枯れればまた咲く 玖


巴さんの背中が見えなくなったすぐ

森の木からガサガサと聞こえた

それも早い音で

柊「……!!」バッと後ろを向く

ガサッ 黒い何かが飛んできた

???「おっと!やっぱり柊さんには気づかれちゃったかぁ。」

パーカーを被りショートパンツ姿の獣人が話す

柊「そうか、今日新月だからいつもより活発なんだね蒼(あお)。」


蒼(あお)と呼ばれた子は黒い尻尾をふりふりしながらパーカーを

脱ぎ青い瞳でこちらをみた

鋭い牙と爪を持っているがとても優しい子である

蒼「柊さんがこんな物騒な忘れられた森で何してるんですか?」

柊「いや、ちょっと散歩?あははは。」頭をかきながら言う

蒼「こんな新月の夜に危ないよ?1人で。僕は今から狩りに行こうかなって!猪がたべたくなったんだ!」喉をゴロゴロと鳴らしながら嬉しそうにしている


柊「1人で行くのかい?危なくない?」

蒼「今日は1人じゃないんだぁこんな夜だからこそ駆けつけてくれる人がいるじゃない?」

蒼の後からゆっくり誰かが出てくる

???「今夜は新月、僕の夜だ。」

吸い込まれそうな漆色の瞳

その瞳が隠れるくらいの長い髪の毛

ダボッとした服装、ポケットに突っ込んだ手から少し見える刺繍のような黒い模様

柊「ひゃ~これは、珍しい人が外にいるねザキさん!あれ、いつもの眼鏡は?というかサングラスは?」

ザキさんもといヤマザキ

ザキさん「あの鬱陶しい眼鏡は新月だから要らないし、僕はサングラス似合わないの知ってるだろ柊。眼鏡だるいんだよ。」

そう言いながらポケットからタバコをとり火をつける

ザキさん「まぶしっ…」

柊「自分で火をつけたんじゃないか…」

ザキさん「…煩いな!」

蒼「また吸ってるよ~ザキさん。もう吸いすぎだよ臭いし。」蒼が鼻を塞ぐ

ザキさん「僕はこれがないと生きてけないから。」煙りを上にフーっと吹きまた口にくわえた


ザキさん「じゃ蒼行こうか、僕が元気に動けるうちに猪狩り。」

蒼「ちゃんと走ってね?ザキさん。僕ばっかりは疲れちゃうから…」

ザキさん「はいはーい、じゃ柊またね。お酒待ってるよ~」ザキさんは手をひらひらとさせた


柊「僕がお酒届けるのなんで知ってるんだか…」

ザキさん「んーここの違い?」頭をトントンと人差し指で指す

柊「いつも寝てばっかじゃん(ぼそっ)」

ザキさん「おい。仕方ないだろ!外眩しいんだから!」チョップをかまされた

柊「いったい。」

蒼「柊さんいじめないの、ザキさん。」ちょんちょんと蒼がザキさんの脇腹をつつく

ザキさん「ひゃおうっ?!やめて、脇だけはやめてお願い蒼ごめんっていくからやめて!?!?ぁぁあぁああ!!!」


名も忘れられて、忘れられた森に

情ない声が響き渡った



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