第30話 アリスの助け

 読むのが遅い二人が読み終わったので、ナオミが、ゴウに相談する。


「研究所の検証の仕事をした事がありますか」

「ないな、機密文書に当たるから、普通は見ることが出来ないんだ」

「私たちに見せたのは、その仕事の可能性が有るということじゃあないですか」

「そうだ。絶対この仕事を取るぞ、いいな」

 ゴウは、最悪のシナリオを描く男ではない。

 確かに、諜報部の連中は、研究検証なんて出来ないし、ここの連中は、国外に出してもらえない。機密漏えいになるからな。こいつらは、知りすぎている。えげつないこともだ。これを見せたということは、オレ達が自由になる道が狭まったということだ。うまくいくと、相当な特権になるんだが。こいつらの選択しだいで、極端な結果になるな。ここじゃあ打ち合わせも出来んよ、アリス何とかしてくれ。


 ゴウの心の叫びをアリスは聞いていた。資料は、宇宙艇スバルにある。MG2と連絡を取り、解析してもらう。グワンユウに、サイカとスバルのランデブーポイントへ急がせた。


 惑星ケレス上空7000キロメートルを隠密に航行しているスバルのMG2は、通信コンソールに取り付けられたAIニナの手伝いで情報整理をさせられていた。ニナは、学習ポットの全資料が入ったメインコンピューターとなじめないでいる。そこへ、アリスから秘話通信が入ってきた。


「大変なことになったわ。4人とも、魔法研究所に連れていかれたわ。とっても危険な状態よ。最悪ケレスから出られなくなる」

「どういうことです。ニナ優先順位変えぇ」

「魔法研究所は、拉致された魔女候補が監禁されている所よ。ここで、大勢の人が死んでいる。アランたちがいるところは、それより上の階の資料室だけど、ケレスの魔法関係の資料を見せられたのよ。仕事が取れるか、軟禁されるか二つに一つだわ」

「大変!」

 ニナは、事の重大さを一番知っているニーナの個性を持っているAIだ。

「アランから、資料の詳細を受け取ったわ。ニナ、検証してもらえる」

「私は、まだ、メインコンピューターとなじんでいないのです。アリスさんに学習ポットに入ってもらう必要があります」

「分かったわ。ランデブーポイントは、ここよ。MG2おねがい」

 一刻を争う事態となった。


 そのような大変な事態になっていると知らないマーク達は、資料を見終わって総督府の食堂で昼食をとっていた。アリスが、マーク達に事の緊急性を話して動揺させても、周りから、変な目で見られるだけだと判断してアランに言わなかったからだ。

 ここの食堂も安くておいしい。また、ゴウがおごってくれるというので、三人は、喜んだ。


 ゴウは、相当いらいらしていた。

 外で食事なんていえる状態じゃあないんだよ、クソ。期待できるのはナオミだけか

「どうだ、なんか仕事が取れる。いい案でも浮かんだかナオミ」

「土のエンブレムが入り口になると思います。この根っこのような紋様って、結構地球に有りますから」

「そうなのか。例えばどんなだ」

「スバルのライブラリーで検証しないと・・ただ似ているだけでは無理ですよ。資料との突合せが必要です」

「だよな」

 困ったぞ、スバルに戻りたいって事だろ。ケレスが、今、国外に、こいつらを出すわけがない


 グワンユウが、がんばって、惑星ケレス付近まで宇宙船を進めていてくれたのが幸いし。アリスは、スバルに乗艦していた。アリスは、下着のようなパイロットスーツビーナス一枚になって学習ポットに入る。ポットは、羊水で満たされ青く光りだした。

「ニナ、土のエンブレムと合致するものを上げて、この資料関連のだけでいいわ」

「付録の項目も、すべて検索しました。そこから関連するもの1024項目合致」

「そんなにあるの。エンブレムを突合せられる項目だけ年代順にして。新しいものから順に閲覧するわ」

「32項目あります」


 総督府の食堂でお茶を飲みながら、ゴウは、また同じことを聞きそうになる。

「たとえばだ、日本に有るという仮定はどうだ。この資料も言ってるだろ」

「そうですね、霊魂石の話が多いですもんね。でも、2000年以上前の話ばかりですから、石達が必ずしも、日本にとどまっているとは、限らないです。それだと、ここに書かれた内容を付け合せたに過ぎません。結局は、現地に行って見ないと」

「そうさ、現地に行く事が大事だな」

 悪くないが、具体性がないと納得しないぞ、特に軍関係者や開発部なんか、可能性が薄いと機密漏えいのリスクのほうが、大きいとかぬかしやがるからな

 結局、4人は、食堂にずっといた。その後、総督のお呼びがあるまで、4階の総督オフィス客室で待つことになった。ここから更に1時間以上待たされた。ナオミは、マークがうらやましかった。

 マークったら一日中ボーッとしてられるんじゃない。アランも以外だわ、借りてきた猫のまねが出来るのね。でも、ゴウさんは私と一緒ね。ゴウのイライラは、すぐわかる。


 急にアランがナオミに話し掛けてきた。

「えーっと、資料検証の話なんだけど、付録に東南アジアの新興宗教の話が有っただろ。よみがえり教。その地方に仏教が伝来する前に流行った宗教だよ。死んだ人が生き返ったという話さ」

「付録ね。それで」

「そこの紋様が、土のエンブレムと同じなんだ」

「そうなの!!」

「死人がよみがえる話は、相当遠くまで知れ渡ったけど、教祖がいなくなって廃れた宗教さ。死人は、一度よみがえるけど、一時的で、結局ゆっくり死を向かえた。でもチョッとだけ寿命がのびたと、信者がドンドン増えた話」

「面白い、それって、活性石の可能性ってことよね」

「あくまで可能性だよ」

 アリスさんね、嬉しい

「それは、日本の話より新しいんだ。役にたつかな」

「ありがとう。もっと詳しく教えて」

 アランは、アリスの言葉を自分の言葉にしながら話し出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る