第12話  アウトローの奮闘

 火星でも、クララの捜索が始められていた。ナオミに協力すると表明したアウトローたちは、現在、コモドールファミリーたちが、クララを連れて火星にいると想定して、捜査した。

 アウトローたちの中で、一番ナオミに加担したがっているのは、ホーガンというビックホーン貨物船団船長だ。資源輸送は、手下に任せても構わないぐらい育てている。ナオミに声をかけたボウイの船長である。それから、ラインという、若手の中で、売り出し中の船長がいる。「仕事はスマートにしなくっちゃいけねえ」と、資源より、貴重品運搬を生業にしている。スマートという割には、女っけの無い船で、ナオミを火星観光に誘ったが、おまえは、船を掃除してから誘えといわれた船長だ。そして、もう一人。グワンユウは、元何でも屋。今は、冒険家の輸送ぐらいしか仕事を引き受けていない。仲間・・嫁を遺跡探検に同行させて失い、失意の中で何年も過ごしている古参だ。ホーガンもそうだが、グワンユウは、アランの両親たちとも親交があった船長だ。


 ホーガン・カタパルトは、ゴウより上で50才。ゴウの先輩にあたる。ホーガンは、大勢のクルーを抱えているので、火星でコモドールファミリーを捕まえて、ナオミにいい顔しようと号令をかけた。ナオミは、ココロに入社しなかった。後見人にアリスがいるが、いわばフリーなわけだ。それも、アリスと変わらない力を秘めている。信用を取り付けて、協力してもらい、何でも屋をやってやる。と、鼻息が荒い。手下は、火星中に散らばった。人数が多い分仕事が速い。ボウイが疲れた顔をしてホーガンに報告した。

「船長無理ですぜ。コモドール一味は、地球と月を行ったり来たりの小物です。火星にコネもねえ」

「馬鹿やろ、弱音を吐くな。ナオミちゃん見ただろ。俺ら全員、中に浮いたんだぜ。何でも屋、やりたくねえのか」

「そりゃあ名誉ってもんです。格が違う」

「だろう。ジョンを見ろ。遺跡を発見して、今じゃ英雄だ。一番目指さんでどうする。ナオミちゃんは、絶対、エナ、ミナ級だ。俺の目に狂いはねえ」

「船長ほれ込みすぎですぜ。ゴウじゃねえが、船長もアリスに振られて、よく落ち込んでいるでしょ」

「うるせえ。今から仲良くしときゃあ、情もうつるってもんだ。ゴタゴタいってねえで、体、動かせ」

「へい!」

 ホーガンは、腕組みして自分の船の艦橋で立ち尽くした。


 ラインは、宇宙艇ライン号1艘しかもっていない。しかし、情報収集能力に自身がある。仲間は、7人と少ないが、みんな良い仕事をする。

「俺は、ナオミちゃんにほれた。ケレスに行くのは仕方ねえが、俺は、無事帰れるようにしてやりてえ」

「船長は、ほれやすいからな」

「女にだまされやすいしよ」

 副長格のホセ・サントスが、久々のヒットだぜと、クルーに話す。

「ナオミちゃんなら、いいんじゃないか。だまされる心配もなさそうだ」

 自分たちの船長なのに、言いたい放題だ。船長は、女にだまされた前歴がある。ライン号は、火星のロケットレース宇宙艇の部で、一位になったすばらしい船なのに、女にだまされて一度は、宇宙艇を売りそうになった。しかし、情と愛嬌がある船長にみんな付いて来ている。そのとき宇宙艇の中はあれて、今は、荒れ放題だ。

 クルーたちは、ケレスの情報収集を始めた。しかし、思った以上に難航する。一般的な情報さえ少ない。

「こりゃあ、ナオミちゃん、やべえかもな」

 ケレスの軍事状況を調べているクルーが、青ざめながら、必死に端末を動かす。

「なにがだ」

「ケレスの戦艦保有予測ですが、分かっただけで、プラネット級(旗艦)が、6艘ありやすぜ」

「また、宇宙戦争でも、しようってんじゃあ無いだろうな」と、別のクルー。

「相手は、遺跡持ってんだ。そんなんで驚いてどうする。ナオミちゃんが無事帰ってくりゃいいんだよ。そこから俺の愛の戦いは、始まる」

 ラインは、肝っ玉が、すわっている。

「ケレスに、ナオミちゃんがテレパス候補だってばれたら、たぶんケレス軍全力できますぜ」

「ま、守るぞ」

「船長、俺ら、もっと強くならんと無理です」

「バカ、気合だ。いいからもっと調べろ」

「ライザ姉さんに頼みやしょう」

「うるさい!」

 ライザとは、ナオミが空中に浮かしたアウトロー10人の中にいた人物。ケレスの情勢に強く、ナオミが来るまで、ライン号のクルーが、ただ一人認めていた女性。ライン船長は、女性が苦手で、ライザもそこから外れる事は無い。しかし、同級生だったライザだけは、たまに乗艦させている。


 グワンユウは、アリスがたまに使う一流のパイロットだ。元戦艦の艦長をしていた経歴を持つ。今日もグラッパで、くすぶっていた。ライザと一緒で、クルーを持たない一匹狼だ。殆ど周りに無関心なグワンユウだが、ナオミの笑顔が頭から離れない。

「何であんなガキ」と、自分で分かっていることをつぶやく。グワンユウは、自分の宇宙艇をセドリック商会に念入りにメンテナンスさせている。そして又、自問する。どうしてそんなことをする。

「おりゃバカだ」と、つぶやく。そして、又、自問だ。シューユンを思い出してしまう仕事を何で止めない。

 グワンユウの相方、つまり嫁は、弱いが魔力を持っていた。遺跡の映像アイテムを見られる数少ない異能者だ。グワンユウは、シューユンを遺跡探査に同行させ、死なせた。自分は、パイロットの腕は一流だが、遺跡は、からっきしだ。だから生き残っている。完全に後方支援だったシューユンを何で、前衛に出した。又、酔えない酒を口にした。

 ナオミには、アリスが付いた「絶対死なせねえ」。それが、アリスにパイロットを指名される自分が出来ることだ。今日は、ジョーたちの息子が会いに来る。カウンターのキンダダがアランに俺を指差しているのが見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る