その手は憎悪に塗れて 伍


柊「は…はっくしょい!」

イツキ「…なんともみっともないクシャミをするなお前は。」

柊「僕だってクシャミしたくてしてるんじゃないしこんなクシャミしかでない…はっくしょん!」

ズビズビと鼻をすする

イツキ「すするんじゃなくて鼻をかめ。」

柊「イツキの毛でかんでいいかな?」

イツキ「かんでもいいが、次の瞬間お前の頭は無くなってると思えよ。」

柊「それなら一生鼻水でなくてそれはそれでいいかもしれない。」

イツキ「極端すぎるな。」

冷たい風に彼岸花がユラユラと揺れる

柊「…ねぇそういえばこの花達なんか増えてない?」

揺れてる彼岸花をみながらイツキへと問いかける

イツキ「一々、いくつあると数えたりするほど俺はそんなに暇人では無いし興味が無い。」

そう言いながら彼岸花へ一息イツキが吹きかけるとたちまち枯れていく

柊「まーたそうやってわざと枯らす!よくないと思うよ幾らまた咲くからって…。」

文句をいいながら柊は枯れた彼岸花へフーっと息を吹きかける

すると瞬く間に彼岸花は元に戻った

イツキ「俺はこの花に嫌われてるな。」

柊「そうやっていじめてるからだと思うよ?」

イツキ「いじめてるつもりはないんだがな。なんせ枯らしたくて枯れる訳では無いからな。」

どこか寂しそうに花を見つめた

柊「仲良ししようって言ってみたら。」

イツキはポカーンとした顔をした

しばらくしてから大きな口を開けて笑う

イツキ「あっはっはっはそうか花に直接交渉というわけか成程な、ふふふ。」

柊「なっ!そんな笑うことじゃないじゃんか!」

柊は顔を真っ赤にして膝を抱えた

イツキ「悪いからかったつもりは無いんだただお前が素直すぎてな、悪い事をしたな。」

申し訳なさそうにイツキが鼻で突いてくる

柊「いいよ、別に怒ってないから!」

彼岸花と戯れつつイツキに寄りかかる

フワフワとしたイツキの毛並みも風に吹かれて少し揺れる

これ以上身体を冷やしては毒だとイツキと柊は彼岸花に背を向け


工場廃棄の中へと入っていった

結局、彼岸花が増える理由など誰にも分からない

そんな事も忘れていて

冷たかった風も少し丁度いいくらいに

柊の胸の中は恥ずかしさで一杯になっていた




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