第2話 到着、認識

シオンは馬車が向かった方向を地図で確認し、その先にある町“ジンベルグ„に先回りしていた。

 馬車がここへ着くのは大体30分後くらいだろうか。などと考えながら町を歩いていたシオンに周りの噂話が聞こえてきた。


「聞いたか、トルクファミリーの奴等、また新しい女を連れてくるってよ」

「またか、ここんとこ多いな」


声のほうを見ると昼から酒場で酒を飲んでいる二人の男がいた。シオンはその二人の男たちの横に座り尋ねた。

「少しいいか?トルクファミリーについて聞きたいんだが、“また„新しい女を連れてくるってどういう事だ?」

「なんだ坊主、よそ者か?トルクファミリーってのはな今ジンベルグで一番デカいマフィアだ。そこのボスは権力を使ってこの町のいい女を片っ端からテメェの物にしようってんだ。まあ、悪いことは言わねーからトルクの奴等には首突っ込まないほうがいいぜ(笑)」


シオンは他人事のように(実際に他人事だが)大声で笑う男たちに「邪魔して悪かった」と言って町の入り口へ向かった。

案の定、馬車が町へ入ってくるところだった。


 馬車には趣味の悪い金色のドクロの飾りが施してあり、ついさっきまで活気に溢れていた町の喧騒は一瞬にして消えていた。

それにしても、この町の多くがトルクファミリーの悪行を知っているのも関わらず、なぜ衛兵は動かないのだろうと頭に疑問を抱えたまま、シオンはまた別の男に尋ねる。


「すまない、実はさっきオレンジ色の髪をした女の子がトルクファミリーに攫われる現場を見てしまったんだが、町の女の子を攫っておいて、なぜ町の衛兵は動かない?」


すると男はハッとした表情でシオンを見つめている。

そして男は口を開いた。


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