学校の怪談編《後編》

10話 目

「確かにここに落ちたと思ったが・・・・・・」


 はやる動悸は走ったせいもあって、未だ収まる様子を見せない。それどころか、今なお鼓動は速まっていく。


「くそっ、なんなんだよ。この感じは・・・・・・」


 会長さんの知識をもってして、それを形容する言葉は浮かんで来ない。焦りにも似たこの感覚、全くの未知数である。


「何やってんのよ、帝!」

「伊草・・・・・・。いや、気にしないでくれ」

「あんたがそんな面してんの見て、気にしない方が無理よ」

「どんな面だよ。俺は別に」


 振り向いた先の窓ガラスに顔が、自分でも酷いと思えるくらい苦々しく歪められたら顔が映っていた。


「そうだな、悪い。動揺してたみたいだ」

「らしくないわね。一体何があったのよ」

「俺も整理がついてない。言葉に出来るか微妙だ」

「本当にらしくない。シャキッとしなさいよアホ会長!」

「はぁ、はぁ、やっと追いついた」

「会長さん、どうしたんですの」


 下から睨みつける風紀さんに、息を切らしたセンセイと権力さんもようやくそろい踏み。

 全員が全員、心配そうに会長さんを見ている。


「で、結局なにがあったのよ」

「それは・・・・・・・・・・・・は?」


 どうしたものかと首を傾げ、そこで目にした『信じられない』光景に会長さんは口を唖然と開く。

 それは会長さんだけを責められたことではない、他の三人も今度ばかりは見逃すことはなかった。



 目だ。赤い瞳をした巨大な目が、校舎の窓という窓から会長さんたちを一斉に見つめている。一枚残さず、さっき会長さんが自分を映したそれも、何一つ余すことなく眺めてくる。


 それは恐怖などが優先できるような状況ではなかった。全ての感情を握り潰す驚愕が全員を支配している。


「これは・・・・・・妖精?」


 会長さんの喉の奥から掠れた呟きが漏れた。数にして幾千、その全てが妖精残滓を放っている。

 

【ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン】


 目しか無いのに、物凄い振動の重圧のエコーがのしかかる。立つこともままならない。耳を塞いでしゃがみ込み、うずくまる。


 そして、紅き光が天から降り注いだ!!


「馬鹿な、この光線は・・・・・・」


 会長さんの身体が光の奔流にのみ込まれる。あまりの絶対的衝撃に、意識を手放した。 

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