角野栄子 講演会(1/4)

廿日市の図書館隣に、さくらぴあという会館があるのですが、そこで「『魔女の宅急便』」の原作者、角野栄子の講演会がありました。(2018/03/11)

実写版の映画も付け加えられていて、1800円でした。お得かも。

 廿日市図書館からアンケートがあって、

「あなたにひとつだけ使える魔法があったとしたら、どんな魔法がいいですか? 下の欄に書いて、図書館カウンターにお持ちください。展示期間中、館内に展示します!」

 とあったので、わたしはあすにゃんとして、

「花をいっぱい咲かせるまほう」

 と書いておきました。

 隣の小六くらいの女の子は、「世界が平和になるまほう」なんて書いてあったけど、そんなに簡単に平和になったらありがたみがないかもねー。


 ともあれ、講義がはじまりました。錐みたいな老女が、いすに座ってマイクにはなしかけていました。

「二十年前に、この廿日市会館に来たことがあるんです。瀬戸内のなだらかな海が広がっていました」

 おお、知らなかった。二十年前といえば、わたしも広島に来て10年ぐらいですよ! きらきら光る瀬戸内の、ウサギのような波が思い浮かびます。


 さて、冒頭は、こんなふうにはじまりました。自分は三世代にわたって読まれる本を書いているようで、孫の世代や親の世代からも、なんで魔女やお化けの話を書くの? とよく聞かれるのだそうです。

 世の中にありすぎるものを書いたかも?

 と後悔したものの、そういうのが好きらしい。心を自由にするもの、ちょっと違う魔女ものを書いてみたい、もっと面白いものを! 自分なりにぴったりしたものを書きたい。

 でも、その当時は、まったく書きたいとは思っていなかった。


 で、娘さんが生まれてしばらくしたときに、箒で月夜を飛んでいる魔女が、ラジオをBGMにして、(箒は三つ編みリボンをかけて)飛んでいる落書きを見て、いいな、と思ったそうです。

「わたしは古い人間だから、なにかをしながら仕事をするなんて無理。できる人がうらやましい」

 そのうらやましい気持ちが、『魔女の宅急便』を生み出したらしいです。


 昔の話も出てきました。一ドル360円の時代の話。最近は一ドル115円程度? 外国の本を買いたくても、4,000円とかする。すごい高くて手が出ない。しかも本屋は丸善とか紀伊国屋とか、「おたかい」空気の本屋さん。そこで、空から見たニューヨークの町があった。「なんてすてきなんだろう」「お話っぽいな」それまでお話を書く気はまったくなかったのに、そんなふうに思ったりもしました。


 お話を書くことには無関心だった角野栄子さんでしたが、1967年からブラジルに2年間住んでいたため、「その話を書いてみないか」という依頼が来て、それをOKしたのがデビューするきっかけになったらしい。

 当時は外国の情報が少なかったから、人と違うことをすると話が来るんですねえ。

 本を書いて見て、「これはわたしに向いてるかも」と思い、当時ブラジルに住んでいたイタリア人の知人を思うかべつつ、「スパゲッティが食べたいよう」を書いたら、売れた売れた。調子に乗って、「ハンバーグもありでしょう」「カレーはどうですか」と編集のひとに乗せられて、シリーズとしてはじまりました。

 おばけのあっちこっちそっちという話は、おしゃれずきのおばけの女の子、こっちと、飴屋さんの階段にすんでいる女の子、そっちと、キャラクターが決まっているのです。そのうえ、食べ物も魅力的。売れる要素がバッチリ入っているという次第です。


 食べ物を扱っていて、キャラクターがしっかりしていたら売れる、というのは、ライノベでもある傾向なのです。テレビでも、グルメ情報は視聴率いいしね。うちの夫なんか、

『ラーメン大好き小泉さん』というアニメにハマって、ラーメンばかり食べている小泉さんが太らないのが不思議だと言っていましたっけ。


 角野栄子さんは、娘さんの話をわりとしていましたが、娘さんからのネタをゲットしておばけの話を書いているのです。明日は、その話です。

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