第46話 新たな国王
レミーア神は、太陽の化身だ。
王宮に集まった何百という人間が、空に浮かぶ太陽に祈っていた。あたたかな陽射しは、まるで人々を包み込むように優しく降り注いでいた。
「レミーア神の加護はまだ私たちにある。ブロッキア王国の民よ、この十六年辛く苦しい思いをしてきただろう。もう、王族を信じることなどできないかもしれないが、どうか私を信じて欲しい。そして、私は兄エレデルトのように皆と共に王国を守っていきたい」
地響きが止んだ時、ジェームス・バートロムの声が人々の心に響いた。
穏やかで、優しい時が流れていたエレデルト王の治世を知る者たちは、その言葉に涙を流した。
エレデルトは、国民のために微笑み、国民のために泣き、国民のために怒り、国民のために尽くした立派な王だった。そんなエレデルトの弟であるバートロムもまた、自分の私欲ではなく、領民たちのために動く領主だった。この場に集まった人々は、そんなジェームスに希望を見出した者ばかりだ。本人の口から王国を守るという言葉が出たことで、皆の顔には明るい光が差した。
たとえ女王の味方が大勢いたとしても、もう誰ひとりとして女王を恐れる者はいないだろう。自分たちが王と認めるのは、目の前のジェームス・バートロムただ一人なのだから。
「私に、ついて来てくれるか」
ジェームスの言葉に、全員が頷いた。
その中には、女王を守るはずの騎士も含まれていた。そんな彼ら一人一人の顔を見て、ジェームスは「ありがとう」と頭を下げた。
そして、ジェームスは厳しい顔で騎士たちに命じた。
「シュリーロッド・ローデントを反逆罪で捕縛する」
一〇一五年、三月一日。
公開審議の日に起きた地震の復興が落ち着くと同時に、シュリーロッドの罪と悪政はすべて国民の知るところとなった。
エレデルト国王暗殺に関与した三人の大臣と、首謀者であるシュリーロッドは監獄へ行き、女王の夫であったセドリックも捕縛された。シュリーロッドに権力を奪われていた者たちが復権し、新たな王政に皆が期待を寄せている。
そしてこの日、ブロッキア王国に新たな王が生まれた。
シュリーロッドの治世で苦しんでいた国民たちは、新国王ジェームス・バートロムの誕生を心から祝福した。
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