第4話 事情、理解

「······私のせいなんだ。娘が奴等に攫われたのは────私のせいなんだ」

 シオンは一度座り直し、無言で答える。


「私は最近までこの町で鍛冶屋を営んでいてね、これでも有名だったんだよ。剣なんて特に人気でよく売れていた」遠くにある過去の情景を懐かしそうに眺めながら話を続ける。

「そしてその頃から娘は──ミーニャは、トルクファミリーの奴等に狙われていた」

 シオンは「アンタの娘さん、ミーニャっていうんだな」と言うと男はそういえば言っていなかったな、と自己紹介を始める。

「私はドルスタ・ナリスという。そして娘はミーニャ・ナリスだ」そう言ってドルスタはフッと微笑んだが、それもすぐに険しそうな表情に変わる。

「ある日を境にウチの店の周りをガラの悪い連中がウロウロし始めたんだ。数日後、その連中の中の男が2、3人で店へ剣を買いにやって来た。私はその男たちが気になってしばらく様子を見ていると、剣を買って店を出た瞬間、剣を周囲の壁や石畳に向けてぶつけ始めた」

 買ったばかりの剣をなぜ······と思いつつも話の続きを待っていると、ドルスタは近くの壁にもたれ、ため息をつく。


「剣を乱暴にぶつけると、どうなると思う?」

「······折れたり、刃こぼれしたりするんじゃないか」

「そしてそれを店の前で『刃こぼれしたー』や『折れたー』なんて叫ぶとどうなる?」

 そこまで説明されてシオンも察する。

「立派な営業妨害だな······」ドルスタも無言で頷く。


「ただでさえガラの悪い連中がいるせいで客足が減ったのにそんな営業妨害までされると生活がどんどん苦しくなっていった」

過去を振り返っているのだろうか、ドルスタの表情は更に暗くなっていく。


「そんな時──物凄く都合のいい、金貸しが現れた。しかしそれに頼ったことが、娘を危険に晒す状況を作ったんだ」

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