第3話 出会い、初耳
「君は娘のことを知っているのか!?」
目を見開いた男はシオンの肩を掴みグッと力を込める。シオンは驚きながら男の手を振りほどき少し距離をとる。そして周囲の邪魔にならないように近くの店の横にある裏路地に入り、置いてあった木箱に座る。
「娘ってどういう事だ?」
少し落ち着いて男に話しかける。
「君の言っていた“オレンジ色の髪の女の子„とは私の娘のことだ。この町で私と同じオレンジ色の髪をしているのは、私と娘だけだから間違いない」
「何故、この町の衛兵は動かないんだ」
「トルクファミリーのことか、奴等は行動の痕跡を残さない。どんな罪を犯しても、誰がそれを見て、知っていても、証拠がないからどうする事も出来ない」
男の話に少し間をあけて返事をする。
「なるほど、そういうことか。それじゃあ······」
そう言って立ち上がったシオンは肩をコキコキ鳴らしながら言う。
「娘さんを連れ戻しに行くか」
そんなシオンに男はポカンとした顔を向ける。
「アンタの娘さん、なんて名前?」すると男も勢いよく立ち上がった。
「相手はあのトルクファミリーだぞ!この町一番のマフィアにたった1人で行ったって、どうしようもないだろ!」
「ならこのままでいいのか?」唐突なシオンの問いに男はハッとする。
「アンタは何も出来ないからと言って娘を見殺しにするのか?別に死ぬとは限らなくても無事に帰ってこれるとでも思ってんのかよ」
すると男は両手に握った拳を震わせる。
「······私のせいなんだ」
「えっ?」
「娘が奴等に奪われたのは、私のせいなんだ······」
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