〈2〉占われた一日・昼 1
目を開けると、カーテンの隙間が眩く輝いていた。
(いい天気――)
一度ぎゅっと目を閉じて、うぅん、と両手を伸ばす。
背中や肩が凝り固まっていて痛い。間違いなく、変な体勢で寝ていたせいだ。
再び目を開けると、スリープしたパソコンの画面が明るさを取り戻し、見知らぬ誰かの華やかな笑顔を大量に映し出した。「結婚式 二次会 服 写真」で画像検索した結果だ。
その脇には、積まれたファッション雑誌やら冠婚葬祭の本が目に入る。
(いつの間に寝ちゃってたんだろ……)
ぺたぺたと床を手探りし、テレビのリモコンを拾って電源を押す。
いつもの習慣でチャンネルをあわせると、旅番組のゆったりとしたテーマ曲が流れ出した。
今日は土曜日。いつものニュース番組は、やっていない。
……土曜日?
「あっ! 今何時!?」
壁掛けのシンプルな時計は、ちょうど10時を示している。
貴重な時間、寝過ごしてしまった。
悲鳴じみた声を上げて雑誌を手に取りかけ、ユズキはふと眉根を寄せた。
(もう何度も何度も何度も何度も見たよね、これ)
見ていても仕方ない。服は沸いて出てこないのだ。
(……とにかく出かけよう!)
店が閉まるのは大体が午後8時。
それまでに何としてでもドレスを買わなければ、もっと困った状況に陥るのは自分だ。
朝食などはなから頭になく、ユズキは慌てて着替え、バッグに財布と携帯を放り込んで飛び出した。
鍵をかけようと玄関のドアに手をかけてふと頭をよぎったのは――昨夜の奇妙な占い師と、希望のカード。
(ラッキーカラー、だっけ? あれは夢じゃないよね……?)
一度部屋に戻り、パソコンの前に開いたままの白いカードを手に取る。
いぶし銀。
今日のラッキーカラー、いぶし銀。
間違いなく、そこにはそう書いてある。これが何かの役に立つだろうか?
(決断力のなさ、自分でわかってるでしょ!? どんなものでも、役に立たないはずないよ!)
頭の中にミサコの声を思い出しながら、自分を叱りつける。
こんなものに縋るなんて情けないとも思う。
だが、誰かに決めてもらえたら、せめて決めるための何かヒントがもらえれば……と脳内の自分が俯いている。
とにかく何にでも縋ってドレスが決まるなら、今日はそれでいいのだ。
カードを封筒に押し込んでコートのポケットに入れ、上から御守りを握るのにも似た心境で手を当てると、ユズキは再び家を出た。
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