第8話 囲空の下

分厚い雲に覆われた空の下

金の髪は長くその間には青い角がまばらに生えた薄着の女性が歩いていた


裸足でも足音が響くこの大理石の宮殿は人が住むに少し寒すぎじゃないのか

まるでこの帝国本来の気候に、寒冷地の気候に合わない

そんなことを考えながらひたすらに気の遠くなるような廊下を歩き続けた

目指す場所は空の塔。

空を囲い気候をコントロールできるようにしたこの街に、一つ冷たい雨でも降らせてやろうかと皮肉にも思っている矢先に事は起こるもの。

「……様!」

侍女に呼ばれ振り返れば、失礼しましたと膝をおる。

彼女は私を恐れている。

人ではないものを恐れるのは当然

それも私のような者は特に

国1つ簡単に動かせてしまうような地位を与えられ、国を簡単に壊してしまうような天変地異を起こす力を持つ者なのだから

「サリエル様、本日は天候を雨に…」

「やっぱり行かない。私はご機嫌をとるようなことはしないの」

そう伝えて?

この言葉で侍女が震え、ですがと反しようとしたのを力で止める

人の精神というのはとても脆く操りやすい

ライダーもこれくらい楽に操れたなら

そう思うのを間違っているという自分が確かにいるのだが、追いやった

私はこの国のあり方を変えねばならない

どんなに非道でも。

一時的なものではなくて、全てを覆さなければならない

それができなければ私が彼から離れた意味がなくなってしまう


私の原動力は彼

そう。今はブランクと名乗っているその彼。

彼と出会った頃が霞に消えることが無いのが悔しく愛おしい


「サリエル!」

こんな思考に入る邪魔に今度は誰!思わず怒鳴ろうとしたが、見覚えのある金髪を乱れさせて甘ちゃんが走ってくる

「あら、エヴァンの坊やじゃない。まだ生きてたの?」

「!」

エヴァンが感情的なのはよくわかってる

面白いんだから弄られて仕方ないんじゃないかしら?って思えるくらいには

「サリエル、あいつをどこにやったんだ!」

空色の美しい瞳が怒りを映している。

そんなところがとってもおもしろい。

「あら、聞きに来るまでに随分時間が空いたわね」

もちろん彼が何故聞きに来れなかったのかは知っている

私が拒否したのだ

エヴァンが彼を見つけたら追うから

その時が来るまでは来られないように

そしてつい昨日、面会の許可を出した。

彼を動かせるのは彼だけになってしまった

会わせざる負えなくなったのだ


「エヴァン。あなたは出来るわよね?」

エヴァンには私の望みも全てを教えよう

彼に直接教えてしまったらまたきっと彼はあの頃に戻ってしまう


私の額が光り出すと同時に彼が膝をつく

彼の額と私の額が付き、そして見えている彼の場所を教えた

「ここに彼はいるわ。あとは私が望むように彼をあなたが動かせばいい。きっとうまくいくから」

世界が求めていることをなせるように

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