第12話


 カタカタッ、カタカタカタ

 妖精森の夏別荘から、リズミカルな機械音が聞こえる。

 艶やかな長い黒髪を結い上げて、黄色いハイビスカス柄のムームー服を着たエレーナ姫が、応接室の片隅に置かれた足踏みミシンを踏んでいる。


「ムームーはとても着心地が良くてお気に入りです。私は多少洋裁の心得はあるので、自分でムームードレスを作ってみたかったの。それにこの布に針が刺さって糸を通す魔法道具(足踏みミシン)はとても便利ね」

「夏別荘は自家発電だから、ミシンも電動ではなく足踏みミシンが現役です」


 エレーナ姫は洋服(主にムームー)の通販取り寄せだけでは飽きたらず、ついにオリジナルムームー作りを始めた。

 エレーナ姫の国にミシンは無く、服はすべて手縫いで、たしなみとしてほとんどの女性は縫い物が出来るそうだ。

 カナは縫い物は苦手で、夏休みの宿題で巾着袋を縫った経験しかない。

 そんなカナから足踏みミシンの使い方を教わったエレーナ姫は、ミシンを器用に操作して一日一枚ムームーを完成させる。


「袖のフリルを三重にして、スカートの裾が綺麗に広がるように布をたっぷり使ったの。綺麗な緑色の布は、茶色い髪のカナさまに似合うと思うわ」

「えっ、このムームーを私が着てもいいんですか? うわぁ、エレーナ姫さまが作ったムームーはエーゲ海の高級リゾートでセレブがヨットの上で着るような、とにかくスゴいお洒落」


 すでに二人のメイド娘もエレーナ姫制作のムームー服、メイド長はムームー風割烹着を着ている。


「スカートのフリルが五段切り替えで、袖が大きくふくらんだ可愛い服をルーファスに作ったのに、怒って着てくれないの」

「エレーナ姫、金魚のようにひらひらして可愛いムームーだけど、男の子にソレを着せちゃダメですよ。王子は自転車に乗る練習をしているから、転んで服を破いちゃいます」


 カナはエレーナ姫に男性はアロハシャツを着るのだと説明したが、姫はフリル無しの服は作りたくないらしい。

 カナはエレーナ姫に作ってもらったムームー姿のまま、ルーファス王子の自転車練習を指導する。

 運動神経の良い王子は、自転車練習三日目にはバランスが取れるようになり、転ばず前に進むようになった。


「オヤカタ見て見て、ジテンシャが真っ直ぐ走るぞ。ブレーキをかけて停まっても、ジテンシャを倒さなくなった」

「がんばったねぇ王子、たった三日間でこれだけ自転車を乗れるなんてすごいよ。それじゃあ次は、管理人小屋裏の坂道を登る練習をしよう」

「オヤカタ、ジテンシャで坂道は登りにくいよ。僕は疲れた、今日の練習は終わり。部屋に帰って荷車(ミニカー)をカスタマイズするんだ」


 カナのスパルタ自転車教習に、ルーファス王子は逃げ腰になっていた。

 それに王子は、競争相手がいないと集中できない性格らしい。


「やっぱり年の近い遊び相手が必要だよね。そういえばアシュさんは、ニール君を家まで送りに行ったまま、三日も帰ってこない。エレーナ姫はアシュさんに、敵の同行を探りに行かせた。って言っているけど大丈夫かな?」

 

 リリン、リン、リン

 その時、妖精森の入り口へ続く白い石畳の道から、自転車のベルとペダルをこぐ音が聞こえてきた。

 後ろを振り返ったカナは、道の向こうからマウンテンバイクに二人乗りした、ニール少年とアシュの姿を見た。

 一台のマウンテンバイクをニール少年がこぎ、後ろは女騎士アシュが立ち乗りしている。

 二人乗りの自転車は妖精森の白い石畳の道を猛スピードで駆け抜け、夏別荘前の広場に乗り込んだ。


「えっ、ニール君いきなり二人乗り、しかも凄い早さで自転車を走らせている。たった三日でこれほど上手に自転車に乗れるなんて、すごいというか奇跡!!」


 見事な自転車二人乗りに、カナは思わず手をたたいて喜ぶ。

 しかし夏別荘の前で自転車から降りる二人の表情は、どこか硬く緊張していた。


「ああ、カナさま。とてもお久しぶりです。緊急にお伝えしたいことがあり戻って参りました。エレーナ姫はどこにいらっしゃいますか」

「アシュさん、久しぶりってたった三日だけど? エレーナ姫は応接室で足踏みミシンを踏んでいるわ。アシュさんの緊急の用事って、王子を捕まえようと追っている人たちの事」


 エレーナ姫や王子はクーデターで国を追われ、大叔母さんを頼って着の身着のまま妖精森に逃れてきた。

 その情報を調べようと、カナはネットで色々とニュース検索したが、クーデターで国を追われニホンに亡命した王族の話は出てこない。

 もしかしたらエレーナ姫たちは密入国、それとも国家機密で報道されないのかもしれない。


「エレーナ姫と王子を狙う敵がいるなんて……か弱いワタシには何も出来ない。いざとなったらコンおじさんに頼んで、知り合いの警備保証会社や地元消防団に妖精森を守ってもらおう」

「カナさま、ケイビホショウやショウボウダンとはなんですか?」

「うん、もしもの場合に備えて、知り合いの警備保障会社のミノダ(蓑田)さんや、地元消防団のケンタ(健太)さんに協力して貰うの」

「ええっ、カナさまはミノタウロスにケンタウロスまで呼び寄せて、妖精森を守護させるのですか」


 さすがのアシュもこれには驚き、声が大きくなってしまう。

 目の前にいる小柄な魔女が膨大な魔力を有しているのは分かるが、まさかケルベロスだけでなく、ミノタウロスやケンタウロスまで一度に使役することが出来るとは。

 これなら宰相が大軍を率いて攻めてきても、魔女カナの守護魔獣を打ち破ることは出来ないだろう。

 妖精森の中にいる間、エレーナ姫やルーファス王子の身の安全は保障される。

 カナを見るアシュの視線は羨望と尊敬と畏怖が入り交じり、貴人に接するように居ずまいを正すと、深々と頭を下げその右手を取った。


「アシュさんどうしたの、そんなに見つめられると。やっぱりこのお洒落なムームーは、ワタシに似合わない?」

「いいえカナさま、愛らしく高貴な魔女族の貴女にとてもお似合いです。魔女カナさま、どうかエレーナ姫とルーファス王子をお守り下さい」


 アシュに手を握られて頬を赤らめるカナに、ニール少年も声をかける。


「カナさま、僕の村を救っていただいてありがとうございます。魔女カナさまから頂いた贈り物で、村人の命が救われました」

「命を救われたって、それはちょっと大げさよ。大叔母さんのお中元を分けただけよ」

 

 その時、夏別荘の玄関前にいたルーファス王子は、ニール少年が見事に自転車をこぐ姿を見た。


「どうしてニールは、たった三日で上手にジテンシャに乗っているんだ? 僕はまだ上手くジテンシャを使役できないのに」


 それはルーファス王子が初めて経験する劣等感と羞恥、そして嫉妬心。

 王子は自分でも気が付かないうちに駆けだしていた。


「オヤカタ、オヤカタァー、アシュやニールとばかり話をするな!!」


 自分に背を向けて、アシュとニール少年と話をしているカナの背中を思いっきり叩く。

 ポカッ☆ ポカポカ、ポカっ☆


「うわっ、痛たっ、急にどうしたの王子? 今はアシュさんが急な用事があるから、王子と遊んでいられないのよ」

「いやだよオヤカタ、僕はオヤカタと弟子の契約をしているんだ。一番に僕を見てよ!!」

「ルーファス王子さま、何をお怒りになっているのですか?」

「王子さま、どうしたの?」


 アシュとニールが心配して声をかけると、王子は身をこわばらせカナの服を握り背中に張り付いた。

 カナは王子が顔を押しつけた背中が濡れて温かい涙を感じる。

 後ろを振り返って顔を見ようとしても、王子は背中に張り付いて顔を上げない。


「うーん、これはちょっと……王子と二人きりで話をさせて。そこの木の影に隠れている隊長、ワタシの白い自転車の後ろに王子を乗せてちょうだい」


 相変わらず隊長は隠しきれない巨体で、バツが悪そうに広場の中心にある巨木の影から出てくる。

 カナは白い自転車のハンドルを握り、背中に張り付いたルーファス王子が抱え上げられると後ろに乗せられた。

 そして二人乗りの自転車は、妖精森の奥へと続く山道を駆け上っていった。



「王子、見て見て、綺麗な蝶が飛んでいるよ」

「………」

「王子、ほら、木の上に大きなトカゲがいる。獲物のバッタをくわえているよ」

「………………」


 自転車の後ろに乗ってからも、ルーファス王子はずっとカナの背中に顔を伏せたままだ。

 カナ自身、山道の自転車二人乗りはきつくて、途中から降りて自転車を押すだろうと思っていたが、この白い自転車はペダルが軽く上り坂もスイスイ進む。

 妖精森の奥へと続く白い石畳の遊歩道を走り抜け、小さな泉を通り過ぎると小高い丘にたどりつく。

 白い石畳の道はここまでで、そこから先は砂利道に雑草が生い茂り、ほとんど獣道と化していた。

 カナはそこで白い自転車から降りると、ルーファス王子を残しさっさと獣道を歩んでゆく。


「オヤカタ、ぼ、僕を置いてゆくな!!」

 

 砂利道を塞ぐ雑草は王子の胸までの高さがあり、カナはその雑草をかき分けて森の奥へ突き進む。

 王子は慌ててカナの後ろからついて歩き、二人は会話もなく黙々と丘の頂上を目指した。

 目の前が開けると、そこには一本の巨木があった。

 どうやらここが妖精森の頂上で、目の前の巨木は夏別荘前にあるシンボルツリーと同じモノだ。

 カナはその巨木に近づくと、木の幹に手を伸ばし何かを探している。


「えっと、確かこの辺から登れたはず。あっ、見つけた。王子、ココに来て木の上を見てごらん」

「なんだオヤカタ、広場の木と同じ種類で別に珍しくない……えっ、木の上に小屋が建っている」


 それは生い茂る巨木の枝葉で隠すように、木の上に作られたツリーハウスだ。

 カナはスカートの裾を絞って結ぶと、サンダルを脱いで巨木の幹にしがみつく。

 足をかけた部分に木のくぼみがあり、また所々に踏板が打ち付けられていた。


「邪魔な枝葉を払えば、上の秘密基地に登れそう。王子はちょっと待ってね」


 そういうとカナは慣れた様子で木を登り始め、途中太い枝で一休みするとさらに上へ登って行った。

 王子は黙ってその姿を見つめている。

 緑のムームードレスを着たカナは巨木の中に溶け込み、まるで森の妖精のようだ。

 しばらくすると、木の上からルーファス王子を呼ぶ声が聞こえた。


「下に落ちないように気を付けて登って来て。ここはコンおじさんが子供たちのために作ってくれた秘密基地なのよ」

「木登りなら僕も得意だ、オヤカタ、そこに何があるんだ?」


 カナは一生懸命木を登ってくるルーファス王子と、その後ろの草むらに隠れて、ハラハラしながら見守っている隊長の姿を見た。

 妖精森の山頂に立つ一本の巨木。

 その木はツリーハウス、カナの秘密基地だった。

 カナは慣れた様子で木に登ったが、続いて登り始めたルーファス王子は途中でストップしてしまう。


「オヤカタ、斜めに伸びた枝が邪魔だ。僕の身長では乗り越えられない。それに上の手すりも場所が高すぎて、手が届かないし」

 

 今日の王子は意気地がへし折られてばかりで、情けない声でカナに助けを求める。

 それに気づいたカナがツリーハウスからスルスルと降りてきて、小型ノコギリを握ると王子の行く手を遮る太い木の枝を簡単に切り落とす。

 そして幹の王子の手が届く位置に、太い釘を二本打ちこんだ。


「久しぶりの秘密基地だけど、放置した間に枝が伸びたのね。ほら王子、切り落とした枝の根元に足をかけて釘に捕まれば、一気に秘密基地まで登れるよ。さぁ頑張れ、ワタシが登るのをよく見て、同じ場所に手と足をかけるの」


 カナはルーファス王子に声かけすると、自分はさっさと上に登って行ってしまった。

 巨木の幹にできた大穴がツリーハウスの入口で、そこから顔を出して王子を見下ろしている。

 ルーファス王子はカナが登ったコースを進み、幹の穴にたどり着くとそのまま中に転がり込んだ。


「ようこそルーファス王子、ここは木登りできた者だけが入れる【妖精森の秘密基地】よ」

「オヤカタ、ここは魔女の研究室なのか、それとも宝物庫? 夏別荘の宝物庫よりすごい、僕の見たことのない魔法道具が沢山ある」


 ツリーハウスは、別荘を建てるだけでは物足りなくなったコンおじさんが作ったものだ。

 中は子供部屋程度の広さしかないが、巨木の高さを利用して上へと伸びて、落下防止のネットがアスレチック遊具のように張りめぐらされている。

 世界中を旅する大叔母さんがコレクションしたシャンデリアやランプが高い天井からぶら下がり、壁には見事な刺繍の施されたタペストリーと素朴な手織りのアジア風壁飾りがいっしょに掛かっている。

 こんな高い場所にどうやって持ち込んだのか、部屋の中央には柔らかい革張り三人掛けソファーがあった。

 夏別荘に子供のガラクタ部屋があったように、ツリーハウスは大人のガラクタ部屋と化していた。

 王子は部屋中を駆け回りネットをよじ登り、木の幹を利用して作られた棚を見て不思議そうな顔をする。


「オヤカタ、このゴーレム人形は魔女の使い魔なのか?」

「えっ、ワタシはガンプラで遊んだりしないよ。それは従兄弟の兄さんが置いたもので、お台場に実物等身大があるわ」

「このがんぷらゴーレムの実物はどのぐらいなんだ?」

「さすが男の子、ガンプラに食らいつくよね。えっと、大きさはどのぐらいだろう。ツリーハウスと同じサイズかな?」

 

 カナの言葉に、ルーファス王子は「おおっ」と歓声を上げる。

 手作り棚にはガンプラの他に戦闘機などの作りかけプラモ箱が並べられ、実物の1/24スポーツカーや動く蒸気エンジン模型や蓄音機もある。

 一番奥のカラスケースの中に飾られているのは、コンおじさんお気に入りの見事な装飾の施された西洋鎧と盾で、それを見た王子は驚きで目を見張った。


「オヤカタ、僕はこの鎧や盾と同じものを見たことがある。昔世界を支配した覇王の肖像画に描かれていた鎧や盾にそっくりだ!!」

「これはコンおじさんのモノで、気に入った男の子に譲るって言っていたけど、結局誰ももらえなかったの」


 カナに何げない一言に、ルーファス王子は衝撃を受けた。


「まさか覇王であるコン王が、防具を譲り渡す相手を探しているという事は……」


 現在、帝都で覇王を名乗る者は、直系の血筋を受け継ぐだけで武力も魔力も持たない。

 そして弱体化した帝都から分かれた諸国は小競り合いを繰り返し、ルーファス王子の国は何度も侵攻を受ける。

 元は覇王と同じ一族でありながら、力のない自分たちは宰相の裏切りにあい、クーデターで城を追われたのだ。 


「僕はジテンシャに乗れないし、オヤカタがいないと木にも登れない。覇王に選ばれて、この鎧と盾を手にするのはどんな王様だろう?」


 ルーファス王子は長い時間、神獣のレリーフが刻まれた黄金に輝く美しい鎧と盾を魅かれたように眺め続けた。

 ガコガコ、と音を立ててソファーを引きずる音。

 カナは部屋に敷き詰めた絨毯を点検すると眉をひそめた。


「二年も部屋の手入れをしていないから、絨毯の虫食いがヒドい。絨毯は処分して、ついでに床も新しく綺麗にすれば、五人ぐらい寝泊まりできそう。秘密基地で天体観測しながら一晩過ごすのもいいわ。さぁ王子、これから部屋の寸法を計りましょう」


 カナはそう言うと、虫食い穴だらけの絨毯をめくって丸めると部屋の端に寄せ、メジャーで床を計り始めた。


「オヤカタ、床を新しくするにしても、どうやって床板を運ぶんだ? それにここは中が狭くて、ソファーと床で二人しか寝る場所しかないぞ」


 王子は寸法を測る手伝いをしながら聞いてきた。

 カナは床から顔を上げるとニヤリと笑う。


「ツリーハウスの中に木の枝が何本もあるから、枝にハンモックをつるして眠ればいいの」

「母上やメイドたちは木登りができないから、秘密基地には入れないな。体重の重たい豪腕族は、ここまで登って来れるかな」

「そういえば最近隊長、太ってるよね。隊長が秘密基地に入ろうとしたら、入口に体がつっかえて大変なことになる」

 

 カナに一言に、その場面を想像した王子は笑い転げる。

 ツリーハウスの下で、隊長はさっきまで泣き顔だった王子の笑い声を不思議そうに聞いていた。


「明日から秘密基地のリフォーム開始よ。王子はワタシの弟子だから、しっかり手伝ってもらうわ」


 夏別荘に帰ってきたルーファス王子は、ニール少年の姿を見ると自分から駆け寄った。

 どうやら自転車に上手に乗るコツを教わっているらしい。

 カナは夏別荘の玄関先に腰を下ろし、広場で自転車に乗る子供を眺めながら明日のリフォーム計画を練っていた。


「そういえばアシュさん、エレーナ姫に急ぎの用事があると言ってたけど、ずいぶんと話が長引いているのね」

「カナさま、もうエレーナ姫への報告は済ませました。ちょっと寸法を直すのに時間がかかったのですが、私にこの服は似合いますか?」


 後ろから声を掛けられて振り向いたカナは、そこに深紅の花々が描かれた細身のシルエットのムームードレスを着た華やかな美女を見た。

 普段は無造作に後ろに束ねた髪は、丁寧に手入れされ艶やかな赤毛になり、一つに編み込んで肩から胸元に垂らし白い花の耳飾りをしている。


「うわぁん、とても綺麗だよアシュさん。着ているのはムームーだけど、まるでギリシャ神話に出てくる女神さまみたい」

「そうですか? 私はこのような衣装は慣れてないので、女神さまと呼ばれると恥かしいです」


 アシュさんって宝塚の男役みたいに凛々しい美人だから、華やかなドレスも似合う。

 頬を赤らめて恥じらう姿も眩しいほど綺麗と、うっとりとアシュを眺めているカナの隣に隊長がやってきた。


「おおアシュ、その衣装ならちゃんと女に見えるぞ。餌が欲しくて派手にピチピチ跳ねる錦鯉のようだ」

「隊長、言葉を選びなさい!! それ褒めているように聞こえないっ。ああっ、アシュさんの顔が曇ってしまった」


 カナはアシュの手を引いて夏別荘の中に入り、隊長の目の前で派手な音を立てて扉を閉める。

 隊長は夏別荘の外に締め出された。


「隊長はまたオヤカタを怒らせてしまったぞ。あれ、ニールどうした? 顔が真っ赤だ」

「ルーファス王子さま、今の美女はアシュさまですか。僕はあんなに綺麗な人を初めて見た。赤いドレスが美しい大輪のバラのようで、まるで花の化身に見えました」

 

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