敗者のお茶会

「うむ、美味い。この菓子いいな。」


ハーケンクロイツを胸に刻んだスーツ男が鎧姿の侍にそう声をかけている。

男の持つ扇子には、『大一大万大吉』の文字。


「当然だろう。秀吉様から頂いたものだ。」


2人がいるのは森、周りに何故か電車があった。


「なぜここを指定した?ここはあなたの元敵国の領土ではないのか?」


侍がスーツ男に聞く。


スーツ男はフッと笑い

「ある意味忌み嫌う土地であり、一方で栄光の地でもあるな。吾輩の人生によく関わった土地だ。」と返した。


鷹がバサッと空を飛ぶ音が聞こえた。


「それにしてもだ。」

スーツ男が切り出した。


「今日の世界は見てられないな。」

「同感だ。平和などと謳っておるがどこにその面影があるというのだろうな。」


「もし我々が勝者であったなら、どうなっていただろうな。」

「知らぬ。しかし我らが仮に勝者であっても、我らが死に、時代が移れば

いずれこうなるのだろう。」


スーツ男は満足そうに笑った。

「君と吾輩では犠牲にした数が違う。しかし、どことなく似たような者同士だな。」

「ふん。貴様は世界を敵に回したのだ。規模が違う。似ているはずがない。」


鷹が悠々と飛んでいる。


「さて、この先どうなるか予想がつくか?」

「知らぬ。特に興味もない。」

「吾輩にはわかるぞ。いつかまた、戦禍の渦は世界中に広がる。そして近いうちに、もう1人ここに来るものが現れるだろうな。」

侍は何も言わない。スーツ男は続けた。

「勝った方が正義だ。真の『平和』とやらができるまで、見届けてやろうじゃないか。敗者としてな。」

「……ふん、悪趣味な奴だ。もはや勝ち負けなどに興味は無い。俺は秀吉様の元へ帰る。それではな。」






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1分で読める短編集。 虚蟬 @samurai-0711

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