第2話

「ア"ア"ア"ア"ア"どうしよぉぉぉぉぉ!!」

「ムガルチアの歴史もここで幕を閉じるのね」

「閉じねーよ!!まだ建国して3日だぞ!?」

「じゃあどうすんのよ!」

「まてまて慌てるな、式まではまだ2日ある、今から馬車を雇えばなんとか······」

「この家のまわり草原しかない、馬車ない」

「家じゃない! 城だ! あと道がある、あ、道でのせてもらえば!!」


~~~~~~


「さっきキャラ崩壊してたよ」

 いや逆にいつもキャラ作ってるからさっきの本命なんだけど。

「いつものキャラってどんなの?」

「基本敬語、一人称ぼく」

「まあそうだね、敬語は使ってないと思うけど」

「まあまあ、あ!馬車来た!」

「ほんとだ、おおーい!」

「おーい!」

 御者のおっさんの顔がはっきり見えるような距離になると馬車が失速してちょうど待っていたところの真横に止まった。

「お嬢ちゃんどうしたんだい?」

「あのぉ、メラフターに行きたいんですけど?」

「ああ、メラフターかい、いいよ、乗ってくかい?」

「いいんですか?ありがとうございます!!」

 おぉ、優しい人でよかった。

「ありがとうございます」

「ん?にいちゃんも乗る気かい?」

 え?乗っちゃダメですか。

「え、あえ···あの···」

 おっとここで男尊女卑ならぬ女尊男卑か。

「あ、あの乗らなくてだいじょうぶです」

 もう別の馬車当たろっ、てチョイチョイチョイ!

 おっさんが顔をめっちゃのぞきこんでくるんですけど。

 そして衝撃発言をした。

「にいちゃんも顔がかわいいから乗っていいよ!」

「えあ、あのはいありがとうございます」

 まじか、この人野獣の強化版だな。

 あと微塵も嬉しくない。

「よーし女の子と男の娘を乗せたところでしゅっぱーつ!」

「おー!」

「男の娘じゃなくて男の子です!!」

 そうして一台の小さな馬車は進みだすのだった。


~~~~~~


 一晩野宿し早朝にはメラフターに到着した。

「お兄ちゃん、ありがとう♪」

「お···お兄ちゃん、あr····ありがとう♪」

「いいんだよー、じゃあ元気でな」

 はっきり言おう。

 地獄だった。

 男の子なのに男の娘のふりさせられるし······なんなんだよ!!

 するとマルムが最高の笑顔で。

「いやー、すっごい可愛かったよ」

「ありがと!」

 ガツン!! 


~~~~~~


「あの、ムガルチアの者なんですけれども」

「あ、ムガルチア国王陛下ですか、ご案内いたします」

「どうも」

 入国審査官の人が馬車を出して王宮まで連れていってくれるそうだ。

 なんとお優しい。

 移動中の馬車の中で外を見ると生活感がありつつも清潔感のある町が流れていく。

 どうせ国を作るんだったらこんな国を作りたいなと思える模範的な国だと思う。

 そうこうしているうちに王宮に到着したらしい。

「ムガルチア国王陛下、どうぞ」

 綺麗な身なりの執事に案内されて王宮の更衣室につれてこられた。

 そこでマルムとは一旦別れスーツに着替える。

 着付けを手伝ってくれた執事にお似合いですねと言われたのだが······。

 残念なことに中学校の入学式にしか見えなかった。

 くそぅ。

 まあ実際12だからいいんだけどね!

 ね!!

 廊下で待っているとマルムも着替え終わったらしく女子更衣室のドアが開く。

 あ······なんだマルムじゃないのか。

「チョイチョイチョイ!私マルムゥ!」

「え!まじか、超かわいいよ!!」

「えあうぅ、その···ありがとう」

 メイクでこんなにも可愛くなるんだねなんて言えない。

 ふっ、チョロいな。


~~~~~~


「ムガルチア国王陛下様ー、ムガルチア国王陛下様ー」

 社交儀礼をすまし、メラフター国王陛下と共になが机につく。

 あぁー、緊張するなぁー。

 なんつったって目の前にいるんのは本物の王様なんだからね。

「ムガルチア国王陛下、お会いできて光栄です」

「いえ、こちらこそお会いできて光栄です、先日はありがとうございました」

「なんのなんの」

 そう言って長く蓄えた髭を撫でる。

 いやー、王の貫禄と言うかなんと言うかそうゆうのを感じるねー。

 よし、こっちからガンガン話を進めてみよう!

「メラフター陛下、手紙の条約の件ですがあの条件のままのましていただきます」

「それはよかった、なにか不満があればなんでも言ってくれてかまわんよ」

「いえ、大丈夫です、こちらこそありがとうございます」

 いやまじで優しすぎるだろ国王陛下。

「ムガルチア国王陛下」

「はい、なんでしょう」

「外交を行う上で領事館を貴国に置かせていただきたいのだが」

「はい全然大丈夫です、となりの部屋でよければ」

「ありがとうございます、それでは帰国時に着いていかせますゆえどうぞよろしく」

「はい」

「それでは貴国の建国宣言式の会場に向かいましょう」

「あ、あと最後に、あの条約は対等な条件立場で結ばれるものですよね?」

 メラフター国王陛下はにっこりわらってもちろんと言った。


~~~~~~


 建国宣言が終わっていま更衣室なのだが、もうほんとにやばかった。

 なんたって今まであんなけ大勢の人の前で喋ったことなんてないからもうかみかみで、あと。

 メラフター国王陛下の視線が怖かった。

 会談のときの優しい目とはうってかわってとても厳し目をしていた。

 恐らくだが俺があそこで条約が対等な立場で結ばれるものだということを確認したからだと思う。

 きっとメラフター的にはこの条約を盾にして将来的にムガルチアを支配下に置こうと考えていたんだろう。

 まあここでその苗を摘んだからいいもののメラフターには警戒しないといけないなと感じた。

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