第35話 ケエル総督、メイン、マークの非公式会談

 ケエル総督のレクチャーは、なおも続いた。

「遺跡時代のことを私たちは、魔法時代と呼んでいます。魔法世界は、一度滅んでいます。遺跡アイテムを間違った方向に利用しようとした結果に相違ありません。島宇宙を見なさい。ここには金星の妹星があったのです。今は粉々になって、ただのアステロイドベルトです。私は、ケレス連邦を島宇宙の二の舞にはしたくない」

「遺跡物質は人類社会に蔓延しています。連邦で事故が起きれば、その事故をきっかけに、下手をすると人類自体が滅ぶということもあるということです」と、メイン。


「遺跡のアイテムのうち、オリジナルだけは、別格です。彼らは生きています。大きな太陽系が中性子星まで凝縮され、地球単位の惑星たちが一つの生命となったのです。私は、ブルクハルトさんの仮説に賛同します。ガイア族は、とても純粋な種族です。当時は、生まれたばかりの赤ん坊で、善にも悪にも染まる状態だったと考えます。地球みたいに生命を宿した、すれた惑星は、最初に来た三つの宝石だけでしょう。彼らは、人間の感情に引かれ染まったのです。よい者に惹かれたものはよいものに。欲の深いものに染まったものはそうなった。しかし感情的には、われわれと同じです。人類が、彼らの産みの親だと言ってもいいでしょう。彼らを放っておくことは出来ない。私は共に歩む道を選びました」


「地球のアイテム痕跡調査には、私も同行する気でいました。叔父さんいいでしょう」

「だめです。メインには、もっと大変な仕事をしてもらいます。今日の話をケルビムにしなさい。そうすれば、何をしなければならないか分かるでしょう」

 メインは、何か言おうとしたが、黙ることで、総督に従うことを肯定した。

「さて、クララさんの奪還ですが、大変な時期と重なってしまいました。とても危機的な状態です。今聞いた奪還作戦では、無理です」

「現在、この宇域では、ケレス軍の軍事演習が行われている。ケレス軍の半分の戦力が、集中しているのです」メインが、説明する。

「オレたちは、星間シャトルとは別に、逃走用の宇宙艇をこの惑星7000キロ軌道に待機させています。ドレッド級エンジン2基、超ド級エンジン一基の最速宇宙艇です。宇宙艇の内部には、二重にした重力ダンパー部屋があります。月の子供がいても、8加速Gまで出せます」

「わが国が躍起になって開発している技術ですね。しかし、わが軍の高速艇は、10Gですよ。軍が本気になったら追いつかれます」

「もう一台の宇宙艇が、こちらに向かっています。それに、クララを引き渡すことが出来るまで、逃げとおせれば、12Gまで出せます」

「それでも、きわどいです」

「叔父さん、助けてください」

「当たり前です。しかし、メインがマークさんに肩入れするとは思いませんでした。牧場で喧嘩したそですね」

「マークにではありません、巫女にです。それに、クララ・カガヤとは、バーム評議会のカガヤ評議員関係者だと思います。このことが発覚すると、戦争の道を歩くことになりかねません」メインは諜報部だ。

「そうなのですかマークさん」

「はい、クララは、カガヤ評議員の娘さんです。迎えに来ている宇宙艇に乗っています」

「なんてことです!」

 ケエル総督、メイン、マークの非公式会談は、なおも続いた。メインはこのあとナオミとも話をしている。そのとき、メイムオリジナルのうち光のエンブレムがついたメイム・ベルを差し出した。ナオミは、ベルによろしくと挨拶した。主人を得たベルは、ナオミの思いに呼応してビー玉大の大きさの宝石に形態変化した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る