その手は憎悪に塗れて 肆


殿「ありがとうございました、お2人共無事熱が下がりました。」

布団でグースカピースカ寝ている蒼とザキさんを優しい目で見ながら巴にお礼を言う

巴「そんな気にならさんでも殿はんにはようお世話になってるさかいこんなのは痛くも痒くもないのじゃ。まぁ後でお2人さんには色々とかしを返して貰うようにお手伝いでも頼むとしますかの。」

殿と巴がそんな冗談を話笑いあう

巴「それじゃ妾は店に戻るとしますゆえ頼みましたよ?またあんさんが風邪引かないとも限りせんからのぉ。」

殿「はい、この度はありがとうございます。巴さんもお気をつけて帰ってくださいね。」

巴「うむ、心配かからぬようにゆーくり帰るのするのじゃではの。」

ガチャリと音を立て扉がしまる

蒼とザキさんはスヤスヤと口を開け寝心地好さそうに眠っては寝言を話す

蒼「い、イノシシ、、そっちに行った…ザキさん。」

ザキさん「任せ、ろ…タバコ…すいた、い。」

噛み合ってるような噛み合ってないようなまるで一緒の夢を見てるかの様な寝言を話している

殿「仲がほんとにいい事…それにしても。」

壁に干している羽織りを眺めた

殿「私はこれをどう渡そうか考えておかないと。」


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冬になってからというものの

吹く風がとても冷たい

巴「2日も店を開けずにおいてしまったの、明日には開けれるよう今日の夜は少しばかり準備を…」

そんな独り言をポツリと呟いて

前を見ると店の前でキョロキョロと怪しい動きをしている者がいた

あの店は…巴の営んでいる酒屋であった

巴「おやおや、人の店の前で何を怪しげなうごきをしておるのかのぉ。どれどれ…。」


???「今日も休みなんか…2日も休みなんて初めてやで?怪我とか病気しとんのかな?」

巴「これ、妾の店の前でなにをしておる。」

男の後にはいつの間にか巴が立っていた

???「あわわわ!す、すんません!いやその2日くらいお店の方やってへんからどないしたのかなぁ思っとってな?…あはは。」

巴「だからといって他人の店の前でウロウロされては妾も注意するしかなかろうに。」


髪の毛は強いくせっ毛で

右腕と左腕は熊のように奇獣化しており

パーカーを着た何ともやんちゃっ子といった感じの男が申し訳なさそうに立っている

巴「それで公里(くり)。何か買ってくから妾の店の前をウロウロとしとったんじゃろ?」

巴が悪い笑顔を零す

公里(くり)と呼ばれた男はポカーンと口を開けた

公里「あ、えっとーそれはちと俺には何ゆーてるか理解出来へん…」

巴「買ってってくれるんとちゃいますの?」

笑顔が怖いそして痛い

公里「…はい、買います。」参りましたといわんばかりに公里は

店の酒を渋々買うことになった


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