第3話 それから
金色の頭を垂らした穀類の中で、僕はおばさんの手伝いをしていた
そろそろ慣れてきたもんで、今年の収穫作業も終盤が見えて来たのがわかる
「あんたらがここに来た時にゃ驚いたもんだべさ」
もう懐かしと思えるくらい
あの星の綺麗な夜から実に3年
3年だから懐かしさを感じるんだろうか
それとも3年であそこの思い出を消し去りたいからなのだろうか
過去の奥の奥の遠い昔にしたいのだろうか
「お前さん、真っ暗闇に黒いのに乗って空からおりてさあ、音で起きてみりゃ村に住まわせてくれぇっていうじゃねえか」
「グレイスニルにみんな驚いてたね」
「そりゃぁ、あんなでっけぇのは主様ぐれえしか知らねぇからな」
「この辺じゃ彼が1番大きいもんね」
鹿のようなそんな生き物。
それをここの村では主様とよんでいた
「しっかし、助かっとるべなぁ。おもったいもん運ぶ時に牛やら馬じゃ何回もやって半日かかっとこ、お前さんらはひとっ飛びだろ?」
「まあね」
若い者も少なく、街からも遠い田舎村
僕は竜騎士団もあまり来ないここにこれてラッキーだったし、彼らにとってもラッキーだったってことだ
「そぉれ、明日で終わるべ」
束にしたのを並べて、それから僕は掌のルーンを空にかざし、彼を呼んだ
「グレイスニル」
しばらくすると
ゴオッと強い風が吹き、夕日を喰らうねっとりとした黒が空を駆けてくる
僕らの頭上で1度旋回し、大きく羽を広げる
見えない空気のクッションを抱くように羽の膜が膨らむと、首から肩にかけて筋肉が張って鱗が凪いだ
見るからに重さのある巨体が見た目に反し、しなやかに降りてくるその動作1つ1つは彼を表していた
「また見とれていたのか?我がライダーよ」
「そりゃね」
鼻先を撫でる
「それも悪くはないが」
僕を軽く鼻先で押し、はやく積むように促す彼。
随分ここの生活が気に入っているのが伝わる
さて
「今日は飲んでから帰ろうか」
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