あの日から刻は動かず 陸


柊「ねぇイツキ。」

イツキは耳だけこちらに向ける

イツキ「どうした。」イツキは目を瞑っている

柊「なんか嫌な感じしないか?多分あの山だろうけども。」

イツキ「ほう、お前が勘づくとは、余程の殺気とやらが感じとれたのかな。」パチッと目を開けこちらを見た

イツキ「正確に言えばもう少し前から殺気はダダ漏れだったがな良くないことが起こってるのは確かだろう。」

彼岸花がザワザワと揺れる風は吹いていない

柊「…嫌な事は極力避けたいんだけど。」

イツキ「そんなの俺だってそうだ、外に出るぞ。」大きな身体を持ち上げイツキは外へと歩く

いつもの様にここの彼岸花はイツキの歩いた場所だけ枯れる

その後を僕は歩きまた彼岸花が力強く咲く


柊「風がないのに彼岸花が揺れてる。」

鳥肌が立って寒気がおさまらない

イツキ「原因のお出ましだ。」オッとイツキが気を放つ人に向ける事のない殺気を表する

僕でも痛いくらいそれは恐ろしく強く孤独だ

これが“死神”の殺気

本当に殺気だけで生命を奪えそうなくらい…


ここを目掛けてやって来る殺気がただの石ころに感じる程の…


緋紅「いたいたぁ、夜緋ぇ死神様との再会だよ~」

夜緋「うん。」ガサガサと妖山方面の森から勢いよく黒い影が2つ飛んできて地面に降り立つ

緋紅「いい散歩だなあ今日は本当にキルト。姉さんも来ればよかったのに、たまには身体動かさないと鈍っちゃうよ~。」

夜緋「キルト。姉さんにも…やりたい事や色々あるから。」夜緋は下を向きながらそう答えた

柊「お前ら誰だ。」警戒のし過ぎで少し髪の毛がザワっと浮く

緋紅「あっはは!怖い怖い。いきなり他人に殺気をぶち当てるのは良くないよぉ?」

イツキ「先に発してたのはお前らだろう。」

夜緋「…緋紅がずっともろに出してたから。」

緋紅「仕方ないだろ~散歩が楽しくて楽しくて“こんなの”見つけちゃったんだもの。」

こんなのと言いながら僕達2人を指で指す


緋紅「ご紹介遅れました、俺は緋紅(ひぐれ)。見ての通り哀れな奇獣化してる醜い生き物さぁ。」獣化している黒い右手でピースしながら答えた

夜緋「俺は、夜緋(よあけ)緋紅と共にここで生きている…」長くボサボサの髪の毛の間から紅い瞳がこちらを見つめる

緋紅「さて、と自己紹介も終わった所で…」フッと緋紅が消えた

イツキ・柊「!!」2人は突然の事に一瞬反応が遅れたそして

緋紅「お前の名前は、何?」

柊の目の前には緋紅の万遍の笑みと黒い右手が広がっていて…

イツキ「柊!!」イツキの声だけが聞こえた


僕の目の前は暗くて冷たくて少し温かいなにかに包まれた

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殿「今日は風が無いのに寒いですね…」

殿は吐いた息を自分の手に履いて温めながら家へと帰っていた



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