第2話

さあたどり着きました武器屋。

一度秋葉原にある武装商店という擬似武器屋のようなレプリカが置いてある店には行ったことがある。ああいう雰囲気なのだろうか。少し緊張しつつドアを開け中に入った。もちろん日本じゃないのでいらっしゃい等という声はない。

剣は無理だな、使える気がしない。使ったことがあるとしたら杖だろうか。ずっとこっちを見ているヒゲもじゃの爺さんに聞いてみる。


「すみません、ここって杖置いてないですか?」

「魔導杖が欲しいんなら魔法屋に行きな。」

「いえ、魔法に使うものじゃなくて。なんていうのかな、棍?ポール?棒?とにかく金属製の丸棒が欲しいんです。ありますか?」

「なるほど、君は杖術を使うのかい。でもうちにはないね。みんな剣を使おうとするからだいたいの武器屋は剣を置いているからね。」

「そうですか………」


やはりぶん殴る杖は特殊武器のようだ。メイスでは僕望む戦闘スタイルは築けない。こうなったら自分で作るか?武器屋でナイフを3本手に入れて店を出る。木材屋の場所は武器屋の店主に効いたのでバッチリだ。冒険者ギルドに先に行こうかとも考えたが、武器も持たない男がやってくると起こる出来事を推測するとロクなことがないと考えたのでまずは武器調達である。


「すみませーん、武器屋の店主に聞いてきたんですけど誰かいますかー。」

「はいはーい。ちょっと待っててください。」


木工場の奥にある資材置き場からガタイのいいおじさんが出てきた。


「なんだい少年、うちにはなんのようだい?」

「武器屋に欲しい武器が置いてなかったんで自分で作ろうと思いましてね、木工場に行ったら木材の端材があるからもらえるかもしれないと武器屋から聞いたのでここにきた次第です。オーク木の端材ってあります?僕の身長の半分ぐらいの。」

「そんな大きいとなるとね、最小の木材を買取ってもらうことになるけれどもそれでもいいのかい?」

「値段次第ですね。加工はこっちでやりますのでその分はいいです。」

「んじゃ5000でどう?」


結構高値だったが、武器に使えるいい材質のものを譲ってもらった。ついでに工具を貸してもらえるとのことだったので木工場の施設を借りてね杖を作った。掃除道具のような太さの棒は手によく馴染む。使いこなせないわけがない。我ながらいい武器を作ったものだ。安く武器を手に入れられたのでお金は大きく余っている。とりあえずはこれから冒険者ギルドに行こう。冒険者ギルド内はがらんとしている。お昼時だからだろうか。サンドウィッチを食べている受付のお姉さんに声をかける。


「あの、ここで登録したいのですが。」

「ひゃっ、ひゃい。」


食べ終わったのを見計らって声をかけたつもりだったのだが、どうやらまだ口の中に残っているようだ。悪いことしたなぁ。落ち着いてくださいと伝えて奥から水を持ってきてもらいしばらく待つ。ああ、受付台に食べかすが散らかっちゃってるよ。


「本当に申し訳ございませんでした!ご用件はなんでしょうか。」

「ああ、こちらで登録したいのですが。」

「わかりました、登録ですね!」


彼女は登録用紙を取り出して受付台の上に置こうとする。食べかすに気づいていないのだろうか。さっと手を払って塵を床に落とす。サービスが悪いがきっと日本がよすぎただけなのだと割り切ろうと頑張る。

登録用紙には名前と年齢、特技を書く欄のみと、あっさりしたものだった。果たしてこれだけで身分証になってくれるのだろうか。


「はいこちらですね。三ヶ月に依頼を受けないと登録解除されてしまうのでご注意ください。あと、なくしたら再発行するので早めに来てくださいね。ギルドの仕組みはお教えしましょうか?」

「宜しくお願いします。」


冒険者ギルドは開拓時代の名残で残っており、国が疲弊した今はあまり冒険しないとのこと。傭兵を中心とした人材派遣会社みたいなものらしい。

もちろんお決まりのランク制度があり、ランクを上げれば上げるほど高難易度高収入の依頼を受けられるようになるとか。ランクはギルドとの信頼、貢献度によって変わるらしい。お金を寄付しても上がるというのだから正直強さの指標にはなりえないとのこと。強さ番付みたいなのが非公式的にあるみたいだ。そっちは結構気になる。


「だいたいわかりました?」

「ええまあ。初心者用の訓練を付けてくれる人とかいませんかね?」

「うちに入ることにはいるんですか…」


なんか濁すような言い方だな。不都合だったりあまり良くなかったりするのだろうか。


「おうなんだ?新入りか?」


お、これはお決まりの新人いびりだろうか。大柄な男がやってくる。


「はい、今日登録しました泰然っていいます。言いにくかったらズンでいいです。」

「へえ、ズンか。おれはベベロだ、よろしくな。」


ごつごつの手を前に差し出してくる。一瞬疑ってしまい身構えたが、握手を求めているだけだった。俺の考えすぎだったようだ。


「ベベロさん、その人修行をつけて欲しいって言ってるんですよ。ベベロさん教えるのやりたいって言ってたじゃないですか。『近頃は皆英雄に憧れて剣ばっか使いおる。槍こそ至高の武器なのに。』って口癖のように言ってましたよね?その人も長い獲物使うみたいなんでどうですか?」

「そうなのか、それじゃあズンはおれの弟子一号だな。」

「え、勝手に決めないでくださいよ。」


話の流れがトントン進みすぎて周りのペースに流されてしまっている。


「でもベベロさんは戦闘ランカーの人ですよ。確か今……」

「6位だ。」


微妙だな、なんか微妙な順位だ。


「あ、おめえ微妙な顔しやがって!確かに1位じゃねえのかよって思うのは悪くないけど全世界で6位なんだからな!強いんだぞ!」


半泣きで言われてもね…。でも世界で6位となるとマジで強いんだろう。受けて損はしないんじゃなかろうか。ここはお願いしよう。


「ぜひお願いします。よろしくお願いします。」

「ああ、こちらこそ宜しく。」


異世界に来て新たな武道の師匠ができました。

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