次の信仰者は、倶生神
本日は雨模様。濡れないように傘を差したのに、通学電車の中で誰かの傘が腰から下に当たって、結局濡れてしまい心も雨模様だ。大学の講義が終わったら直帰するいつもの日常だ。しかし、ユキちゃんに与えられた変な霊能力のせいでしばしばこの世のものではない何かをよく見た。しかし、人間は不思議なもので適応するのに時間はそうかからなかった。環境が全く違う所での適応は時間がかかるのだろうが、心の持ちようを変えるくらいなら造作もない。電車の中で網棚の上から見下ろす真っ黒な何かを見つめていたらいきなり大きな一つ目と目があった時だけは叫びそうになった。
家に着くと、今夜ユキちゃんへ1日の日課である顔出しをしに行かなくてはならないから23時に目覚ましをセットする。今から寝れば5時間は眠れる。顔出しした後は適当にゲームをして午後の授業に行こう。
街全体が雨のせいで薄暗いため、カーテンを閉めなくても明かりを落とせば寝るのに十分な暗さになる。ベランダの方から聞こえてくる一定のリズムを刻む雫に神経を集中させると
けたたましい目覚ましの音に不快感を感じながら止める。手に届く範囲に置いてあった上着を着て、眠い足取りで神社へと向かう。
夜の雰囲気は好きだ。雨が上がって自転車に乗っていると、顔を撫でるように過ぎていく風に雨の匂いが染み込んでいる。なんとも心地よい。
神社の階段を息を切らしながら上がる。運動サークルにも所属していない大学生にとってこの運動は大学のテスト1週間前くらい辛い。
たどり着いて、鳥居をくぐってすぐ立ち止まる。
「参上しました。本日の報告をしようと思います」
すると、社にいつのまにかユキちゃんがいて、賽銭箱の階段に腰かけていた。両手で唇の端に、人差し指の付け根を付けて声を張り上げる。
「そこまで来たのなら、ここまで歩いてきなさい‼︎ なんで、中途半端な所で諦めるのよ‼︎」
俺は肩をすぼめて、両手を肩のあたりで空に向ける。そして、首を軽く左右に振ってからユキちゃんの方へと歩き出す。
賽銭箱の前に立った俺を見下ろすようにユキちゃんは立ち上がる。
「明日からはここまでちゃんと来て、もう少し静かな声で私を呼びなさい。それで、今日は何かあった?」
彼女の
「本日は雨模様でして、特に何もありませんでした‼︎」
「どうしてそんなに自信満々に言えるのよ…。頼まれる前に、困ってそうな妖とかを探すのもあなたの役目なのよ‼︎ そんな意識じゃ他ではやっていけないわよ?」
嫌な上司みたいなことを言ってくるな…。
「お言葉ですが、まだこの使いに慣れていないため、また、人間以外との交流方法がわからないため自分から探すというのが難しいです」
「探さなくてもここでお願いすればいいんすか?」
誰の声だ?俺たちのどっちでもない声がいきなり耳元から聞こえてきた。ユキちゃんは俺の右肩を指差しながら叫んだ‼︎
「
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