第4話 兄
「ただいまー」
返事はない、少しの寂しさを感じ二階に上がると兄の部屋に気配を感じ入ってみるとそこには母の姿があった。母は、ベットの上で寝たままの兄の手を握り、隣に座っていた。まるで二人とも時間が止まっているようだった。
「またここにいたんだ。・・・・今日のご飯何?」
「・・・・もうそんな時間なのね、今から作ってくるわ。」
そういうと母はのそりと下のキッチンに向かっていった。母はいつもそうだ。誰かに何か言われない限りじっとしている。そうなってしまったのは母のせいではない、もちろん僕のせいでもない。
「母さんまで、つれてくなよ」
僕は時間が止まったままの兄に近づきながらそう言った。兄の顔を見ると兄との今までの思い出がよみがえる。
兄は八方美人な性格で自分のことは二の次にしてしまうような人だった。大して僕はわがままで、そんな性格の兄に助けられてばかりいた。小学生の頃は、いつも控えめな兄に苛立ってばかりいたが、年を重ねるにつれそんな兄を尊敬するようになっていた。そんな兄の時間が止まったのは半年前だ。当時の僕は高校入試が終わり高校生になろうとしていた。新たな世界の入り口に心を躍らせていたなか、事は急に起きた。・・・昔のことを思い出し、泣きそうになってたので気分転換に最近のことを思い出そうとした。・・・そういえば昨日変な夢みたな。なんか光の玉に包まれるような変な夢。あの時も兄のことを思い出していたな。何か・・・兄が近くにいる気がして・・・。あの時の夢のことを思い出そうとしたその時、ノックの音が響いた。
「ご飯できたぞ、降りてこい」
そういうと父は僕の返事を待たずして下に降りて行った。時計を見ると午後8時を指していた。・・・そりゃ親父も帰ってくるわけだ。
「もうそんな時間か・・・」
僕は、そう呟きながら兄の部屋を後にした。
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