第6話 出撃、出逢い

「娘を······助けに行く?」

「正解」シオンはニッと笑って答える。

「しかしどうやって?奴等はこの町で権力も武力もトップのマフィアだ」

「まあそのへんは、任せとけ」とシオンが言うと、ドルスタ「ちょっと待っててくれ」と店の奥へ入り布に巻かれた物を持ってきてシオンの前で広げて見せた。


見るとそれは、黒く輝く短剣だった。それを受け取り歩き出したシオンは背中を向けて言った。

「ありがとう」

その声にドルスタが振り返った頃にはもう、シオンは


「ここか、デカいな······」

目の前に広がるまるで豪邸のようなトルクファミリーの拠点を見上げ、思わず声をらす。

ついさっき通ってきた商店街はここよりずっと活気に溢れていたのに、今は周囲を見渡しても人の姿がどこにも見当たらない。

 シオンはスタスタと豪邸に近づき、正面にある門から中を覗く。周囲に人そのものがいないのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが門番がいないのはいささか無用心な気がする。

「まあ、楽に潜入出来るからありがたいけどな」

シオンは壁の向こう側にも人がいないことを確認して壁を軽く乗り越え、奥に見える扉へ入っていく。そこには、本来外にいる方が効果的であろう衛兵が二人見えた。

「なんだお前!どこから入ってきた!?」いやいや、ここに入る場所は一つしかないだろう。


 どうしようか数秒間悩んで、行動に移ることにした。

その場に大きく旋風つむじかぜが巻き起こる。──その瞬間、シオンの姿は衛兵の背後に移動した。


「なっ!?お前、いつの間に──」言い終わるより先に衛兵の男は足元に倒れる。

顔を上げるともう一人の衛兵がこちらを睨んでいる。

「こんな事をして、ふごぉ!?」一人目は後ろからトンッと優しく手刀しゅとうで寝かせたが、二人目は俺に警戒して身構えていたため、顔面に蹴りを入れてしまった。

「悪いな。面倒だから押し通る」

倒れた衛兵の間を通り過ぎ、シオンは呟く。そのまま奥へ進んでいくと階段を見つけた。


ミーニャがいるとすればおそらく地下だろう、シオンは直感で階段を下り、奥へと進む。


壁が全て石レンガになったトンネルのような道は、外からの光が遮断され、

暗闇の中を松明たいまつが点々と照らしている。すると途中から右側の壁が格子こうし──すなわち牢屋になっている。中には誰もいないが所々、人がいた形跡があるがそこには頭蓋骨を含め、いくつかの骨が転がっている。


「グスッ、グスッ······」

「······っ!?」

突然聞こえてきた鳴き声に体をビクンッと震わせた。

100メートルくらい先だろうが、声がよく響いてくる。

シオンは足に集中し、力を込める。瞬間、その場の空気の流れが変わり──大きく一歩を踏み出し、一瞬で鳴き声の聞こえる場所へ移動する。


そこには、

牢屋の隅ですすり泣く

オレンジ色の髪の少女──ミーニャの姿があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る