その手は憎悪に塗れて 拾


あの日からみんなと会っていない

皆どうしているのだろうか

僕は傷がすっかり塞がった左眼を触りながらそう思っていた

イツキ「まだ痛むのか?」

眼を触ってるのに気づいたイツキが聞いてくる

柊優「もう全く痛くないよ、ただ蒼やザキさんにあの時は迷惑かけちゃったなって思ってさ。それになんだか傷を触るのが癖になってるみたいでね。」

イツキ「要らない癖が出来たものだな。」

柊優「僕もそう思うよ~あっはは。」

乾いた笑いをイツキに返す


本当にもう痛くはないのだけども

あの時の傷を噛み締めるように中指と人差し指で上から下に

下から上にと無意識になぞる癖が出来てしまったようだ

柊優「左眼がよく使えなくなっただけだからそんなには不便ないんだけどもね。」

イツキ「その傷見る度に2人に申し訳ない想いでいっぱいになるか?」

柊優「その通りなんだよね~、でもこれからもずっと会わないわけにもいかないだろ?お礼もちゃんとしたいしさ。」

イツキ「律儀というか、くそ真面目というか。お前の考えてる事は未だに分からない事があるよ。」

柊優「よく何考えてるか分からないと言われるし、自分が1番何考えてるか分からないからご安心をっ。」

イツキ「…何を安心すればいいんだ。」


柊優「僕もそれは、、答えられないや。」

なんだそれはと言わんばかりに

イツキの大きな尻尾に視界を遮られた

当然足元が見えなくなってコケそうになる


柊優「ちょっ、ちょっと待ってよ!危ないから!しかもくすぐったい!」

僕は笑いながらイツキの尻尾をはらおうとする

イツキ「答えられなかった罰だ。」

そう言いながらヒョイっと自分の背中へ僕を乗せる

柊優「ここはいつでも落ち着くね~。」

イツキ「お前をどれだけ昔からこの背中に乗せてると思ってるんだ。」

柊優「ん~、、どれくらいだろ?」

イツキ「忘れるくらいだろうよ。」

今日はいつもより遅く歩いてくれてる気がした

イツキなりの僕への気配りに思えてなんだか嬉しかった

その事は言わずに僕は空を見上げる


青い空には雲1つなく

大きく深呼吸をすれば心が真っ白になった気がした


街へ近づく度に違うものが

近づいてる事に2人はまだ気づく事はないだろう

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そして貴方は僕になる。 ベルディア @hantoukoukou

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