第34話 閑話その2 大好締めとマッサージ
大好締めとは。
正面から相手に抱きつき、相手の腰周りを両足または、両腕で押さえ込みロックする体勢のことである。
現代で言う「ダイシュキ・ホールド」である。
これは、土方歳三が浪士隊を名乗っていたころ鉄之助が偶然になった形でもあった。
「こうですか?」
ぎゅう
「あはぁ~♥️……いい!もっと、もっと強く頼むよぉ~」
ぎゅぎゅ
「アハァ~~♥️」
鉄之助は、お珠に呼ばれて、出会い茶屋の一室で抱き合っていた。
(ハグでいいのか……もうチョッと過激な要求をされると思ってたんだけど……)
例えば、体を触らせろ!! 揉ませろ!! 舐めさせろ!!犯させろ!! などである。
鉄之助はもとの世界では、ハグは日常だった。
海外の友人などとはハグなどあたりまえに行っていたのだ。
今さら恥ずかしがることもない。
しかし、男が希少なこの世界の、お珠にとっては、快楽の真っ只中。
ドーパミン、オキシトシンが多量に分泌され「アヘる」寸前の状態になった。
(たまんねぇ!こいつは……腰が勝手にうごいちまう…!)
お珠の腰が少し上下して自分で擦りつけているようにみえた。
「はぁ…はぁ……鉄さん。もう立ってラレねぇ……ちょいと座らせてもらうよ」
座ると、股が濡れているのがわかる。
というか襦袢がうっすら湿るほどに汗が全身から出ていた。
「次はどうするんでしたっけ?」
鉄は問いかける。
「か……」
「か……?」
「かかか……肩でも揉んで貰うかねぇ!」
一瞬、間が空く。
(やべぇなぁ、攻めすぎちまったかね……)
お珠は不安になった。
男に奉仕させようというのだ。
男が嫌がって退いてしまう場合も考えられる行為だった。が
「……肩もみ…うーん。まぁお珠さんがそれでいいなら」
「良いのかい?!」
(いやぁっったぁぁぁ!)
お珠の顔が嬉しさでいっぱいになった。
「強さはどのくらいにしましょうか」
「鉄さんに任せる、好きにやってくんな!」
2
「好きに……ですか?」
「応よ」
「じゃあ、うつぶせで寝てください。肩甲骨マッサージもしますんで」
「マッサージ?え?ああ…」
(マッサージ?ってのは良くわからねぇが……好きにやってくれといったんだ。是非もねぇや)
鉄は、うつぶせになったお珠の横に座り
「失礼しますね~」
背中を触ってまずは首のツボを押す。と
「ンンっ」
お珠が変な声をあげ始めた。
(マッサージ?ってのは按摩のことかい……でもよこいつぁ、周りの女には口が割けてもいえねぇなぁ♥️)
「痛くても我慢ですよ~えい」
「ンンっンンっ~~」
ごりっと首筋が凝っているのがわかる。
(ここね)
グリグリ……
親指を使って首筋を押す。普通のマッサージであった。が。
「んひぃ~♥️いいぃ~! ……ンンっ!」
お珠にとっては、快感攻めとなりイキまくりの状態になり、弛緩と緊張を繰り返した。
(駄目だ…イキ過ぎて…意識が遠く……本当にあの世にイッチ……マ……ゥ)
しばらくして、
「さてこれで終わりですよ」
ポンポンと肩をさわると、白目を剥いて気絶しているお珠がいた。
3
「大丈夫ですか?」
「ああ…」
茶屋からでて、お珠は項垂れていた。
(気持ち良すぎて、記憶がねぇ……一生の不覚だぜ)
この世界で女は、二つの種類にわけられる。
一つ、いかがわしい行為を成功させる者。
二つ、いかがわしい行為をしても失敗に終わる者だ。
(すげぇ気持ちよかったんだが……途中で記憶がない!ナンテェこった……これじゃぁ思いだし自慰ができねぇじゃねぇか!)
この世界において、女子が家に帰ってすることがある。
「思いだし自慰」
と呼ばれている行為だ。
しかし、途中で意識が飛んでしまったら思い出せない。
フィニッシュの所が無い訳で、つまり、さいごまでいけないということである。
自慰のネタとしては、不完全であった。
(ナンテコッタ……いいネタなのによ!)
後の楽しみが完全な形で思い出せないのでは目的の七割程しか遂行できていないのと同じである。
「うう……ひっく……」
「なに泣いてるんですか。」
最低な理由だが、お珠は悔しくて仕方なかった。そして、隣でお珠が泣いている理由は後々知れることになるのだが、最低の理由で鉄のこの世界の女に対する警戒度が上がることになり、それが原因で、鉄之助の対応が冷たくなる事件が起きるのだが。
それはまた別のお話である。
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