踏んずけたからだ

く~…せっかく大好きなマスターの夢を見ていたのに!

まだ寝ぼけてるのか彼女はトイレから帰ってくると自分のベットじゃなく、コタツを寝所にしてる俺の隣で寝た

風邪引きますケド!?

せっかくクリスマスの時に俺の抜け落ちた羽根で羽毛布団を作ってやったのに

超あったけーから

どんな羽毛布団よりも俺の羽毛布団が1番あったかくそして羽根のように軽い

「まったく…どっちが甘えっ子だよ……」

俺が寂しがり屋ならセリカちゃんは甘えっ子だな(眠い時だけ)

俺の翼の中に入れてあげれば風邪引くコトもないから大丈夫か

帰りたくない理由…セリカちゃんと1週間ちょっと一緒にいて、長いようで短いその間に情が移ってしまった

決して恋愛感情じゃないんだが、兄弟のような友達のような愛がある

最初はムカつく女で嫌いだって思ってたケド、本当の彼女を知れば大好きになっちゃう

きっとまだ彼女は本当の自分を俺に見せてない

チラホラ程度…

「……まだ起きてたの…?」

寝ぼけてた彼女は少し目が覚めたのかそう聞いてくる

「いや、オマエが寝ぼけて踏んで起こしたんだろ」

「あらそうだった?」

ふふふって笑う君はきっと確信犯

………聞いてみるか?

さっき夢で見たマスターの言った言葉

セリカちゃんの…

「……1番ほしいものってなんなんだ?」

「急に聞くのね」

「そうでもないさ

ずっと前から言ってただろ」

彼女は暫く黙り込むと起き上がって自分のベットに戻る

「教えたくない」

「…なんでだ?」

「言ったら、帰っちゃうでしょ」

何も言えなかった

1番ほしいものを聞いたら俺はプレゼントして帰るんだってコト彼女は知ってる

帰ってほしくないから言わない

でも最初にほしいものがないって言ってた君が本当はほしいものがあると自ら認めた瞬間でもあった

「でも、私のほしいものはプレゼントできるもんじゃないケドね」

「……そう………」

セリカちゃんは俺に背を向けて寝る

俺も…帰りたくないさ

でも、クリスマスプレゼントしなきゃ…マスターの下にいるのが俺って言う存在

そして来年は…これから毎年、色んな別の人間にクリスマスプレゼントをする

そんな存在なんだよ俺は

ずっと君と一緒にいられない…いたくても…無理だ


次の日、俺とセリカちゃんはなんとなく言葉を交わさなかった

仕事が年末年始の休みに入ったみたいで家にいるのに会話はない

俺はボーッと窓の外にいる鳥に餌をやったり、君はパソコンしたり音楽聴いたりしてる

そんな時、ふと君が俺の傍に寄ってきて座った

「ねぇ…帰りたい?

私の1番ほしいもの…教えてあげようか?」

「へっ…?」

昨日(今日?)の夜中に言ってたコトとは違う君の言葉に俺は面食らう

突然なんだ!?

俺がイヤになったのか…?

「私のワガママで貴方を引き止めるなんてダメよね

自由である鳥を狭いカゴに閉じ込めてるのと一緒だわ」

どうやら彼女は昨日は感情的で言ってたケド、今は冷静に俺のコトを考えて言ってくれてる

ずっとそれを考え悩んでいたのかもしれない…

あのクリスマスの夜から……

「別に俺は閉じ込められてるつもりはないんだが…」

確かに1番ほしいものを言ってくれないでプレゼントさせないのは引き止められてると言っても間違いじゃない

でも、俺はそんなコト思ってないし君の傍にいるのはイヤじゃねぇ

むしろ…いたい

1番ほしいもの聞きたくない…聞いたら……帰らなきゃいけなくなるだろ!!

「私の1番ほしいものはね…」

「ちょっと!散歩に行ってくるから!!

その話はまた今度な!!」

窓から飛び立って逃げてしまった

何やってんだ俺…俺はクリスマスプレゼントをしに人間世界に来たのに…

マスターのタメに頑張りたいのに……

自分のコトしか考えてない

別れなんて…残酷だ

こんなにも別れたくないって思うなら情が移らない前にクリスマスプレゼントを渡すべきなんだな

きっと1日で帰るコトができていたなら俺はこんな寂しい気持ちにならなかったのに

でも…


「やっぱり、ココに来たね…」

すぐに帰っちゃったらきっとセリカちゃんのコトをイヤな女だ嫌いだって思ったままの思い出と化しただろう

「セリカちゃん…」

散歩って言うかフラフラ空中飛行してたら疲れて休もうと無意識のうちにクリスマスの日の公園に来てて、ブランコに座ると公園の暗闇から君が姿を見せる

「やっぱりって…ずっと俺が来るの待ってたのか!?

暗くなったら痴漢が出るから危ないとかなんとか言ってたのに、女の子1人で公園に来るなんて危ないだろ!!」

って心配して言ったのに彼女は俺の腹に蹴りを打ち噛まし、その強烈な蹴りに耐え切れず俺はブランコから落ちてしまった

「お腹とお尻が痛いよ…」

どっちかって言ったら尻餅ついたお尻じゃなくて蹴り喰らったお腹だケドな…

なんて凶暴な女なんだ

やっぱムカつく

まぁとにかく痴漢に会ってないみたいで無事ならよかった

……いや、この女なら痴漢が出てもボコって追い払いそうだな

「貴方って、暗闇で光るのよ

自覚あった?」

えっそうなの?

「こんな真っ暗で何も見えない公園でも貴方が来ると明るいわ

スッゴく目立ってよく見えるの」

「……………そう………」

何が言いたいんだ?

「やっぱり人間じゃないって思い知らされちゃうな

人間じゃないから…帰るべき所に帰っちゃう

貴方だって、もう帰りたいでしょ?

大好きなマスターに会いたいよね?」

「マスターには会いたいケド…」

でも、まだ帰りたくないって思ってるのは本当

俺の帰るべき場所は……最初から決まってるんじゃなくて俺が決めるコトなんじゃないのか

「でしょ、だから…私が引き止めてたら貴方はいつまでも帰れない

聞いて…私の1番ほしいもの」

「聞きたくない!!だって聞いたら俺はクリスマスプレゼントしなきゃならないだろ!!!

俺はセリカちゃんとまだ一緒にいたいんだ!!!!!」

クリスマスの時期に人間世界に来れる俺達だからクリスマス限定の存在だと思われがちだケド、クリスマスプレゼントをしなければ帰れない

それはプレゼントしなければずっと人間世界にいれるってコトなんだ

セリカちゃんの言ってた暑い夏の日だって体験できるかもしれない

ずっと一緒にいたら…あったかい春の桜なんて見れるかも……見たいよ

「私だって、セリくんと一緒にいたいよ」

耳を塞ぐ俺の手を掴んで俺に聞こえるように離した

「でも、言わなきゃ私は貴方を引き止める凄い悪い奴よ

それにね私はもう1番ほしいもの貰ってるの

だからセリくんはいつでも帰れるんだ…

私が言わないからセリくんはいつまで立っても帰れないだけ」

知らなければ、プレゼントしたコトを自覚しなければ帰らなくてもいいのに…

もうすでにプレゼントしていると聞いたら…帰らなくちゃいけなくなるだろ

君だって俺と一緒にいたいって言ってくれるのになんでそんなコト言うんだよ

もうすぐお別れしなきゃいけないと思うと俺は涙が止まらなくなる

それを見た彼女が俺の額にキスをしてくれた

「セリカちゃん…」

それは元気が出る魔法のハズなのに…元気なんか出るワケない

嬉しいケド…

「私の1番ほしいものはね」

ついに彼女の口から聞いてしまう

耳を塞ぐコトのできない俺はお別れの言葉を…聞いちゃうのか

「友達と家族」

ウソばっか言って本当は凄く寂しい君だった

いつも誰かと関わるのが恐かった君はどんなに寂しくても友達を作らない

その性格じゃ友達できないってのもあるんだろうケド

友達を見殺しにした過去が君を縛って孤独にさせる

「セリくんが私の目の前に現れた時は神様が私にプレゼントをくれたのかなと思ったよ

ソックリ瓜二つだから兄弟にも思えたし、でも他人だから友達って感じ

1番ほしかった友達と家族

友達みたいな家族みたいなそんな存在が私の目の前にあった」

「俺が…セリカちゃんの1番ほしかった友達と家族……?」

それって俺自身が彼女のクリスマスプレゼントになってたってコトなのか?

「本当はセリくんが私のタメにしてくれたコト全部嬉しかった

あの部屋の飾り付けとか嬉しかったのに、心にもないコト言って消えた時は寂しかったな

きっと貴方はいつか消えちゃう存在なんだって思って…

ずっと一緒にいてくれないなら仲良くしないほうがいい

別れる時が辛いからって…キツく当たっちゃった」

「そうだったのか…」

君らしいな…別れる時が辛いから仲良くならないなんて

「ゴメンね、セリくん…

この1週間ちょっと、本当に楽しくて嬉しかったよ幸せだった

ありがとう…私、貴方のコト絶対に忘れないわ

貴方も…私のコト忘れないでね」

彼女は少し俺から離れると笑ってみせる

ケド、それが無理に笑ってるんだってわかった

だって君は…泣くんだから

「泣いてるのセリカちゃん…」

俺が手を伸ばすと彼女は身を引く

「な、泣いてないもん!!

ちゃんと笑ってお別れしようって決めたのに……うぅ…

サヨナラ!セリくん!!

私のコトなんて気にしないでマスターの所に帰ってね!!」

やっぱりウソつき…そんなに涙を流すくらい悲しくて辛いのに……

君は俺に泣き顔を見られたくないのか最後にお別れの言葉を言って走って帰ってしまった

「……セリカちゃん………お別れなんて…俺だってしたくない……」

本当はお別れなんてしたくないって君だって思ってるんだろ

だって君はウソつきだから…本当の気持ちなんて言わない

いっそ、帰らないでってワガママ言って駄々こねてくれたほうが可愛いのに

俺は追い掛けたかったケド、追い掛けはしなかった

きっと君は「早く帰れ!」って俺のコトを想って蹴りをかますだろうから

クリスマスプレゼントをしてしまった俺は帰らなきゃいけない決まりだし

ココにいてもたぶん天に連れ戻される

それなら…今……帰るしかない

もう一度会ったら、俺は翼を切り落としてまでココに残ろうとするだろうから



「……マスター…今帰りました………

クリスマスを過ぎて申し訳ありません……」

天に帰っていち早くマスターの前で報告する

他の奴らがクリスマス過ぎて帰ってきた俺を笑ってるケド、どうでもいいなそんなコト

「お帰りなさいセリ」

マスターは俺を人形のように軽くいつもみたいに抱き上げてくれる

マスターに抱かれて嬉しいし幸せだ

でも、俺の心は人間世界に置いたままのように心ココにあらず

「貴方が帰ってきてくれて私はとても嬉しいですよ

いつもこうして傍にいてほしいと思います」

「光栄です

マスターにそう言ってもらえて俺は幸せです」

マスターとは離れ離れになりたくないよ

でも…セリカちゃんとお別れしたくなかった

できるコトなら……

「ですが、セリ」

「はいマスター?」

元気のない俺にマスターの魔法がかかる

マスターは優しく俺に微笑み頭を撫でてくれて

「彼女のクリスマスプレゼントである貴方がどうしてここにいるのでしょうか」

「えっ…?」

「せっかくプレゼントしたものを奪って帰ってくるなんて悪い子ね…」

「マ、マスター…?」

いつものように俺が元気ない時にしてくれる額へのキス

その意味はマスターの優しさ

俺達みたいな存在と人間の幸せを1番に考えるマスターの言葉は俺に涙させる

「行きなさい、私は言いました

決められた人間にクリスマスプレゼントをしてきなさいと

そのプレゼントを奪う事は私でも出来ません

彼女の傍にいたいのでしょう?

貴方は彼女のクリスマスプレゼントなのですよ」

おかしいな…いつもマスターのキスは俺の涙を止める魔法なのに

今日だけはこんなにも泣かすなんて

「いいんですかマスター…?

それってもう俺はマスターのものじゃなくなるってコトなのでは…」

セリカちゃんの傍にはいたいケド、マスターのものじゃなくなるのはイヤだ

俺はマスターのものでありながらセリカちゃんの家族になりたい

なんてワガママだよね…

「まさか、貴方は私の可愛い子供ですよ」

俺の心を見透かすようにマスターは俺のほしい言葉を言ってくれる

ドコまでもお優しい方だ

「人のクリスマスプレゼントになってしまった貴方はもうここへは帰って来れないでしょう…

しかし、どんなに離れていても私は貴方の心の中に

いつも天から見守っていますよ」

離れ離れになっちゃうんだ…マスターと

でも、俺はいつも見守っていてくれるマスターの言葉に寂しいと感じなかった

それ以上にセリカちゃんの所に帰れるコトが、一緒にいられるコトが死ぬほど嬉しかった

「マスター…嬉しいです!ありがとうございます!!」

一瞬、俺は人間にさせられるのかと思ったケド

俺はセリカちゃんの傍にいながらマスターのものとして変わらない存在でいられる

離れ離れでも、俺はマスターの大切な存在で

あるコト、幸せだ

なんて…素敵なコトなんだろう

本当に本当に…マスターには感謝してもしきれない

「貴方が傍にいないのは寂しいですが…仕方ありません

彼女には貴方が必要なのです

お手紙書きますね、お元気で…

明日辺りにまた人間世界を覗きに行くかもしれません」

もう明日!?今日の明日で来るとか早いな!?

マスターそんな俺がいないと寂しいんですか!?

「はいマスター、また会える日を楽しみにしております」

今わかったよ

マスターがどうして俺の担当を彼女にしたのか

俺にしかできないコトだからだ

友達になれるのもきっと俺じゃなきゃ気難しい彼女とは相性が合わない

そして何より大きいのは俺が彼女とソックリ瓜二つであるコト

家族と呼んでもおかしくないくらい自然に…まるで双子のような

友達と家族がほしいと願い想い続ける彼女には俺以外に適任はいなかった

俺が彼女にとっての最高のクリスマスプレゼントであり、そして俺にとってもマスターからの最高のクリスマスプレゼントだった

セリカちゃんと出会えたコトが幸せだ

「さぁ、早く行っておやりなさい

寂しいと泣いている彼女の涙を止めてあげられるのは貴方だけです」

俺を降ろすとマスターはもう一度俺の頭を優しく撫で微笑んだ

「はい!行ってきます!!」

やっぱり笑顔が1番だね!

今の俺はさっきと違ってニコニコだぞ!!

すぐに人間世界に行こうと思ったら声をかけられる

「俺に挨拶なしで行くつもりなのか?」

「リジェウェィさん…!?」

振り向くとそこには苦笑するリジェウェィさんの姿があった

「あっ…ゴメン……

ついいっぱいいっぱいになっちゃって……」

「構わん、話は聞いていたぞ

人間世界で暮らすそうだな

俺はクリスマスの時期にしか人間世界には行けないから、また来年に会おう」

リジェウェィさんってみんなから尊敬はされてるケド友達って俺しかいないんだよな

って言うか俺しか友達を作らない

どことなく彼女に似てる

「うん!また来年のクリスマスに!!

だってリジェウェィさんは俺の友達だもんな」

「もちろん」

少し笑ってリジェウェィさんは両腕を広げるから次会う日までの意味を込めてお別れのハグをする

「俺も人間世界で暮らしたいな…」

聞こえるか聞こえないかの声が耳元で囁くから思わずもう一度聞き返すと

「えっ?」

「いや…俺はもうすぐマスターになれるか」

リジェウェィさんは俺を離してそう言った

「次が100回目だったねリジェウェィさん!

頑張って、リジェウェィさんなら絶対立派なマスターになれるよ!!

俺、応援してるから!!」

「あぁ…頑張る……それじゃまたなセリ」

リジェウェィさん…なんかちょっと元気なさそうだな

来年になればマスターになれるかどうかが決まる

リジェウェィさんなら絶対に優秀賞を取ってマスターになれるハズなのに…

なんか悩みでもあんのかな

俺と離れ離れになるから寂しいってのはあると思うが(俺もリジェウェィさんと離れ離れ寂しいし)

元気がなくて悩んでるのはそのコトじゃないだろう

「リジェウェィさん…」

なんか悩みがあるなら聞くよって言おうとしたケド

「ほら早く行ってこい

あの娘が待っているのだろう」

リジェウェィさんに杖でつっつかれて俺は聞けずに行くコトになった

まぁ今度聞けばいいか

手紙書くのもアリだし

「じゃあまたねリジェウェィさん」

俺が笑って手を振ってバイバイするとリジェウェィさんも同じように返してくれた


人間世界に戻り、セリカちゃんの家についたのは真夜中の4時前だった

当然セリカちゃんはベットで寝ている

「さっきまで起きてたのかな…」

彼女の頬にはまだ渇かない涙がついていて、ずっと泣いていたんだろうと思わずにはいられない

「帰ってきたよ俺…セリカちゃんの所に」

気持ち的には今すぐにでも抱きしめたいケド

起こしたら絶対殴られるって記憶深くまで刻まれてて身体が萎縮する

彼女が優しく素直になっても今だにあの頃の恐怖はそう簡単に消えねぇよ

とりあえず俺は頬に残った涙だけでも拭ってやりたかった

でも、その行為が結果的に起こしてしまうコトになって

「………あっ…セリくん……?」

彼女は目を覚ました

「セリカちゃん!?ゴメン起こしちゃった……」

「夢かな…私が会いたいって強く思ってるから夢見てるのかも」

相変わらず感情の前にクールに考えるのが君らしい

夢でも…深く考えずに感情的になればいいのにバカだな

「夢じゃないよ

俺、セリカちゃんのクリスマスプレゼントじゃん

だから帰ってきたんだ

マスターがセリカちゃんの家族になりなさいって」

起き上がるセリカちゃんの手を握る

いつも冷たい君の手は眠い時だけとっても温かい

「それ…本当?」

俺の言葉を聞いてスッキリ目が覚めたみたい

「じゃあ…コレからずっと一緒にいてくれるの?」

「うん、だって俺はセリカちゃんの友達で家族だからさ

家族はずっと一緒だろ?

もうセリカちゃんに寂しい思いなんてさせない

ウザくても邪魔でも傍にいるぜ」

「………ウザイとか邪魔とか思うワケないでしょ……」

あぁ、また泣いちゃった

セリカちゃんを泣かせちゃったね

でも今度はさっきと違って君は俺に抱き着いてくる

勢いつけて全体重かけてくるから後ろに倒れそうになったケド、なんとか受け止めて抱きしめ返してあげるんだ

「今日から俺はセリカちゃんの友達で家族だよ」

「嬉しい…嬉しいよセリくん

ありがとう…最高のクリスマスプレゼントをくれて

私は幸せよ」

「うん…俺もセリカちゃんの家族になれて幸せだよ」

あれだけ見たかった君の笑顔もコレからは毎日見られるような気がする

今の君の笑った顔が見れて俺は本当に嬉しい

ずっと君を幸せにしたかった

本当は可愛い子だって知りたかった

「友達でありながら家族か…

家族なら俺達は双子と言った所かな?」

「こんなバカな弟を持って私は恥ずかしいわ…」

「まだそんなコト言うのかこの口は」

セリカちゃんの頬を引っ張ってやろうとする前に手を噛み付かれた

………そう簡単に人間って変わらないよな……

前みたいに痛くは噛まないからやっぱり変わったか

カプッて感じのあまがみ

「って言うか俺が弟!?イヤだ!お兄ちゃんがいい!!」

「何そのこだわり、別に私はどっちでもいいわよ」

「じゃあ俺がお兄ちゃんでセリカちゃんが妹な」

「頼りないお兄ちゃん」

「凶暴な妹」

グーパンチを貰った

俺も毎回殴られないように気をつけようとは思いながらもついつい口が勝手に…

「じゃあお兄ちゃん…今日は一緒に寝よ」

「急にどうした!?

いつも俺は身体が痛くなる床に寝かせられコタツの中なのに!!!??」

やっぱベットで寝ないと身体中あちこち痛いしちゃんと寝れなくて寝不足だ

「兄妹ゴッコしないで他人としてまた床で寝てもいいのよ」

「イヤですベットで寝たいです

ゴッコじゃなくて本当の兄妹になりたいです」

土下座したのは何回目だ

「でしょ?

私、兄妹で仲良く寝るってシチュエーションに憧れてたの」

いや…それって小さい子供の兄妹で大人になってから仲良く一緒に寝る兄妹ってあんまりいないんじゃ……

俺にはいっぱい兄姉いるケド(同じマスターに作られた人を兄姉と呼んでる)一緒に寝たコトなんてねぇなぁ

まぁその前に俺はハブられてんだが

「そうだな、じゃあ一緒に寝るか」

最初はどつかれたのに凄い進展だ

いやいや本当に可愛い

一緒に寝たいとか可愛い妹ができて俺は幸せだな

「オヤスミ、セリカちゃん」

「オヤスミ、セリくん

起きたらいないとか言うのはナシだからね」

まだ不安なのかセリカちゃんは俺の服を掴んで離さない

「いなくなるなんて絶対にないから安心して寝ろよ

もうずっと一緒だって言っただろ」

「そうだよね、ずっと一緒だもんね」

ベットに入ると俺も君もすぐ眠くなって寝てしまった

これからは家族として友達として君と一緒に生きるんだ

これが俺の始めての幸せなクリスマスの思い出



-シリーズ第1弾・2009年終わり-

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