第4話
疑問点が一つある。役割とはなんぞや。
だいたいこういう系のファンタジーだとスキルがあって、称号があって、そして職業がある。役割というのは聞いたことがない。
料理人と整体師であれば職業じゃないのかと。現世でじいちゃんばあちゃんに料理を振る舞ったから料理人?マッサージしてあげたから整体師?それだけでなるんだったら走るのが日課だったからマラソンランナーとかそういうのになるだろう。第1皆戦闘系のがつくわけがないのだ。喧嘩に明け暮れていた不良高校というわけでもあるまいし。
冒険者ギルドについた。
「おう、ズン、待ってたぞ。早速行こうか。」
ベベロさんにがっちり肩を掴まれ、逃げられない。ガチムチに抱かれるのは勘弁してほしい。
「昨日滅茶苦茶にしたからな。スキル生えてたか?」
「ええ、杖術が生えましたよ。2になってました。」
「それは上々。昨日聞き忘れてたんだが、ズンって役割なんだ?」
「料理人と整体師ですね。」
「えっ、戦闘系じゃないのか!なんだよォ早く行ってくれよ。あんなに厳しくしなかったのに。」
「でも強くなっといて損はないですからね。昨日と同じメニューでもいいですからベベロさんは僕を強くしてくださいね。あと、役割ってなんですか?」
「ん?役割のこと知らないのか?お前子供だって知っているぞ。」
ここで戦闘員召喚のことは言わないほうがいいのかな?だいたいのこういう小説だとごまかすタイプが多いのであえて僕は言ってみるとしよう。
「ええ、常識に疎いのは王城に戦闘員召喚で呼ばれたからです。僕は戦闘系じゃなかったのでいらないからぽいって野に放たれたんですけどね。」
「え、英雄召喚されたのは本当だったのか!ってことはお前、英雄の1人か!確かに髪の毛黒いしな。うん、納得できなくもない。」
「英雄って?」
「ああ、ずっと前の人間対人間の戦争が起きる前の種族間戦争だな、そこでこの国の王は英雄を召喚したんだ。まあ、戦いに帰ってきた英雄たちは褒め称えられるも敵の残党による不意打ちで死んでしまったみたいだがな。まあ、料理人じゃ英雄としても締まらないもんな。」
そうだったのか。英雄としてあいつらは扱われるのか。帰ってきてから残党に殺されたっていうのは多分用済みだから国に消されたんだろうな。かわいそうに。その分野に放たれた僕はあまり関係ないかもしれない。英雄に料理人が居たら他の代表に笑われるもんな。召喚時にいたことはおおっぴらにならないだろう。殺されたら他のクラスメイトに反感買うかもしれないってことで生かしているのかもしれない。
あれ、風向きが変わってきたぞ。もしかしたら「お前は英雄の恥だ!だから死ね!」ってくるか?いや、ありえなくはないぞ。返り討ちは無理だろうから逃げられる強さは持っておきたい。ベベロさんは役割について語り始めた。
「ああ、役割の話だったな。役割は習得するスキルの方向性を示しているんだ。だが杖術を身につけられたって不思議に思っているだろう。一般スキルは皆それなりに習得できるんだ。でも特殊スキルっていうのがあってな、それは役割に関するものしか習得できない。だからズンは戦闘系の特殊スキルは習得できないな。」
「そうですか…。」
ちょっと落ち込む。城の兵士やクラスメイトたちは強い特殊スキルを得て無双でもするんだろうな。異世界の醍醐味だもの。僕は宿屋の端っこでじゃがいもの皮を剥いているのがお似合いなのだろうか。
「まあそう落ち込むな。ここからが本題だ。俺はランキング6位って言ったろ?一定以上に強くなる方法があるんだよ。ちょっと耳をこっちに寄せろ。」
そう言われてズンはベベロの口元に耳を寄せる。
「ここだけの話、俺の役割は槍使いと清掃員なんだよ。」
「えええええ!!」
これは驚いた。
槍使いは分かる。彼は世界で6位になるほどの槍の名手だ、そうでなきゃおかしい。だがもう一つの清掃員が気になる。
「槍で突くと穂先が汚れるだろう?そこで清掃員のスキル、クリーンを発動させて槍の鋭さを保っている。デッキブラシで地面をこする動きを利用して下段突きの威力を上げている。つまり戦闘系じゃなくても戦闘に利用することができるんだよ。」
「なるほど。」
みみを口元から離す。ツバかちょっとついていたので拭った。
「最後に、役割にあったものであれば自らスキルを作ることができる。これがオリジナルスキルだ。だいたいの戦闘系は師匠から習った技だけで満足しているからこれの存在を知らない。上位のランカーしか知らない事実だ。」
「え、スキルって作れるんですか?」
「ああ、イメージさえしっかり固まっていればだいたいのことはできる。だが最初に言ったように『役割に合ったものだけ』だ。」
なるほど、役割に合ったものならいくらでもスキルを作れるのか。いいこと聞いたぞ。今、1つ思いついたぞ。
「よしじゃあ今日も特訓だ!」
「よろしくお願いします!」
今日の僕は一味違う。オリジナルスキルスキルの話を聞いてしまったからな。
杖術で急所を突くんだ。急所はツボ。整体師の役割でツボをわかりやすくするスキル発動!
ベベロさんの急所が全て光った。攻撃してくるベベロさんの動きを見て、隙が全くないが頑張って突く。
「お!ようやく弱点を攻撃できたか。突きの武器は弱点を的確に攻撃することで輝くからな、突くのは急所ってのは覚えとけ。」
お褒めの言葉を授かった。だが僕は息が切れていて返事ができない。そしてすぐ再開する。
相変わらず隙がない。
「オラオラ、どうした!さっきの突きを出してみろよ!」
相手の邪魔をするスキルうーん、うーん。
整体師の路線で考えてもいいのが思い浮かばない。
うーん、うーん。
あっ!あれだ!完全にお邪魔ができるあれを呼ぼう!料理人だったら呼べるはずだ!
「召喚!カ・ミヌーマ!」
ちゃららちゃっちゃちゃ、ちゃららちゃっちゃちゃちゃららちゃちゃーちゃちゃんちゃんちゃ
「はい今日も始まりましたカ・ミヌーマのチャッティングクッキング!」
大阪のおしゃべりなおばちゃんお笑い芸人がベベロさんの横に現れる。
「な、なんだよこのおばちゃん!」
「今日はですね、秋の味覚でございますよ見てくださいこの松茸。大ぶりで美味しそうでしょ、香りもばっちりですよ。」
うるさそうなおばちゃんが横に現れ、ベベロさんに隙ができる。その瞬間を見逃さず、光っている急所に杖を叩き込む。
「グフォッ!やるなぁ。」
おばちゃんは消える。
「なんだこれは。料理人と整体師でもこんなのオリジナルスキルでできそうにないが。」
「ああ、そのおばちゃんは僕の世界で料理のレシピを紹介する舞台?で料理人の相手をするコメディアンなんですよ。相手に隙ができるといいなぁと思って期待を込めてオリジナルスキルとして呼んだんですけどね、まさかここまでうまく行けるとは思いませんでしたよ。」
召喚スキルカ・ミヌーマは成功したようだ。
その後何度かベベロさんと戦ったがカ・ミヌーマには慣れなかったようで、実力がつかないからと禁止されてしまった。残念である。
出す時間については最初の挨拶ぐらいしか出せないが、インパクトがデカすぎる見た目と声なのでまあ、妨害にはちょうどいいだろう。これは対人戦の実戦で使えることが判明した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます