第7話 お別れの時がいつか来る

ついに今日はクリスマスか

セリカちゃんが仕事に行ってる間に俺は2人でクリスマスプチパーティする買い出しに行くのだ

買い出しと言ってもほぼ食材だケド、今日はセリカちゃんにとっておきの魔法を見せたいから食材は魔法で出さずにダイエーで買うぞ(魔法力温存じゃ)

ってコトで地図のナビに案内されて今から行く所…なんだが

「う~…どうしよ……

セリカちゃんの仕事って何処にあって何してるか急に知りたくなってしまったな」

まだ知らないコトばかりだからなのか何事も好奇心旺盛な俺だ

地上の人間が肉眼では見えないくらい空高く飛びながら買い出しに向かう途中でふとそんなコトを思った

「でも、いきなり行ったら怒るだろうし…」

いや…他の人に見えないようにすればいてもいいって言ってくれるかも?

一昨日(23日)のコトがあって、それからセリカちゃんちょっと俺に優しくなったもん

「うん!そうだ!行ってみるか!!」

セリカちゃんのいる所までって魔法のナビに連れて行ってもらう

それにしても、こっちの世界は寒いな~

なんでも今は冬だからクソ寒くて、半年後はクソ暑くなる夏が来るってセリカちゃん言ってたかな


1時間くらいかけてセリカちゃんの会社とやらにつく

まだ翼が子供だから速く飛べないんだ

大人(1歳)になればもっと速く飛べるし、俺が持てるレベルの重いもの(40kgちょっとくらい?)を持っても飛べるようになるのに

「あっ、セリカちゃん!」

会社の中の部屋を1つずつ見て回るとセリカちゃんを2階で発見

部屋の中で椅子に座ってパソコン前で集中している彼女に声をかけるとハッ!?として顔を上げた

「来ちゃった」

「……………。」

語尾に音符でもついちゃいそうな俺の言葉に反射的に返してくるかと思ったが

さすがクールなセリカちゃんはビックリしても、誰にも見えない俺に話しかける=独り言に見えるようなコトはしない

仕事を中断してトイレに行くセリカちゃんに言われなくても俺はついて行った

「なんでいんの…?」

女子トイレに入るのはちょっと躊躇ったケド、そこじゃないと喋れないから仕方ない

トイレに来てもセリカちゃんは小声だ

「どんな仕事なのか気になったから…ダメだった?」

「ダメに決まってるでしょ!

アンタがココに来ても私は相手できないし、邪魔なだけよ」

23日の時に優しくなったと思ったケド、もう今はまた俺をアンタ呼ばわりでいつものセリカちゃんに戻ってる

あれは幻想か夢だったんだろうか…

「じゃ、邪魔……」

ガーン…そうだよな…確かによく考えたらセリカちゃんは仕事中は忙しくて俺なんか相手にできないし、人前だと喋るコトもできない

「そんなに私の傍にいたいの?寂しがり屋

本当にアンタってガキなのね」

「あぁ俺はまだ0歳のガキだね!!」

ガキって言われるとムカつくぜ

本当の年齢はまだ0歳だが、人間で表した年齢なら20歳くらいで作られてる

つまり俺は人間にしたら大人なんだよ!

「なんだよ!大人だって寂しいって思うだろ!」

「大人は寂しくてもちょっとくらいなら我慢できるでしょ

私が帰るくらいまで我慢できないなんてガキよ」

「ぐっ…」

やっぱり俺はガキなのか…20歳くらいに作られてるとは言え

やはり知識も智恵も感情もドコとなく浅く幼い所がある

俺がちょっとなんだよって拗ねると

「まぁ…傍にいるくらいならいいよ

みんないるから喋れないし相手できなくてもいいなら、いてもいいわ」

やっぱりセリカちゃんは優しくなった

俺のタメにも言ってくれてるんだろうケド、たぶんきっと彼女も寂しいんだと思う

「セリカちゃん…アリガトー!!」

嬉しくなって俺が思わず抱き着くと

「ウザイ」

って肘鉄喰らうケド、セリカちゃんは本気で引き離したりはしない

ハグはたまになら良いねって言ってたから

あっ、夕食の買い出しどうしよ…

まいっか…帰りにセリカちゃんと寄れば

魔法で出せって言われるかもしれないケド今日は魔法力温存だよ

それにたまには君と買い物行くのも楽しいな


仕事を手伝おうとして手を出すと何しても邪魔にしかならない俺はセリカちゃんから顔面パンチをプレゼントされたコトがありながらも夜になる

仕事の帰りに買い物して、帰ってから一緒にクリスマスらしい夕食とケーキを作る

出来上がりは下手クソだケド、ケーキとかお菓子嫌いなセリカちゃんも手作りのケーキは美味しくて好きみたいだ

「ねっセリカちゃん、ちょっとお出かけしよ」

「もう寝る時間でしょ」

うん…夜の11時だケド、今日だけは…後1時間しかないクリスマスにとっておきの魔法を見せたいんだ

「いいからいいから」

ご飯を食べ終わってまったりテレビを見てるセリカちゃんを引っ張る

このままじゃ余計出かけたくないって言うだろうから部屋着のセリカちゃんを魔法で可愛いお洋服に変えてあげた

「何よ、もう」

服が変わると渋々セリカちゃんは行ってくれると言う

俺はセリカちゃんを連れて、ちょっとだけ距離のある人気のまったくない外灯も微妙にない暗い小さな公園に来た

とっておきって言っても魔法力の弱い俺にはそんなたいしたコトはできない

でもね、やっぱりセリカちゃんにクリスマスを味わってほしいんだ

俺が見たいのは君の笑った顔

「真っ暗ね、痴漢出そう」

今から魔法を使おうと言ったセリカちゃんからしたらファンタジーな体験をするのに痴漢とか夢のないコト言わないでくれよ!!!

「さぁて、セリカちゃんにクリスマス気分をプレゼントするぜ」

セリカちゃんの1番ほしいクリスマスプレゼントじゃないから今からやるコトで天に帰るコトはできないケド、このプレゼントはそんなコト関係なしの俺の気持ちだ

クリスマスを好きになって、楽しんで…

君がクリスマスを嫌いって言うと悲しいよ

友達が殺された日だから嫌うのもわかるケド

でもそれってたまたま今日の日だっただけでクリスマスが悪いワケじゃないだろ?

クリスマスはみんなが幸せに笑顔にならなきゃいけないんだ

みんなが…そうなってほしい

無理なら…無理だから…俺ができる可能性のある

目の前の笑わない女の子だけでも笑顔にしたい

そして、セリカちゃん…俺が帰った後の毎年のクリスマスに俺を思い出してほしいんだ

忘れられたくない…いつの間にか俺はそう思うようになっていた

「クリスマス…気分……?」

「うん!」

パチンと指を鳴らすと一瞬にして公園が別世界のような景色に変わる

公園と言う土台は変わらないんだが

目の前の中央には巨大なクリスマスツリーがオーナメントで飾られ輝き、てっぺんの星が一際光強い

ツリーの下にはセリカちゃんの好きそうなものが入ったプレゼントを山積み

公園全体にいろとりどりのクリスマスカラーでイルミネーションし

さらにあったかい雪を降らせる

ドコからかクリスマスの音楽も流れてるんだぞ

「……………。」

その一瞬で寂れ暗かった公園がクリスマスっぽく輝く光景にセリカちゃんは目を見開いたまま固まった

「前に君の部屋をクリスマスっぽくしたコトがあったな

ワンパターンかもしれない、君はこういうの嫌いかもしらない

でも…やっぱり俺はバカだからクリスマス気分にさせるなら見せて聴かせてって感じかな……」

「……………。」

公園の変わりようを見た後、なんの感想もなくセリカちゃんは無言で俺を見る

「セリカちゃん……やっぱりクリスマスは嫌いか?

俺はクリスマスの時期に人間世界に来てプレゼントするまで帰れない

クリスマスにしか存在しない俺だからさ…

クリスマス嫌いって言われたら俺は来ないほうがよかったのかなって思っちゃうかな」

クリスマスなんてなければいいなんて言われたら存在否定って感じか

「………クリスマスは嫌いって言っても、別に貴方を嫌いとは言ってないわ……

なんでそんなコト思うのかしら」

「ん~…誕生日プレゼントをあげようと思ったら誕生日は嫌いって言われて、誕生日を祝うプレゼントをあげにくいみたいな感じ?」

「なるほど…それはなんとなくわかりやすいね」

それでも俺はその人が自分の誕生日を嫌いって言っても生まれたコトを祝いたいケドな

だって、俺はその人のコトが大好きだからプレゼントを持って行くんだ

生まれてきてくれて…ありがとうって、出会えてよかったってな

今の俺はクリスマスプレゼントを大好きなセリカちゃんに

出会えてよかったって意味を込めて渡したい…

「………私、イルミネーションとか嫌いじゃないよ

むしろ大好き

クリスマスツリーだって…綺麗じゃん」

「えっ…?」

「あの部屋のクリスマスの飾り付けしてくれたのも本当は嬉しかったのにウソ言っちゃった…」

ど、どうしたんだ…いきなりあのセリカちゃんがデレたぞ

ツンツンクーデレの彼女が……

「だって…いつも私、1人だもん

ずっと1人だった

結夢ちゃんと友達になってからクリスマス一緒に過ごしてたケド

また1人になっちゃった

あれは幻、幻想、夢…

クリスマスなんて…大嫌いよ

みんなが幸せだって笑うと、私はいつもより孤独を感じてしまうから

クリスマスなんてくだらないって思っていれば気持ちは軽い…つもりだった」

いつも気の強いコトを言って、1人が好きだとか言ってたケド

本当は寂しかったのか…

我慢して強がって…

叶わないから黙るしかなかった

寂しいと言ってしまえば泣いてしまうから

口には出せなかった

「今年は俺がいるだろ

だったら、素直に楽しめばいいのに

なんでいつもアマノジャクなんだ」

「………うるさいな…バカ……」

俺がそう言って笑うと君が泣きそうな顔をする

それは恥ずかしいんだと思った

俺は彼女がつい本音を言ったさっきの言葉で全ての気持ちを知ったつもりでいたケド

でも、まだわかっていなかったんだ

わかっていない所…それが君の1番ほしいもの

「……明日いなくなる…?」

そろそろ帰るかって時に彼女は俺の服の裾を掴んで珍しく弱気に言った

「ん?いや、まだ君が1番ほしいものをクリスマスプレゼントしてないから帰れねぇよ」

「……そっか…」

俺が答えるとセリカちゃんは少し嬉しそうな顔をする

そっか…クリスマスプレゼントをしたらセリカちゃんとはバイバイしちゃうのか……

なんだろう…あんなに早くクリスマスプレゼントして帰りたいって思ってたのに

今は帰りたくないと思ってる自分がいる

セリカちゃんとバイバイしたくないとか…

1番ほしいものをプレゼントしなきゃ帰らなくてもいいのかな…ずっと……

マスターには会いたいケド、セリカちゃんのいる人間世界も楽しいんだ



-続く-

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