第36話 スバルへの帰還
出立当日の午前は、総督府に行き、ケエル総督とアイテム探査の最後の打ち合わせをすることになっている。4人は、神殿に通された。今回は、初めから椅子が用意されていた。
「良くいらっしゃいました。今日は、私がこのあいだ言っていた人を紹介します」
ケエル総督の後ろに立っていた白いドレスを着た女性が、ケエル総督の隣に立った。
「ミホです」
それは、失踪した女優のミホだった。しかし、拉致されたにしては、自然だ。洗脳されたにしても、その時間が足りないだろうと思う。ナオミが、話したがっているので、マークは、ケエル総督に許しを請うた。
「ミホさんとお話してもよろしいですか」
「どうぞ」
「地球では、ミホさんが失踪したと大騒ぎです。一部のマスコミは、ここに拉致されたとも報じていました」
ケエル総督は、失礼ですねという顔をした。
「総督、申し訳有りません」
ゴウがホロウする
ケエル総督は、かまわない様だ。
「諜報部の人に声を掛けられたのは、事実です。メインさんでしたかしら、でも、サジタリウスコロニーに来るのを決めたのは、私です。私は、小さい頃から、人の気持ちが分かって、わざとその人が、思うように振舞ってきました。父に対しても母に対してもです。母は、私を女優にしたがりました。その通りの人生を歩んできましたが、メインさんに声をかけられた時に、別の道が開けたんだと思います」
ケエル総督は、ちょっと恥ずかしそうに話した。
「私とミホさんの相性がいいみたいなんです」
「本当ですか」と、ナオミ。
「ミホさんは、今まで出会った人の中で一番はっきり念話が聞こえます」
「そうです、総督の腕を取ると、普通に話しているみたいなんです。他人には思えませんでした」
出たー私が面倒、見やてっている目線
マーク、なんか言った
「私は、もう結婚していますが、それでも、ミホさんとパートナーの道を探ろうと考えています」
「すばらしいと思います」ナオミは、嬉しそうに総督に声を掛けた。
「どうです、アリスさん」
ケエル総督は、アランを見た。アランは、また、神殿でドキドキした。
「ミホさんが言うには、マークさんとアランさんは暖かいものに包まれているそうです」
「あの、自分は?」と、ゴウ。
「ハハ、おざなりに包まれているそうです」
「そうですかー」がっくりするゴウ。
「マークさんは、誰だか分かりませんが、アランさんは、アリスさんでしょう。これは、ネクロのブロックとは違います。姉弟というのもいいじゃあ有りませんか」
また、アランは下を向いたままになってしまった。マークとナオミは、ケエル総督に守られた。
「ミホさんが、アリスさんとお友達になりたいそうです。いいですか、アランさん」
アランは、最初にケエル総督との謁見を許された時と違い、今日はちゃんと返事をした。
「総督のお許しが有れば、ミホさんに私の腕を触っていただきたいのですが、私は、本人ではありませんから」
ちょっとアラン
アランはこの1週間足らずの間に成長していた。
「ミホさん」
「はい、総督」
ミホはアランの許にやってきた。
近くで見るミホは美しく、マークは、神官とはこんな人のことかと思った。
ミホさんのイメージって、神官だよな
わたしも と、ナオミ
ミホは、アランの腕を取った。
それは、魔法時代でいう、神官同士の出会いだった。
「まあ、アリスさんのほうが私よりお姉さんなのに可愛い方なのね」
「見えるんですか?」アランには分からない感覚だ。
「そうではないのですが、何となくです」
本当、懐かしいような気がします
「私のお話し相手になってほしいです、私も勘がいいんですよ。アリスさんのプライベートは、守ります。初めから聞かなければいいんですもの」
よろしくお願いします
「初めてです。姉貴がおとなしいの」
アランは驚いた。
アリスは、初めて自分と対等な魔女と出会った。
「ミホさんやりましたね」
「はい、アリスさんとは、普通に話せそうな気がします」
「アリスさん、ミホさんをよろしくお願いします」
ケエル総督も嬉しそうだ。
「それではミホさん、アランさんの手を離してアリスさんと話してみてください」
ミホは、アランの手を離し、総督のところに帰った。ミホは、アリスと話しをするというより総督の腕に手を置いた。
初めましてアリスです、ケエル総督
「ケエルです」
総督はミホを見た。
ミホは、微笑んだ。
「そうですね。そういうことです」と、ケエル総督は、一人納得した。
ケエル総督は、4人に向き直った。
「石達のレポートですが、アリスさんからミホさんにお話しください。時間があれば、私も聞きますから」
メインは、総督の後ろでうらやましそうな顔をした。しかし、総督のように晩婚にならない道を選ぶと、決めている。この後、従妹のスーと婚約する。
二度目の謁見が終わり、出立の時が迫った。4人は、安くておいしい総督府の食堂では食べないで、ミーシャが待っているクエィザー宇宙港に急いだ。マーガレット皇后とマリア皇太子妃は、公務で来られない。別れは、朝済ませている。
クエィザー宇宙港の個室で食事をする5人。ミーシャは、アランに光の盾を貸してもらい、それを触りながら、ナオミと話した。
「せっかくお友達になれたのに、残念だわ」
「チャンスがあったら、今度は、私の故郷に遊びに来てください。私と、マークの家族を紹介します。私の母とジェシーおばさまは、とっても料理が得意なんですよ」
「ぜひ、行きたいわ」
あの、三人のおじさんたちには、直ぐに会わせられないけど・・
マークは、安請け合いしちゃってとナオミを見ていた。周りにお付の人たちが多い中。ミーシャとナオミは、言葉とは裏腹な目配せもしていた。そこには、メインの婚約者スーも絡んでいる。
出発ロビーに行ってみると、大勢の人が見送りに来ていた。ナオミをめぐっての会議は、本会議以外でもなされており、会議に挙がったそのメンバーを見ようと軍関係者などが見送りにきた。メインは忙しくて、こられなかったが、アイテム屋のマーティンは、ナオミに、何か渡して、熱心に話していた。
ナオミたちを乗せたO3P号と、ゴウのファイヤーバードは、ゆっくりと離陸した。アランたち三人は、宇宙港でゲストコードではなく、個人コードを貰った。今度から、一人でも、ここにくることができる。フリーフリーランス、3人は、一人前の何でも屋になったということだ。4人は、惑星ケレスを出立した。
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