第38話 茶会
鉄之助は京都の茶室で向きあっていた。
「本日はお越しくださり痛み入ります」
鉄之助が頭を下げると、坂本龍女は正客の位置に座ったまま浅くお辞儀をした。
鉄之助は亭主ではないが、末席に座り
次客には、美星が正座している
亭主は、鉄之助が選び、表千家の手前が出来る者を選んで金を積んでもらっていた。
「今回は、ご相談がありましてね」
鉄之助は目線をしたに向けたまま話だし、そのまま本題へとはいった。
薩長同盟の締結にむけて、坂本率いる亀山社中と交渉することが今回の茶会の目的である。
一方で、グラバー商会を購入先から減らすようにも動き、雪代屋経由で購入をほのめかす狙いもあった。
「どうぞお楽に」
亭主の女性から声がかかる。次に正客向けの一杯目の薄茶が振る舞われた。
「お加減はいかがでしょうか?」
「大変結構じゃき」
龍女は答えた。
(男と一緒の席じゃ。心なしか香に混じって、いい匂いがする……はぁはぁ……)
龍女は、一服を楽しんでいたが、同時に茶室に男と一緒にいられる高揚感に酔っていた。
「坂本さま。グラバーさまとお取引されているようですね。グラバーさまは女性ですか?」
龍女の興奮に反し、鉄之助の静かな聴き込み調査が始まろうとしていた。
2
「グラバーは男じゃぁ。廻りには護衛がおった」
龍女は濃茶が出される間、うつむきながら答える。
「なぜに、そがいな事を気にしておるがや?」
龍女の問いに鉄之助は、答えた。
「グラバーさまは有名ですので」
(商売敵ゆうことか)
龍女もそこら辺までは分かった。
やがて、
「お一方さまでございます」
と、濃茶が出された。
半藤が、茶を炉の横に置かれた濃茶を正客、龍女の前へと運んだ。
ここから、回しのみが始まろうとしていた。
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