第38話 救出

 マーク達がいるグリーンの部屋は、狭い。アランは、2段ベッドの上に寝転がり、グリーンは、その下で、スコープ型のモニターをつけて胡坐をかいていた。きれいにした部屋も、たった2日ほどで、脚の踏み場がない状態になった。殆どの原因は、床にいるマークのせいだが、3人とも構わないようだ。廊下には、店屋物の器が、いっぱいある。マークとアランは、外に出られない。近所の店の飯だけは、美味しくて唯一の楽しみだ。ナオミは、スバルで待機。魔法とっく停車場で、車待機のサウロも一度交代してもらい、戻ってきた夕方に、作戦は始まった。

「マーク君、アラン君、変な宇宙艇が入ってきた」

 グリーンが、お菓子を食べていた手を止め真剣に検索に掛かった。

「どんな奴だ」

 二人は、着替えを面倒くさがって、パイロットスーツを着たままだった。黒い魔法使いのローブを着れば、中は見えなかったからだ。

「火星のグラスティアオアシスからだって言うのに、わざわざ、バラスコロニーからエゴラスを経由してる。出た。コモドールの宇宙艇だ」

 マークとアランは、魔法使いのローブをかぶって待機した。


 魔法特区の車止めで、待機していたサウロは、メインから受けた情報で、コモドール一味の車を確認した。相手は4人で明らかに大きくてこれ見よがしなボストンバックを引いていた。まだ夕方で、街中での騒ぎは、起こせない。メインに断り、後をつけた。

 コモドール一味は、裏通りに入り、横道にそれ、更にその裏道に入った。食堂などの厨房が見える裏道に、こげ茶色のドアが在る。そこに入るのを確認したサウロは、自分の居場所を確認しながらメインに連絡を取った。

「サウロは、車で待機してください」

 マーク達に、メインのメイムが鳴り、グリーンが、メインの連絡を聞いた。グリーンが地図で確認する。すぐそばだ。自分たちが、抜ける道だった。

 この連絡と共に、軌道上にいるナオミの鈴もなり、ナオミは、MG2に指示して、すぐ惑星ケレスに向かった。

 鈴は、ケエル総督も持っている。ケエルのテレパシーを暗号のように聞いた子飼いの管制官がすぐに、哨戒網の網に亀裂を作る。その一瞬の隙間をスバルは、抜けて強行着陸した。

 黒いローブで身を隠した二人は、すぐに行動した。

「グリーンは、そこで待ってろ」

「ぼくもいくぞ」

 グリーンは、自前で作った黒の魔法使いのローブを身にまとってマーク達の後を追った。

 しかたない

「アランたのむ」

 アランはうなずいた。グリーンは、アランが守るしかない。


 このときアランが先頭だったら、中の様子を確認するなり体制を整えただろうが、先頭は、床側にいたマークだ。次にグリーン、最後にアランになった。


 こげ茶色のドアを開けると、地下に続く階段になっていた。階段を下りて、中も確かめないで、マークはいきなりドアを開けた。そこは、薄暗い倉庫で、コモドール一味は、久々に大儲けだと話しながら、クララをボストンバックから出し縄をほどいているところだった。クララは、おとなしくしていた。

「何だてめえは」

 マークの目にクララが飛び込んできた。何も考えることはない。不意を突かれて驚いている一番手前にいた奴に殴りかかった。 グリーンは、カガヤ様の許にはせ参じた。そして、クララをかろうじてマークの方に渡すことは出来た。が、クララのロープをほどいていたやつに、しこたま殴られ床に倒れた。

 マークは『でかした』と心の中で、グリーンを誉めた。マークが殴りかかった奴は、瞬殺され、変な倒れ方をして伸びている。マークは、クララを抱きしめた。

「苦しい」

 強く抱きしめすぎ、クララは、ビックリしている。マークは、そんなことに構っていられない。アランとポジションを交代した。


 アランは、マークの後ろから飛び出し、グリーンをボコボコにした奴のあごを蹴り上げた。相手は、口を押さえてもがいている。その、倒れた横腹を踏みけった。勢いあまって肋骨が折れる音がする。一人は、殴りかかってきたので、当て身を腹と首に浴びせ気絶させた。しかしもう一人、主犯格らしい中年のパイロットスーツを着た男は、パワーガンを出した。

 一瞬薄暗い倉庫が光り、パワーガンを持った男の手は、パワーガンごと床に落ちた。アランが、クリスタルソードを発動させたのだ。男は手を押さえてもがいている。

 アランは、パワーガンをけって、グリーンのところに駆け寄り、外れそうになっているローブのフードを整えた。グリーンに肩を貸し、その場から離れて、そのまま、奥に曲がったグリーンの家の前に連れて行ってグリーンを座らせた。

「大丈夫か、良くやったぞ」

「ぼくのことはいい、早くカガヤ様の後を追ってくれ」

 アランはグリーンの肩をポンとたたいて、マークを追った。

 マークの体は、でかい。クララをローブの中にすっぽり入れてしまい、いつもは出さないパワーグラビトンのスピードで歩いていた。

 ドンと、いう感じの歩き方だが、通行人は、あまり驚かず、マークは、普通に車止めまで来ることができた。黒のローブは、異能者にも適用される。通行人には、当たり前のことだからだ。

 アランはアランで、全く音を立てない歩き方をする。猫のような歩き方で、人の間を風のようにすり抜けていく。こちらも異能者だ。

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