その手は憎悪に塗れて 壱


妖山を奥へ奥へと進むとそこは

山に住んでいるものさえ足を踏み入れない暗くて冷たい場所

わかりやすく例えるなら“何も無い場所”そこから聞こえるのは微かな笑い声


???「どうだ、面白かったろう?“死神”とやはわ。」

大きな黒い影のような塊が暗闇の中でのそのそと動いている

ちゃんと見えるのは輝く大きな青い瞳と大きな口からズラリと並ぶ鋭い牙

黒い影は俺らへ問い掛けてきた

緋紅「面白かったと言われれば面白かったけど、とんだ邪魔が入ったりで正直面倒だったというかなんというか…4人を相手にするほど俺も馬鹿じゃない。」

夜緋「流石に俺らでも厳しいものがある。でも死神とあと柊って奴はなかなかに強い絆ってやつで縛られてるように感じたけれども。」

???「はははは…醜いものだよあれは。可哀想にあの少年は何も知らない白くそれは真っ白な白紙のような心で死神を慕って愛しているからなぁ。ああいう少年を見ていると…それはそれは。」

黒い影の周りの空気がぐにゃりと歪んだ

緋紅と夜緋はその歪む程の気を身体でビリビリと感じ取っては寒気でゾッと冷や汗をかく

緋紅「おいおい勘弁してくれ。自分のその陰気臭い力を諸に出すのは俺でもこまる。」

夜緋「同感だ。」2人はキッと鋭い目付きで黒い影を睨みつける


???「いいぞ?その目は俺の好物だあ。」

ニタァと嫌な笑顔を見せる

緋紅「此奴いかれてやがる。帰るぞ夜緋。」

夜緋「では失礼する。」

???「我は何処に居ようとお前らが見えるからな?いや見ているからな…もっと楽しませてくれ。」

緋紅「黙れ。俺はお前の操り人形じゃねえぞ。」右手を握りギチギチと音を立てる

夜緋「緋紅やめろ。力の無駄遣いをするなそれにこいつは真面に相手をしてる方が頭悪く見えるぞ。」

緋紅「…ふん、クソが。」見下した目で黒い影を睨みつけ2人は

その場を後にした


???「あぁ、動き出す。今が過去が…全ての錆びていた歯車が動き出し壊しあう。なんと愛苦しい者共だ醜さは美しい。」

漆黒の暗闇から聞こえる不気味な声

その声はもしかしたら全ての者の奥底に眠る“気の迷いの想い”なのか


はたまたは“本性”か

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工場廃墟で眠る2人

そこに咲き誇る彼岸花…また1輪こっそりと新しく咲き誇り月明かりに照らされては

風に吹かれユラユラと揺れた


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