第37話 奪還作戦
ゴウのファイヤーバードは、いつものように、超高速で、木星のガニメデに帰っていった。ゴウは、ガニメデ経由で、ノクターンをコロニーネビラに運ぶ。O3Pは、バラスコロニーに進路をとっていた。ケレスから10万キロ離れたところで、スバルと接続、3人は、やっとスバルの艦橋に戻ってきた。
「お帰りー」
「お帰りなさい」
艦橋に帰ると、案の定、MG2(メンテナンスガンゾ2)が、私設艦長席に座っていた。驚いたことに、通信席のニナが、AIらしくなっていた。
「大変やったんやでー、ほんま、苦労したわ。そっちはどうや」
MG2は、嬉しそうだ。
「帰ってきたんですよ、大丈夫に決まってるでしょ」
MG2は、なんだかニナのお尻に引かれていた。
「アリスさんもしばらくここに居たんやで。せやけど、ここ数日で戦艦がうじゃほど増えてきて撤退した」
「アリスさんに会いたかった」と、ナオミ。
「MG2お土産だぞ」
マークは、特大の光結晶石をMG2に渡した。
「うわー、ありがとう、マークさん」
「ニナごめんな、MG2との約束だったんだ」
「かまいません。これで、あの遅いメインコンピューターを改造します」
ニナは冷静だ。ニーナの生き写しだなと思う。
MG2は、MG2で、こんなにデカイんやったら、この上にCPUとメモリをプリントしてコアにしたほうが早いやないか、贅沢なコアやなーと、なんだかすぐ出来そうな方向で、特大の光結晶石を見ていた。
結局この光結晶は、ガンゾが島宇宙の中性子光通信用に、超ハイスピードの巨大集積回路を作るのに使ってしまうのだが、初期のころは、本当にそんな感じで使っていた。
「メインさんのバラク号の通信は、入ってる?」
ナオミは、ニナと話し出した。
グリーンとのランデブーは、無理だと判断したマークとケエル総督は、メインの私設軍に、マークとアランが、サジタリウスコロニーに、取って帰る、侵入する橋渡し役をお願いすることにした。バラク号艦長のサウロは、旗艦の艦長が出来るほどの人なのに、この仕事をかってくれた。
「あと、25分ぐらいでランデブーポイントに到着します。そこから少し待たないとバラク号は、到着しません」
「分かったわ、ガンゾのM78はどお?」
「予定より遅れています。サジタリウス標準時で明後日の夕方になりそうです」
「予定外の宇宙船進入(コモドール一味)はどうだ」
アランも話に加わる
「まだやな、M78、早よ来んか」
MG2は、ガンゾらしい反応をする。
「そうだこれ」
マークは、グリーンから貰ったメモリプレートと光通信ユニットをMG2に渡した。
「検証してからでいいぞ。後これ、グリーンとの秘話通信コードなんだ。説明されたけどオレには良くわからなかったよ」
MG2は、メモリプレートを胸の間の差込口に入れて検証した。
「これ、すごいわ、グリーンさんって、どんな人や、マークさん」
「まっ、なんだ、お宅だよ。オレに説明しなくていいからな」
手を前に出し、何か言いたそうなMG2を黙らせた。
「メイムがなくても何とかなるか?」
「全宇域でな」
超光速通信は、光の何億倍もあるスピードの中性子光をレーザー光にした光ネットワークだ。以前は、この光を普通の物質で捉えようとしたため光の最高速までしか測れなかった。中性子物質同士で初めて超高速だと分かった。光通信ユニットには、アイソトープ粒が入っている。アイソトープの光(中性子の光)を光燐石で、指向性を持たせたのが中性子レーザー光だ。中性子レーザー光は、普通の物質を透過する。これを普通の物質全般を跳ね返す光燐幕(バリヤー)にあてるとスペクトル変化し綺麗な虹を作る。そのため最低でも7色とOFF色の黒で、8進法が可能になる。パソコンのONとOFFの2進法に比べ、一瞬で大量のデーターを送る事が出来る。この光通信を束ねるホストコンピューターが超高速なら、エンドユーザーで1677万ビット毎秒通信も理論的には可能だ。マークは、グリーンからこの辺まで説明されたところで、ギブアップしている。グリーンの説明は、ハッキングの話しにさえ入っていなかったが、この後、この通信を使ったら隣の恒星間ぐらいなら殆どタイムラグなしに恒星間通信も可能だと言っていた。ここまで聞けば、マークもグリーンを誉めただろう。
全宇域だって!そう言ってくれたら誉めたのにと、思った。ちょっとグリーンに悪いと思う。
「MG2と気が合うかもなグリーン」
「やっぱり気になるー」
「ソコツ雑貨店しってるだろ。今、穿いてるアクエリアス製のボトムなんだけど、グリーンの家で買ったんだ。サジタリウスコロニーは、輸出で儲けてるコロニーだから、輸入はゆるいんだと。ネットで安く買っちゃあ、いい加減な値段で売って結構繁盛してるそうなんだ。もう繋げたんだろ、話してみなよ」
そんな感じでグリーンも交えてMG2と、久々の会話をしているとニナが、バラク号の到着を告げた。何所にいるのか分からないと言うと、MG2がオープンモニターに、漆黒の機影を映してくれた。
「メインさんの秘話通信コードを受信しました。ナオミさん、チャンネル開いてください」
「チャンネルオープン映像出ます」
ケレス連邦の軍服を着た、艦長のサウロが画面に現われた。サウロは、眼光が鋭そうな人なのに、ニコニコしていた。
「マークさんでしょう。特徴有りますよね。それなら操縦席にいるのがアランさんで、通信の席にいるのがナオミさんですな。艦長のサウロです」
三人はうなずいた。
「マークです。そちらに移って打ち合わせしてよろしいですか」
「仕様が違いすぎですね。宇宙散歩なさいます?相対速度はゼロになりました」
「MG2頼む」
「ヨッシャー」
「船首をそちらに向けます。指向重力子でそちらに向かいます。何所に着地すればいいですか」
「では船尾のマニュアル修理用出入り口に迎えに行きます。こちらも回頭しましょう」
マーク達は、船外用のスーツを着て、宇宙空間を散歩することになった。暗い宇宙空間。マークとアランは、MG2の絶妙な重力タッチで見事バラク号の船尾に着地し、待っていたサウロが、二人の手をとって、艦に引き入れた。そこに無理やりナオミが突っ込んできた。ナオミは、メインを交えて、メインの家に居るスーともおしゃべりしている。そこで、バラク号には、立派な厨房があると聞かされていたからだ。
全員船外用のパイロットスーツのまま、艦橋に入った。漆黒の艦橋は、諜報部の隠密性を感じさせた。サウロは、借りてきた猫のようになっているアラン達を見て、打ち合わせ場所を変えることにした。
「暗くてビックリしました? そうでしょう。そうだ、この艦に似つかわしくないところが有ります。そこで打ち合わせしましょう」
サウロ艦長は、厨房横の食事スペースに案内してくれた。3人は、ヘルメットを持ったまま、そこに向かう。そこは、木の調度品が入っていて家庭的で、宇宙艇だということを忘れさせてくれるようなところだった。
マークにドンとナオミが、ぶつかってきた。厨房が見たいのだ。
「来たな、後にしてくれよ、打ち合わせが先だろ」
「いいじゃない、そんなこと分かってるもん」
ナオミは、スーに、すごいのよと、吹聴されて、バラク号の厨房に興味しんしんだ。
「どうしました、マークさん」
「すいません、ナオミなんでが、後で厨房を見せてもらえませんか。スーさんに自慢されたようなんです」
「ハハッ、ナオミさん、打ち合わせが先ですよ」
「はい」
「では、私がプランを復唱しましょう、変更点が有ったらそのつど、言って下さい」
マークもアランもうなずく。
「バラク号は、クエィザー宇宙港に入港します。私が、魔法特区までお送りしますぞ。着替えは、車の中に有ります。着替えたら、黒のローブを着てください。その格好だと、誰も声を掛けてきません。乗ってきた車は、停車場近くの駐車場に控えています。
メイン様が、クララちゃんの居場所を教えてくれますから、救出してください。そのときに、停車場に車を廻します。この時点で、宇宙港は閉鎖されているでしょう。最悪コモドールが通報していると仮定します。一度、指名手配(テレパス候補仮登録でも)を受けると、クララちゃんは、この星から出られなくなります。そこで、私達は、魔法特区の緊急脱出口に向かいます。そこにスバルが待っていますから。乗船して、逃亡する。よろしいですか」
「クララちゃん救出を手伝ってくれるグリーンはどうなります」
「家に帰ってもらいます。痕跡さえ残さなければ、今の状態を維持できるでしょう。連れて行きたいですか」
「いいえ、このグリーンが、スバルとの通信手段を確立してくれました。使えそうですか」
「メイン様の情報の方が早いでしょうな。宇宙港から滞在先まで尾行しない限り一般の人では、無理でしょうメイムは、機能しているのでしょう」
「はい、機能しています」と、ナオミ。
マークもそう思った。ここは、専門家に任せたほうがいい。
アランも気になる事がある
「サウロ艦長の意見をお聞ききしたいのですが、我々がスバルで逃亡するとき、どのぐらいの戦力が追ってくると思いますか」
「難しい質問です。時間との勝負になるでしょう。クララ・カガヤ救出からスバルに乗るまで、20分掛かるとしましょう。宇宙空間には、10分で出ていただきたい。これが最速でしょう。通報から30分でやってくるのは、近くの宇宙ステーションに詰めているドレッド級(全長300メートル級戦艦)と哨戒訓練中のファイターだけで済みます。ロケット級の巡回艇も加わりますから、D級2、R級1、ファイター12機は覚悟してもらわないといけませんな」
「50分後だとどうですか」
「D5,R3,F24機ですかな」
「ドレット級多くないですか」
「訓練で、半数以上がこの宇域に居るのです。一時間過ぎると宇宙艇(シャトル級)も山のように追ってきますよ。とにかく救出したら車まですぐ連れてくる。これが一番大切なことでしょう」
アランとマークは、現場のイメージをした。
「オレが足止めだな」と、アラン
「ああ、オレが抱きかかえたらすぐ走るから背中を頼む。任せたぜ、相棒」
二人は、バンと手を合わせた。
「そういうことで、宜しいですかな」
二人を見回すサウロはニコニコし出した。
「では、厨房に案内しましょう」
ナオミは、「やったー」と飛び上がって喜んだ。
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