第7話 空から来訪

ずっと続く空を一頭と青年が異様な速さで進んでいた

帝都から出立したのは3刻ほど前


「エドアルド!もっと速度を上げろ!」

これだけの大地の力を消費しておきながら、上がらぬ速度に舌打ちをする

金色の鱗が少しうねり、低い咆哮が響く

「エヴァン様これ以上は維持できません」

ドラゴンの癖に泣き言を

乱れた自らの金色の髪が顔に鞭打つのさえ気にならいのだ

急がねばならない。

「お前の限界を見せて見ろ!」

躊躇いか、一度大きく羽ばたき、首をもたげる

けれど、俺はそれを許さない

首下の手綱を強く引き上げ、命じる

「行け!」

エドアルドの逆立つ鱗が閉じ、俺を集めた力が瞬時に消費されるのがわかる

途端に手足が震えだす

声をだそうにも全身が言うことをきかない

幸いベルトを取り付けているから落ちることはないが、このままではエドアルドの背の上で息絶えることになりかねない

これが人間の限界。

あいつの声が笑う。

『ドラゴンはライダーを知っている』

あいつの口癖だ

彼女を失ってから言うようになった。

そして出る前にも、今度は彼女にそう言われた。

あの憎たらしい笑顔と共に

心で舌打ちをして、すぐさま力の供給を断つ。

手に握った魔術文字を捨てた

光の粉となって細く消えたそれを急激に薄れる意識の中見送ると

突然腰が浮遊感に襲われた

金色の鱗が顔にあたり、意識が少しだけ戻る

目的の村がすぐ目の前で回転していて

それから強い衝撃が内臓を打った

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