第14話 ナオミの能力修行
次の朝早く、アリスは、ジョンを呼んでナオミにアイテムのレクチャーをした。
「これは、スピードリング、ジョンが好きでよく使っているアイテムよ。ジョンはこれでも、ボクサーなのよ」
「ふん、若い者んにゃあ負けん」
スピードリングをつけて、境内でシャドーボクシングを始めた。とても常人のスピードとは思えない。ビデオの早回しを見ているみたいだ。
「これは、テレパシー系アイテムよ。脳から体に、無理やり早く動けって命令させているの。パワーグラビトンじゃないと使えないアイテムね。普通の人だと3日は動けなくなるわよ」
ジョンは、いつまで経ってもシャドーボクシングを止めない。二人は、その間、おしゃべりをして過ごす。
「はー ええ汗かいたわい」
「やっと戻ってきた。次はこれよ。スローリング1st」
「わしゃこれ、きらいじゃ」
「いいからつけて」
ジョンは又、シャドーボクシングを始めた。今度は、スロー再生をしているようだ。
「ボクシングなのに太極拳みたいでしょう」アリスが笑いながら話す。
「これは、時空間アイテムよ。まだ研究されていないの。炎の遺跡から出土したんだけど、なんだかひどい目にあったとかで、ジョンが公開しないのよ。普通の魔女、魔法使いには無理だけど、私たちが使うと相手をジョンみたいにすることが出来るわ。スローリングは、いざというとき身を守ることが出来る。絶対憶えてね」
朝練は、こうして終わった。アリスは出掛け、午前は、宇宙宝石研究家のブルクハルトによる講義になる。ブルクハルトは、遺跡探査の事も詳細に語った。その午後は、夏雲評議会議長によるバーム軍ならびにバーム評議会の組織や活動の講義。講義には、マークとアランも参加した。夜はグラッパ。グラッパでは、非公式に、カガヤとグリーンが会談していた。
翌日から、ジョンやカガヤ達は、コロニーネビラの視察に出かけていなくなった。ブルクハルトは、炎の遺跡のアイテムと一緒に残ってくれて、講義をしてくれたので、まるで学園生活をしているような1週間になった。
一週間が過ぎ。アリスから本格的にアイテムについて学ぶ。ナオミがブルクハルトから貰ったアイテムもアリスは、普通に使って見せた。
「光燐石は、バリヤーになるのよ」
アリスが、光燐石を光らせその上に薄い膜を作ってみせる。
「これは、宇宙船のバリヤーと一緒なんですか?」
「ちょっと違うわ。宇宙船のバリヤーは、これに光燐水をぶつけて作るのよ。光燐水は、消費されて、中性子系の電磁幕を作るの。光燐石は、光燐水の結晶よ。私がやっているのは、光燐石じたいから光燐水の幕を作っているのよ。後は、宇宙船のバリヤーと同じ現象」
「消費されているのなら、そのうち、この光燐石も小さくなるんですか。なんだか全然減ってない気がします」
「そうね、このぐらいの大きさになると、本当は、火星の月1個分ぐらいの質量があるんじゃない。当分減るのを確認するのは無理ね。無限ってわけじゃないけど宇宙船のバリヤー燃料に使っている光燐水も簡単には減らないのよ」
ナオミは、遺跡物質がとても貴重なものだということを学んだ。
次にアリスは、巨大な赤いアイソトープに明かりを灯して見せた。アイソトープは、三角錐の形状をしている。全体が光ってとてもきれいだ。この巨大な光燐石は、ブルクハルトから、キャンプ道具にしなさいと貰ったもの。
「これは初級よ」
そう言い、今度は、三角の先っぽだけを光らせて見せた。
「これだと光に指向性を与えることが出来るでしょう。これが出来たら次は、ほら」
今度は、まぶしく光る。その光は天井を照らした。
「全体を光らせて、これをやると目がつぶれるわよー」
なんだかナオミもやりたくなる。
「次は、応用ね。アイソトープの先っぽに、薄い光燐幕を作るの。これに、アイソトープの光をぶつけると火が灯るのよ。逆に光燐幕をアイソトープにぶつけるとまぶしく光るわ。私たちは直接光らすことが出来るけど、機械だと光燐水を直接ぶつけてアイソトープを光らせるのよ」
「コロニーのライトですね。光源は、こんなにちっちゃかったんだ」
「違うわ、これは、コロニー用の7倍はあるわよ。それから、アイソトープの火は、一万度を超えているの。大きな炎が作れないからといって、気を抜いてはだめ。何でも燃えてしまうから注意して」
ナオミは、1万度といわれてもピンとこない。
「一万度ですか?」
「そうねえ、水素を超高温にするとプラズマ化するでしょう。それをアイソトープの火にぶつけると核融合爆発が起こるのよ。宇宙船や戦艦のエンジンになるってこと」
「すいません、よくわからないですけど、危ないってことですよね」
「いいわ、危ないって認識してくれたから。プラズマエンジンは、ガンゾしか持っていない技術だから、そのうちレクチャーしてもらいなさい。実際は、私が使っているところを見ればいいのよ。鉄とか普段燃えないものに向けないでね。火花が散って危ないわ」
ナオミの頭を冷やさないと、と、思ったアリスは、懐から光燐石のナイフを取り出した。柄の先端にナイフ状の小さな光燐石が付いている。
「これも遺跡アイテムよ。このままでもペーパーナイフとして使えるかしら、見ていて」
アリスのナイフは、刃の部分が光って延びライトサーベルになった。
「綺麗です」
「光刃の部分は、光燐幕を剣の刃のようにイメージしたものよ、光剣の原型ね。机の上の花瓶を切って見せるわ」
アリスも、宮本流剣術道場の娘だ。アランは、若いが、そこの師範である。アリスは、花瓶をスパッと切って見せた。
「キャー」
机まで、半分切ってしまった。
「これ、まずくないですか」
二人は、寺院の和尚に正座させられて絞られた。
夜は、グラッパに行って食事をする。ナオミは、そこで、アウトロー連中と仲良くなった。
アイテムのことを大体理解したと思ったアリスは、翌日ナオミに浮遊石を持たせてみた。ナオミは、うかつに、アイテムを発動させなくなっていた。アイテムに無理やり命令するのではなく、石にお願いするようになった。
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