第3話 どうしたって手品に見えてしまう魔法の使い方

「どっから入ったのか知らないケド、レディのベッドに潜り込むなんて…」

鉄拳プレゼントしたクセになんでちょっと今涙目なのかわかんねぇ女だ…

俺に添い寝されてそんな泣くほどイヤなのか?

それスゲー傷付くぞ

「この変態変態変態!!最低最低最低!!バカバカバカ!!嫌い嫌い嫌い!!」

「へ、変態!?最低なのか俺は!?」

ウサちゃんのぬいぐるみを投げつけられて軽くキャッチする

「………何もしてないって本当なの……?」

「逆に聞くケド、何すればよかったんだよ」

さっきから「何かした?」って泣きながら聞くから「何もしてない」って言ってるんだケド、ずっと疑いの目を向けられてる

って言うか、何かってなんだよ

その何かってのをちゃんと言ってくれないと俺わかんねぇし

君の心読めないからな

「したら殺すしな!!」

手を噛み付かれた

何かしてくんのはいつもそっちだろ!!!!

殴ったり蹴ったり首絞めたり噛み付いたり、謝れよ!!!

人間じゃない俺にだって傷付く繊細な心はあるんだぞ!!

「う~…何もしてないなら、なんでアンタは私のベッドで寝てたのよ

ちゃっかりパジャマまで着て…

何よその微妙に私とお揃いっぽいウサちゃん柄の可愛いパジャマ」

「寝る時はパジャマ着るだろ」

俺もウサちゃん好きなんだよ!!悪いか!!

「俺がココに来たのは昨日も言ったケド、君にクリスマスプレゼントするタメ」

昨日、マスターは最後にアドバイスをくれたんだ

『ほしいものは目に見える形ある物じゃない時もある』のだと

俺の魔法の袋は不良品なんかじゃなくて、何も出てこなかったのは彼女が物をほしいと思っていないからかもしれないって

そうだよな、俺も1番ほしいものって聞かれたら即答で『マスターを独り占めしたい』とか目で見えないもの言っちゃうもん

「クリスマスプレゼントね…」

「君にクリスマスプレゼントしなきゃ、俺は本当に帰れないんだよ

なんでもいいから本当に1番ほしいもの言ってくれよな」

「いまいちアンタのコト信用できないんだケド…

まず本当に人間じゃないって言うなら手品じゃなくて本物の魔法を見せなさいよ」

「ぐっ…疑い深い女だな……

女の子ならちょっとは可愛く目の前のファンタジーを信じたらどうなんだ」

サンタじゃねぇケド『うわ~サンタさん!来てくれたのね!嬉しい!!』ぐらい言えんのか

それとも俺のイメージする女の子ってのは理想と現実の違いで人間の女の子はみんなこんな見た目だけ可愛いケド中身は凶暴なのか

「よ~くシッカリ見てろよ!

魔法使うのって結構疲れんだからな!!」

年月が立つ毎に魔法力も増えて行くみたいだから0歳の俺は少しくらいしかないんだよ

無駄な魔法は使いたくない

とりあえず俺は友達である真っ白な小鳥をパッと魔法で手に出してみる

「わ~スゴイスゴイ手品、定番のハトじゃないのが斬新ね」

このバカ女…台詞が棒読みだぞ

しかもコレじゃどんな魔法を見せつけても手品で終わりそうだ

「種も仕掛けもねぇよ!!」

ポンポンと黄色の小鳥とピンクの小鳥と水色の小鳥も出してやったケド、やっぱり手品と言われる

「小鳥が友達とか寂しい奴」

最後にはそれだ

どんだけムカつく女なんだ……

「ん?」

白い小鳥が俺の手から離れたと思ったら、彼女の頭に移動する

珍しいな…白い小鳥は人見知りが激しくて俺以外には同種(鳥)にさえも懐かないんだが……

「あら可愛………くねぇ!!!!!!!!!!!!!!????」

彼女は俺にはムカつくコトを言うケド、動物は好きみたいだ

でも、自分に懐いて来たと思った白い小鳥が彼女の頭に糞をしてしまってブチ切れた

それにざまぁみろと思って笑いそうになったのは俺ですが…

さすが俺の友達、よくやった

「どういう躾してんのよ!!!レディの頭に糞しやがる小鳥なんか焼鳥にしてやる!!!」

頭に乗ってる白い小鳥をワシ掴みにして、白い小鳥をピーピー鳴かすと言うか泣かす

「ぎゃーーー!!!!やめろーーー!!!

オマエは可愛い女の子の皮を被った悪魔かーーー!!!!!!?????」

白い小鳥を彼女の手から救出して、全小鳥を魔法で消した

が、その後すぐに見えないパンチが俺に飛んでくる

コイツはプロか!!!!

「じゃあテメェが私の気が済むまで殴られろ」

「暴力反対!!!!!」

きっと彼女の怒りが鎮まるのは100年後!!

俺はパチンと指を鳴らして彼女を綺麗にしてやった

ざまぁみろとは思ったが、さすがに女の子の頭に鳥の糞はえげつないよな…

こんな奴でも一応は女の子みたいだし……

「………服が変わった……髪も綺麗になってるし……?」

彼女の服を変えてやったのはご機嫌取りのサービスプレゼント

糞付いた髪だけを綺麗にしても怒りがおさまるとは思わないし

彼女によく似合う可愛くて上品なドレスだ

黙っていれば可愛くて綺麗な気品ある女の子なのにな……

どう生きてきたらそんなんになるんだ

「ゴメン…白い小鳥には俺が後でちゃんと叱っとくよ」

あの子は俺のタメにと思ってくれたんだろうケド、それは違うんだぞ

「ふん…友達が悪く言われたら怒るのは当然ね

だからって貴方にヒドイコト言ったのを私は謝らないケド」

ん?なんかちょっと…

無茶苦茶な女だと思ってたケド、素直になれないだけで常識はあるのか?

ちょっと彼女の見方が変わったな

俺はまた魔法を使って彼女の頭と肩と膝の上に5匹のいろんな色の子ウサギを出してやった

この子達も俺の友達

何もないこの部屋にウサちゃんのぬいぐるみだけがあるってコトはきっとウサギが大好きなんだろうと思ったから

本当に1番ほしいクリスマスプレゼントをするにはまず言ってくれるくらい仲良くならないといけないよな

ムカつくケド、俺がキッとなったら衝突しちゃうから

ココは彼女の性格を考えて俺が大人になろうじゃないか

「……うっ…ウサちゃんが……いっぱい………可愛い!!」

可愛すぎて死ぬとか言いながら彼女は1匹の子ウサギを抱き上げて頬擦りする

やっぱりウサギ好きなんだな

「本当に貴方、魔法が使えるのね」

手品でウサギ出す奴もいるケド!!?

別にウサギを出して魔法を認めさせようと思ってやったんじゃなくて喜ばせようとしたんだが…

ウサちゃん出したら魔法になるのか!?

そんなんで俺を認めんの!?

「まぁウサちゃん出したからって、アンタが仕掛けて出した手品かもしれないから…」

疑うんかい、どっちだよ

「雪!本物の雪を部屋に降らせてくれたらオマエの魔法を認めて、人間じゃない天から来たなんかって信じてあげてもいいわよ」

「雪?そんな簡単なコトで認めてくれんの?」

雪って小さくて真っ白で綺麗な冷たいやつだよな

この時期になると俺達の場所にも降る

俺ははじめて雪に触れてビックリした

あったかい所なのに冷たくて綺麗なものが降ってくるんだから不思議

雲の下にしか降らないから雲のずっと上にある俺達の場所に降るなんて普通はありえない

それはマスターが俺達を喜ばせる魔法とも噂されてるかな

「いいぜ、じゃあちゃんと見て触って実感しろよ」

俺がパチンと指を鳴らして魔法でこの部屋に雪を降らせてみた

雪が降ると急に部屋の温度が下がって寒くなったケド、彼女は雪を見て感動してるらしく今は寒さを気にしてない

「わぁ雪!!本物の雪だわコレ!!」

彼女の住む地域は死ぬほど寒いケド、雪が降るコトはあんまりないらしい

雪が降るとテンション上がるんだって

テンション上がるのは俺も一緒か

「見たか!俺の魔法!!コレで信じてくれるだろ!!?」

雪が軽く彼女の頭や肩に積もった所で俺はそう言った

「そうね…いきなり言われたコトができるなら魔法かもって思えるわ

私が言うコトなんて何かわかんないのに種も仕掛けも用意してないだろうしね」

今思ったが、昨日は男喋りな女の子なのかと思ったケドちゃんと今日みたいに女の子喋りも出来るんだな

「認めてあげてもいいよ貴方の魔法と、信じてあげるわ貴方の存在を」

「本当か!!??」

ぃっヤッタぜ!!!最初の難関クリアって感じだ!!!

今まで俺は不審者とか思われていたからな

やっと人間じゃないってコトをわかってくれた

「もう部屋の雪はいいよ、雪遊びしたい時が来たら今度は外に積もらせてって言うから

今は寒いから止めてストーブつけよ」

「そうだな、俺もさっきから寒くて凍えるって思ってたか………ら?」

指を鳴らして魔法で降らせた雪を消そうとしたケド………

「……………。」

「……………。」

消えねぇ……

彼女の視線が全身に突き刺さるくらい痛いから早く雪を止めたいんだケド、マジで

雪は止まないどころか何故か豪雪になった

「なんの嫌がらせ!!!??」

「なんでだ!?超寒ぃよ!!!!!!」

猛吹雪の音が恐怖、猛吹雪が身体に当たると痛い

「遭難レベルの猛吹雪!!!!!???

部屋の中で遭難とかシャレにならねぇぞ!!!早く止めろ!!!」

彼女にどつかれながらも俺は何度も指を鳴らしてみるが、まったく何の変化もない

「ヤベ……魔法力切れたっぽい………」

「はぁあああ!!!!!!!!!!?????????

冗談はやめなさいよ!!!死なすぞ!!!!」

殺される!!!!!!!?????

とにもかくにも彼女は俺を殺す前に限界を越える寒さに我慢できないのか押し入れに逃げ込む

オンボロアパートの和室だからクローゼットじゃないんだな…

「なるほど!押し入れの中で寒さを凌ごうって考えだな!!」

俺も押し入れの中に入ろうとしたが、足蹴にされ追い出された

「この寒い中、追い出すとかよく出来るな!!!」

押し入れには物があって大人の男1人入れる隙間しかない

でも、俺と君は小柄だから少し無理をすれば2人入れなくもないんだケド……

「アンタがやったコトでしょ!なんとかしろよ!!」

「オマエが雪降らせろとか言ったんだろ!!

なんとかしろって言われても魔法力が回復するまでどうもできねぇ!!!」

俺はまだ自分にどれだけの魔法力があってドコまで使えるのかちゃんと把握できてない

気にせずバンバン魔法使っちゃ切れてるコトもよくある

魔法力は一晩寝れば全回復できるが、今は1時間くらい立てば1回魔法使えるくらいは回復すると思う

まぁそんなワケだから…1時間この豪雪の中いたら凍死するわ!!

俺は彼女に蹴られながらも無理矢理押し入れに入り込むコトに成功

つまり最終的には俺が勝ったってコトだ

「狭いだろ!!」

「仕方ないだろ

でも、今はこうして2人くっついてたほうがあったかくていいんじゃないか」

「………オマエじゃなきゃいいんだケドね……」

「文句あるならあっためてやらんぞ!!」

魔法は使えないケド、俺は足に翼を表せて彼女を包み込んであげる

さっきまで彼女と変わらない体温だった俺も翼がある時は体温が少し高くなるんだ

「1時間我慢してくれよ」

彼女の手を掴んでハァってあったかい息を吹き掛けて冷たくなった手を温めてあげる

ムカつく女だケド、マスターがいつも女の子には優しくしろって言うんだ

俺もそう思うし、風邪引かれたら困るからな

「………やっぱ羽毛ってあったかいよね、寝そう」

「俺の大事な羽根をむしるな!!!」

左手は俺の手の中に置いたまま、右手で容赦なく羽根をむしるコイツは本当にヒドイ女だ

羽毛があったかいは本当

俺も寝る時は翼の中に身体を隠すし

「足に羽が生えてるから羽根は足臭いのかと思ったら意外に良い匂いがするのね」

「足臭いとか失礼すぎるだろ」

「アンタの名前は?

私に顔がソックリってのは気持ち悪いケド、貴方のほうが私より背が高いのは男だから?」

「そういや自己紹介が遅れたな」

2回も言おうとしたケド、誰かが言わせてくれなかったし

「たぶん俺が男だから君より背が高いってのあるんだろうが

俺は普通の男にしたら背は低い方だよ

できれば後20cmほしいね」

もしマスターが俺と同じ大きさだったらって考えたコトがあって、そしたらたぶんマスターは普通に俺より背が高いと思う

他のマスター(女性)の中でも背が高いほうだし

「アハッ、その顔で長身とか似合わないよ」

「ぶっ殺すぞ」

って言ったら頭突きを喰らった

この女め…俺が手を出さないからってやりたい放題だ

まぁ女の子に手をあげたりする気はねぇケド

「俺はセリ、君はセリカって言うんだろ?

名前まで似ててビックリだよ」

「顔だけじゃなく名前までパクられた」

「パクッてねぇ!!!!!!

俺の名前はマスターが付けてくれたんだ!!

スゲー気に入ってんの!!!」

「パクりパクられはちょっと置いといて、私の名前を呼び捨てにするのは許さないわよ」

うわ…恐ッ…今度は目で殺されそう

もしくは石化

「………じゃあ……セリカちゃん……?」

さんはちょっと目上って感じがするからちゃん付けで

さんにするとこの女はさらに俺を見下してきそう

「まぁ…それでいいわ、ところでマスターって何??」

セリカちゃんはマスターって誰?って興味津々に聞いてくるから、俺はマスターのコトや俺の住んでる所や俺自身のコトを少し話してみる

「ふ~ん、それじゃアンタが大好きなマスターの所に帰るには私にクリスマスプレゼントをしなきゃいけないのね」

「そう言うコトだよ」

「残念ね…私は何もほしくないから帰れないわよ」

ふふって小悪魔みたいに笑うから俺はそこで子供みたいに「なんでもいいからほしがれボケ!!俺は早く帰りてぇんじゃ!!!」なんて言い返すのはやめて、ちょっと大人発言をしてみた

「それはどうかな

今は何もほしくなくても明日はわかんないだろ

明日ほしくなくても、クリスマスまでには何かほしくなるかもしれねぇじゃん」

「………そうね、明日になったらお金がほしいわ

永遠の美しさと若さもほしいし……」

またそんなウソばっか言って……

「そんなウソはバレバレだぜ

俺がクリスマスまでにセリカちゃんが何か本当にほしがるような気にさせてやる!!

そして、それをプレゼントしてやるよ!!!」

ほしいものが目に見える物か、ほしいものが目に見えないものか

どっちにしても君が1番ほしいと思ったものを必ずクリスマスプレゼントしてやるさ!

そして、マスターの元に帰る

君を幸せにするコトが出来たらマスターはきっと俺を褒めてくださるから……

「………ほしい気にさせる…ねぇ……

そんな他人にどうかされて何かほしがるような私じゃないんだケド

まっ、クリスマスまで頑張れば?

どうせ殴る蹴る噛み付く首絞め(略)をしても飽きるまで私に欝陶しく付き纏うんでしょアンタ」

「飽きるまでじゃねぇぞ

君にクリスマスプレゼントできるまでだ!

例えクリスマスが1日2日過ぎても、俺はセリカちゃんが1番ほしいものを絶対プレゼントする!!」

覚悟しろよって感じにセリカちゃんの額に人差し指を突き付けると、この女は俺の人差し指を無慈悲に曲げちゃいけない方向に曲げて俺を悶絶一歩手前にさせた

やっぱこの女とは早くお別れしてぇ……!!!

こんな仕打ちを受けてまでセリカちゃんのタメにクリスマスプレゼントしようと頑張る俺超偉い!!!

が、頑張れ俺…!帰ったらマスターが待っていると思えばどんな地獄も耐え乗り越えられるだろ!!!



-続く-

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