第33話 薩摩女子(ボッケモン)から逃げよう
「Go to Choshu via Satsuma to Sales 薩摩経由で長州に売り込みに行きます」
「 Ha?What are you talking about? はぁ?なにを言っとるんだ?」
3日後、鉄之助はパーカーに提案を行った。
真っ先にパーカーから帰ってきたのは疑問だ。
「 I have an acquaintance in Satsuma called Okubo. I think I'll carry the signboard of Yukishiroya there and negotiate. 薩摩に大久保という知りあいがいます。そこに雪代屋の看板を背負って交渉して来ようかと思います」
「How do you sell to Choshu via Satsuma? 薩摩経由で長州にどうやって売り込むのかね?」
「I'd like to hear rumors from Kyoto. You should know that it is a good performance to actually use. And this time, we will temporarily giv a 20% discount (京都に噂を流してもらおうかと。実際に使えばいい性能だと言うことは知れるはずです。そして今回は、一時的に20%の値引きをします)」
「 discount? (値引きだと?)」
パーカーは少し苛ついているように聞き返した。
一時的に値引きをすることでまずはつかってもらう。通販などで良く使われる手法である。
「 If rumors of guns flow to the Choshu clan's residence, they will also bite. (そして、銃の噂が長州藩邸に流れれば彼らも食い付きますよ)」
「 What is the chance of success? (うまくいく可能性は?)」
「60% (60%ほどかと)」
「It's low% (低い確率だな)」
「 We are a latecomer. I have to overdo it a little( 私たちは後発組ですからね。多少の無理はしないと)」
「 Bring all the escorts( 護衛を全員つれていきたまえ)」
「 With everyone ... isn't there a lot?( 全員とは…多くないですか?)」
「You have to go to the woman's nest and come back alive ( 女の巣に行って生きて帰って来なくてはいかん)」
「 …is that so. I don't want to die I'll take three people with me( ……そうですね。僕も死にたくありませんし、三人をつれて行きます)」
そういうことになったのである。
翌日。
「薩摩藩邸にいくぅ?」
「何ですか?そのチンピラみたいな顔は」
京都にある薩摩藩邸に行くことをみ星、お珠、ロザリーに伝えたところ三人がチンピラのような脅しをかけてきた。
「なんで?」
「販路を広げる為に」
「おかしいぜ。頭は確かかい? 相手は薩摩女子(ボッケモン) だ。女の中でも一番近づいちゃいけねぇ奴等だぜ」
「大丈夫です。会うのは薩摩藩邸にいる大久保です。話は分かるはずです」
「……ダメだね。話が分かろうがなんだろうが、危険すぎる」
「クレイジー」
「お願いです……今度の休みに出かけてなんか驕りますので」
鉄之助はたのみこんだ。
しばらくたってから、折れる者が出始める。
「仕方あるめぇ。一人一人別に出かけるってんなら、あたしはやる」
最初はお珠が言う。
「me Too(あたしも)」
ロザリーも続く。
そして、
「仕方ないねぇ……その約束忘れねぇでおくれよ」
不承不承、最後にみ星も頷いた。
2
薩摩藩邸は、鉄之助の来訪に少なからず、びっくりしていた。
「男じゃあ。男がおるぅ!」
「何しにきたんじゃぁ……!?」
「護衛付か、一人は異人じゃなかか!?」
「はぁ…はぁ…!!」
京の薩摩藩邸は離れにある個室を見張るように薩摩のぼっけもん(女子)が群れをなしていた。
皆、引き締まった体格で背は170cmはある。アスリート系のカッコいい女子の群れである。
それが5.6人集まりヒソヒソ声で会話がされていた。
「大久保はんになんの用でもっそ?」
「わからん。が、なにか怪しいことあればチェストしていいち命令がでちょる」
「男もでごわすか?」
「無論じゃ。もったいない気もするが仕方ない。藩命じゃい」
チェストとは、ぶち殺せ(意訳)の意味であり、薩摩藩邸の女に臆病者はいない。藩名は絶対。まさしく狂った女の巣。幕末版のアマゾネスである。
「男はキレイな顔しちょったか?」
「わからん。じゃが男は男じゃあ。きっと良い匂いはしよろうが!」
「峰打ちでどうにかならんかの?」
「アホか?あたしらの渾身のチェストば食ろうたら骨がぶちおれてしまいもっそ!」
「左様。首が折れて終いじゃぁ!」
2
「何人います?」
「ざっと、20人はいるぜ」
「弾は?」
「10回装填分はあるわ」
「僕も銃で援護します。弾もありますので言ってくださいね」
個室に4人は座って珍しく正座をしていた。
帯の後ろ、帯枕には普通であれば帯枕があるが、弾倉が帯揚げにくるまれて持ち込まれていた。
「お待たせしもした」
障子越しの声に会わせて女達は身構え、多少ちからが入った。
「どうぞ」
鉄之助が入室を促すと、障子が開いて大久保が単身で入ってきた。
「お久しぶりです」
鉄之助は、正座のまま礼をし、三人もそれに続いた。
「表をあげてたもんせ」
体を起こすと、大久保の姿が見えた。
薄い絹地でできた桃色のきものと、白い織りに金糸の入った帯だった。
「趣味の良いお着物ですね」
「あら、ありがとう。で今日はどういったご用件でごわすか?」
鉄之助のビジネストークに、薩摩訛りで聞き返した大久保。
ギリィ……
歯軋りがお珠、み星、ロザリーから聞こえた。
(うわ……スッゴイ音した)
鉄之助はそうは思ったが、あえてスルーをしておく。
他の女とにこやかに会話するなど三人にとってはブチキレてしまいそうであったからだ。
「本日はご挨拶として参りました。それと、銃を購入されたそうで」
「はて?その様なこと知りませぬが」
「大久保さま。隠さずともよろしいですよ」
「……」
大久保が黙るのを鉄之助は見逃さなかった。
「性能はいかがでした?」
ゆっくりと続ける。
大久保はだまったまま。
鉄之助は先を続けた。
「後込式の銃は珍しかったでしょう?もしかして、その銃はグラバーが扱っていたものより遥かに命中し、飛距離も、貫く力も強かったのではないですか?」
「何が言いたい」
大久保の目付きが鋭くなる。
「何で知っているって顔ですねぇ。いやぁなに、単なる推論と噂話じゃないですか」
「……主ゃ雪代屋の丁稚で来たか?」
「……ええ。ご明察の通りです。そして私どもが一部を雪代屋へ納入しておりますので」
一瞬、鉄之助の顔から笑顔が消えた。
(内情の開示だ。同じ秘密を知ったが…大久保さんはどう返すかな)
「ちょっと、鉄さん?」
びっくりしたのはお珠だ。雪代屋との繋がりをばらしてしまって良いのかと。
「ほう。一部と申したか?」
「ええ。一部です」
「どこからあのような物を手に入れもしたか?」
「それは、申し上げられません。企業秘密ですので」
「ですが…もし、御入り用であれば、雪代屋へ口添えいたしますよ」
(飲めばよし。断れば、長州へ売り付けるまでさ)
ニコぉと営業スマイルを返す。
「要らん」
(へぇ。あっさりしてるね。少し噛みついて見るか)
「あらまぁ。そうですかぁ、まぁ…今回は営業も兼ねての挨拶でしたので帰りますが……本当に良いのですか?」
「何がじゃ」
「ほかのお客様に売ってしまうかも?ですけれど」
(脅しなんて……許せない!)
大久保は刀を抜こうと手を掛けた。が、
「動くんじゃねぇよ」
先にドスの聞いた声でみ星が声を発した。
続いて鉄が
「抜けば撃ちますよ?今あなたには三人から銃口が向いていますのでご注意を」
「やってみる?薩摩藩邸から逃げられる訳がないわ。殺されるのはそっちじゃあ」
しばらく沈黙と意地の張り合いが続いた後、大久保が息をはいた。
「チッ……今日は帰りもせ。二度とその面を見せないことじゃぁ」
そういうと大久保は席をたって出ていってしまった。
3
「しかし、良かったのかい?」
あの後、四人はどうにか薩摩藩邸から出ることができたが、つけられていた。
あとはどうにかして、薩摩女子から逃げなければならない。
「数は5人ですかね?」
「ああ、とりあえず殺っちまうかい?」
5人の女侍が一定の距離を保って歩いている。
「仕方ないですね」
「よし、一旦人気のネェところまで行く。薩摩の阿呆どもに弾ぶちこんでやろうぜ」
「ここならそん男を犯してからチェストばできもす!」
女侍の頭が銃弾をくらって脳を弾けさせた。
「虎子どん!」
「くそがぁ……!」
女侍が刀を抜いて蜻蛉のかまえをとり
「チェ……」
パンっ
奇声をあげて鉄之助に突っ込もうとしたときには額に穴が開いていた。
「鉄さんを犯らせる分けねぇだろが……来いよ。もう一個穴つくってやっから」
「キィぃぃえーーーーい」
薩摩の女侍は臆すること無く鉄之助とその前に入るお珠に突進した。
だが、お珠が打つよりも早く側頭部を左右同時に撃ち抜かれて頭が弾ける。
「ひぃ……っ」
悲鳴を上げたのは鉄之助だった。
「鉄さん目を閉じてな!夢に出るぜ!」
「はいい……」
叫んだのはみ星。
そして、最後に敵に弾を後頭部から当てたのはロザリーだった。
時間は10分足らずで薩摩の女侍は撃ち殺された。
「よし。隠しとけ」
「OK」
後は手早く近くの雑木囃子のなかに隠しておけばいい。
「血痕残すなよ?」
「わかってらい」
彼女らは手早く死体の処理を済ませる。
(慣れてるなぁ)
鉄はその光景を見ながらまるで他人事にように遠巻きに見ているだけであった。
4
「みなさん。お疲れ様でした。今日はもう切り上げましょう。僕が限界でして……」
「あいよ。あたしらも疲れた、交渉事は疲れたろう?」
「まぁ、交渉は慣れてますよ。でも人死に
はまだ馴れません。皆、ソコソコキレイな顔だったのに。もったいない」
「……あんなのどこにでもいる芋女だ。気にしなさんな」
その日はそれきり話をせずにホームへ帰ることになった。
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