第7話 疑い、理由
シオンは怯えている様子のミーニャに声をかける。
「君がミーニャだな。君を助けに来たんだ。ここから出よう」
シオンは膝を曲げ、ミーニャ目線を合わせて言う。しかしミーニャはより牢屋の奥へ下がった。不思議な顔をしていシオンに彼女は叫ぶ。
「イヤです!あなたたちはそんな風に言って私をここへ連れてきたんですよ!そう何度も騙されませんっ!」
そういうことか、とシオンは理解──納得した。
「勘違いしているみたいだけど、俺は君をここへ連れてきた連中······トルクファミリーの仲間じゃない。君が攫われている現場を偶然見かけてこの町に来たら、君のお父さんに会ってここへ来たんだ」
シオンは鉄格子の前に座り、真剣な眼差しで語りかる。ミーニャは先ほどより落ち着いた様子で奥の壁にもたれ、一度ため息をついて言った。
「まあ、あなたの『トルクファミリーの仲間じゃない』という言葉は信じます。
今すぐに牢を開けて私を無理矢理ここから出そうとしない事を証拠として。
そして次にあなたはこう言いました。『君のお父さんに会ってここへ来たんだ』と、ならあなたも知っているはずです。私が“父に売られて„ここへ来たということも」
この子は何故このような勘違いをしているんだろう。
この子は父親に売られてなど、ましてや棄てられてなどいない。むしろ強引に引き剥がされたのだ、他ならぬトルクファミリーによって。
「父親に売られた?何の話だ。君がどう思っているか知らないが、今俺がこうしてここに立っている······正確にはしゃがんでいるのは、俺が君の父親に頼まれたわけでも、俺が自発的に行動したわけでも、ただ君の父親に出会ったという事実があるからでもない。そして理由が複数あるわけでもない。理由は一つ。別に難しい理由でもない」
そう言ってシオンは“それ„を取り出す。
「
ミーニャの瞳はシオンの顔ではなく、シオンが取り出した“それ„に向けられている。
「それって······?」
シオンが取り出しミーニャに見せたのはシオンがここへ来る前、ミーニャの父親──ドルスタに渡された黒い短剣だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます